ネパールで出会った“ソーラーパネル仏具”
ネパールの仏教寺院には、日本の仏教寺院ではあまり見慣れぬ仏具が設置されている。
写真に収められた円柱は“マニ車”と呼ばれる、ネパール等のチベット仏教圏ではメジャーな仏具。個体によってサイズはまちまちだ。鉛筆ほどの太さしかないモノもあれば、人間を遥かに凌ぐ大きさの立派なモノもある。
この円柱の中には“お経”が収納されているそうだ。それを回転させることによって、お経を唱えることと同じだけのご利益が生まれるのだという。
せっかくの縁起物だ。恩恵に預からない手はない。俺は街中の寺院でマニ車を見付けては駆け寄り、仏像に祈るような気持ちを込めながら回した。なお写真三枚目の巨大なマニ車は非常に重く、とても軽い気持ち、そして軽い力では回せなかった。
──そんな旅の最中、俺は路上の土産物屋で猛烈に気になるモノを発見した。
初見時のインパクトの強さに心を惹かれ、迷わず購入し日本まで持ち帰ってしまった。いや、むしろこんな奇抜なものを買わない理由が見つからない。
下に付いている液晶画面のような板はソーラーパネル。窓越しからソーラーパネルに光を当てるだけで独りでに回転する。もはや触れる必要さえない。伝統文化と現代技術の融合たる“ソーラーマニ車”というわけだ。
材質はちゃちなプラスチックだが意外と中身は丈夫なようで、七年経った今でも壊れることなく稼働し続けている。晴れている日ならば、だいたい二〜三秒で一周回る。それではこの七年間、俺は何回分のお経のご利益を得たことになるのか?いや、そもそも触っていないからご利益は無いのだろうか?
そのような俺の疑問などつゆ知らず。ソーラーマニ車は今日の昼間もカラカラと音を立て、窓辺で元気に回り続けていた。
余談だが、思い出深いこのお土産は何とAmazon等の通販サイトで普通に販売されており、日本でも余裕で手に入ることが後々判明した。
…知らぬが仏。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?