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原作ファンが心の底から羨ましい─「THE FIRST SLUM DUNK」鑑賞


●聞きしに勝る傑作



 映画「THE FIRST SLUM DUNK」を遅巻きながら鑑賞した。手に汗握る素晴らしい映画、いや素晴らしい試合だった。


貰った入場者特典。木暮がハンサムで素敵。




 2Dアニメ・3Dアニメ・実写がバランス良く入り混じったような独特の映像。
 試合中のキャラクター達の立て方。
 モノローグを極力廃したスピーディーな試合描写。
 ディフェンスシーンにおける物理的な圧プレッシャーのリアリティ。
 裏をかくパス回しの爽快感。
 的確に試合を盛り上げてくれる劇伴。
 上記の全てが圧巻で、バスケットボールにも『スラムダンク』にも疎い俺でさえ、“一本の映画作品”として本作を堪能することができた。


 湘北メンバーで流川だけが描写不足・映画内では桜木の“その後”が投げっぱなし・宮城の回想で試合のスピード感が削がれた箇所もある……等の欠点は気に掛かったが、唯一無二となる“スポーツ描写の臨場感”がそれを加点で塗り替えた。
 映画作品初挑戦にして本作を繰り出してきた井上雄彦監督には、もう脱帽するほかない。



 また、本作はとりわけ主題歌・劇伴・効果音等々“音の力”が強烈な作品だったので、意図せず良い音響設備の上映回(TOHO池袋  DOLBY ATMOSシアター)を選んだことは非常に幸運だった。OPテーマ:The Birthday「LOVE ROCKETS」のベースが爆音で流れ出した瞬間、劇場を包んだ高揚感は今なお忘れ難い。自室のテレビで本作を鑑賞しても、絶対に同様の感動は味わえないだろう。



●好きな作品の“名勝負”が映画化される幸福


 さて、俺は『スラムダンク』原作を途中まで※しか読んでおらず、作品への思い入れは他の多くの観客の皆様よりも圧倒的に低いはずだ。
 だからこそ、原作のラストバトル:山王戦──原作における“名勝負ベストバウト”が令和の世に映画化されたことの重みと素晴らしさを、原作ファンの方々に比べて味わい尽くせていない。

※約15年前、花道が坊主にする辺りまで読了。高校の空きロッカーの「漫画持ち寄り棚」に置かれていたものの、俺が前述の部分を読んだタイミングで貸主が持ち帰ってしまった。それ以降を読む機会が訪れず、印象的なエピソード以外を忘れたまま現在に至る。



 オチの改変・声優変更等で賛否両論の嵐が巻き起こったことは承知している。しかし、多くの原作ファンにとって、本作は夢のような作品として心に刻まれたはずだ。
 本格的な構想開始から10年近い製作期間を掛け、原作者自らが追加エピソードを交えた脚本を書き、最新技術を駆使したとてつもない映像表現で、原作ファンに限らず映画ファンにも認められるクオリティの作品となって公開される……。このような僥倖ぎょうこうは、滅多に訪れるものではない。



 ふと思った。
もし俺の好きな漫画の名勝負達が、このような形で映画化されたら……?


『ポケットモンスターSPECIAL イエロー編』の四天王戦。
『ヒカルの碁』のsai vs toya koyo。
『アイシールド21』の神龍寺ナーガ戦。
『ワールドトリガー』の第二次大規模侵攻編。
『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』のアリアハン編。




 反射的に思い浮かんだ上記のエピソードは、いずれも忘れられない名勝負。これらがもし映画化され、かつ「THE FIRST SLUM DUNK」並に素晴らしい出来の作品になっていたとしたら……。俺は間違いなく大興奮し、原作を知らない友人達にも布教を繰り返し、幾度も劇場へ足を運んだだろう。
 好きな作品でこのような奇跡が起こるなんて滅多に無い。この多幸感を、きっと多くの『スラムダンク』原作ファンは味わった。俺はそれが羨ましくてたまらない。



 原作を読破し、山王戦を熟知した状態で、かつ映画化に際した事前情報を一切仕入れずに本作を観たかった……。この素晴らしい作品を鑑賞したことで味わった、たった一つの後悔である。


※ヘッダー画像は映画公式サイトより引用しました。

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