2021年に観て印象深かった映画を振り返る① 一月編 その1
訪れた秋の気配、それは即ち一年が終わる予兆。認めたくはない。しかし、2021年の終わりは着実に見え始めてしまっている。
さて、一年を総括するにはまだ性急かもしれないが、そろそろ趣味の映画鑑賞についての振り返りをはじめたい。
まず本稿では今年の一月に自宅で鑑賞し、特に印象深かった三本を取り上げる。なお、いずれも今回が初鑑賞の作品となる。ネタバレは含まないのでご安心を。
1、「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」(2007年)
ロンドンのエリート警官ニコラス(サイモン・ ペッグ)は仕事が出来過ぎるため、田舎町に左遷される。そこは事件など起こったことのない、住人の誰もがお互いを知っている、愛らしく平和で退屈な町だった。
町で出会った新しい相棒のダニー(ニック・フロスト)は、「バッドボーイズ」などのポリスアクション映画にあこがれているが、実際には銃を撃ったこともない。
そんな最中、謎の殺人事件が次々と発生する。事故だと主張する同僚たちをよそに、ニコラスとダニーは犯人に立ち向かう。
(Amazonより引用。一部改変。)
本作は「ショーン・オブ・ザ・デッド」「ベイビー・ドライバー」等で名を馳せるエドガー・ライト監督が手掛けた、不謹慎上等系のサスペンスコメディ映画である。主演は仲良しコンビ:サイモン・ペッグ氏×ニック・フロスト氏。
「なるほどなるほど、コメディシーンの中に伏線を散りばめて一気に回収するタイプの話ね。面白いけど良くあるタイプの映画だな…」等とたかを括っていると、“良くあるタイプ”で括れない程の笑えない真相が浮かび上がり度肝を抜かれる。本稿では明言を避けるが、昨年大ヒットを記録したこの映画にもどこか似た、非常におぞましい“ムラ社会”的な悪夢だ。
ムラ社会って恐ろしい...とゾッとした途端、アーノルド・シュワルツェネッガー作品(特に「ゴリラ」)的な荒唐無稽アクション映画へと展開がシフトチェンジする。不穏な空気が一気に“笑い”へと転化していく事で、またもや度肝を抜かれてしまった。
“腐敗の象徴”である町のミニチュアセットを破壊しながら繰り広げられる最終決戦は、とても寓話的で味わい深い。最終的に大惨劇が起きているのにも関わらず、不思議と良い後味・カタルシスを得ることもできる。何かに鬱屈している人は溜飲を下げられるかもしれない、そんな素晴らしい一本だった。
2、「リロ&スティッチ」(2002年)
ハワイのカウアイ島に住むリロは、親のいない5歳の女の子。姉のナニと二人暮らしの彼女は、友達もなく孤独な日々を送っていました。
ある日リロは不思議な生き物と出会い、スティッチと名づけて家族にします。しかし、スティッチは手のつけられない暴れん坊でリロとナニを困らせてばかり。実はスティッチは宇宙からの逃亡者で、遺伝子実験で創られたエイリアンだったのです。
リロの寄せる愛情が理解できず、行く先々でトラブルを巻き起こすスティッチ。それでもリロはスティッチを見捨てませんでした。「スティッチは家族(オハナ)。家族ならいつまでも一緒だよ」。リロの言葉は愛を知らないはずのスティッチの心を少しずつ開いていきます。しかし、二人の間にかけがえのない絆が生まれたそのとき、運命は彼らを永遠に引き裂こうとするのです…。
(Amazonより引用。一部改変。)
絶大な人気を誇るディズニーキャラクターの一人:スティッチ。その初登場作品となるのが本作である。
監督兼脚本家はディーン・デュボア氏とクリス・サンダース氏。後にディズニーを離れ、ドリームワークスにて大傑作ファンタジー映画「ヒックとドラゴン」を手掛けることになる優秀なコンビだ。
“マスコットキャラクターを愛でられればいい”程度の映画でしょ?などと侮ってはいけない。本作はファミリー向けでありながら毒っ気も効いた、とても良質なコメディ映画であった。
ツッコミ役不在でボケにボケを重ねる系統のギャグシーンがテンポ良く続いたため、思わず声を出して笑ってしまう場面が多かった。特にリロの物心付いていなさが炸裂したアグレッシブな無軌道感と、スティッチの喋り芸の面白さは一級品。後者の面白さ・可笑しさを言語化することが困難なのがもどかしい。
鑑賞以前の俺のように「原作は観てないけどキャラクターは知ってるよ!」という人は多いはず。そんな方には本作をすぐにでも観て頂きたい。“キャラクターとしてのスティッチ”しか知らず、“コメディ映画スターとしてのスティッチ”を知らないのは絶対に損!と断言してもよい。
3、「EXIT」(2020年)
韓国のある都心部で突如原因不明の有毒ガスが蔓延し、道行く人たちが次々に倒れパニックに陥っていた──。
そんな緊急事態になっているとも知らず、70歳になる母親の古希を祝う会場で無職の青年ヨンナム(チョ・ジョンソク)は、大学時代に想いを寄せていた山岳部の後輩ウィジュ(ユナ)との数年ぶりの再会に心を躍らせていた。
しかし、彼らにも上昇してくる有毒ガスの危険が迫っていた。出口は街の一番高い高層ビルよりも上!絶体絶命の中、決死の緊急脱出が始まる!
(Amazonより引用。一部改変。)
あらすじの通り、本作はコメディ要素も交えたサバイバルパニック映画である。監督を務めたイ・サングン氏は本作が長編映画デビューとなるようだが、早くも次回作が待ち遠しい!と感じてしまうほど素晴らしい娯楽作品だった。
まず、危機的な状況で最善を尽くそうと努力し足掻く主人公とヒロイン、二人のの描き方が素晴らしい。幾度か行う利他的な行動と、その後吐き出してしまう人間臭い本音には感情移入せざるを得ない。鑑賞しているうちに、自然と彼らを応援したくなってしまう。
映画本編における“主人公達への応援描写”もとにかく素敵。リアリティは薄いかもしれないが、「こんな○○○○の活かし方があるなんて...」と脱帽させられた。また○○○○に限らず、この映画は小道具の使い方が総じて上手かった。DIY的な楽しさと主人公達の有能感、双方を表現しており非常に見事。
古希パーティー会場を脱出し、屋上目指してビルの壁面をよじ登るスリリングな“第一ステージ”は本作の白眉。壁面に都合良くぶら下がれる無数の取っ手がある様はさながら「SASUKE」もしくはTVゲーム「ゴーストオブツシマ」の神社参拝。あからさまな御都合主義ではあるが、緊迫感と娯楽性が両立している楽しいシーンであった。
そう、本作は毒ガステロという衝撃的な題材を扱いながらも、非常に明るく楽しく観ることができる。スタッフロールの明るいテンションと“とある本編の疑問についてのネタバラシ”で、鑑賞後の後味も非常に良い。できれば劇場の大画面で観たかった。
・「一月編 その2」へ続きます!
なお、画像は全てAmazon商品ページより引用しました。
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