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ヌレガミの短編

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大和ヌレガミの短編です。ジャンルばらばらですが気軽に読んでやってください。
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2021年12月の記事一覧

短編小説「RPGモブキャラクター」

短編小説「RPGモブキャラクター」

 都内の一日感染者数が二桁代におちたころ、俺はひさしぶりに友人の宮本を飲みに誘った。ほんの数ヶ月前はファミレスでも食事するときはマスクをしてくださいと店員に注意されたりしたものだが、まわりの客たちは気にしないで大声で笑っていたりした。

「どうですか? 最近はなにか面白いことあった?」

「コロナだからね、イベントもなくてつまらないよ。家と職場の往復。映画館も漫画喫茶も行けないしね」

 宮本はそ

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短編小説「ジローインスパイア・タイムトラベラー」

短編小説「ジローインスパイア・タイムトラベラー」

 ラーメン屋の食券機について俺は思う。店員の注文を省略し、客の回転を速くする目的もあるだろうが、それだけではないと思う。たとえば行列店で後ろに客がひかえているとき、なんとなくせっつかれている感じになり、ついつい余計なトッピングをつけたりしたことはないだろうか?

 これはとある昼下がり、人気ラーメン屋でおきた不思議な物語。

 俺はその日、セミナーで都心にまで来ていた。オフィスとガード下の飲み屋で

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短編小説「グルメの大将」(裸の大将放浪記パロディ)

短編小説「グルメの大将」(裸の大将放浪記パロディ)

 小川からすこし離れた獣道を歩いていると、一人の男が行き倒れていた。

「あの、おじさん、だいじょうぶですか?」

 肩をゆっくりとさすってやると、男は気がついた。

「ど、どうやらぼくはお腹が減っていたみたいなんだな」

 男は独特なしゃべり方だった。が、特筆すべきはその出で立ちにあった。もうすぐ冬だというのにタンクトップにショートパンツ。リュックに赤い蝙蝠傘。極めつけに足元は下駄。まさしく地元

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