sonny karha

頭のなかにある色んな物語をぽつぽつと書いていこうと思います。

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最近の記事

秋の渋谷

秋の渋谷は非常に美しい 例えば どこでもいいからカフェに入り オープンテラスに座ったとしよう 時間は休日の昼下がりをお勧めする 飲み物は何でもいい 暖かいものであるなら きっと中途半端に洗練された店員が 君が注文した飲み物を運んでくれる もしくは店によっては君自身が運ぶことになるだろう 椅子に腰かけ 目の前を見ると 色鮮やかな人たちが 色鮮やかに行きかっているだろう この時期のファッションは実に 多種多様だ 半袖の人 コートの人 レザーの者

    • 18時以降に考えていること(煙草を一本)

      寒くなると 僕の仕事は辛くなる 厳密に言うと僕が辛くなる まず、僕は重度の末端冷え症であり(これは時々夏場でも起こる) 夕方になり、気温が低くなると手や足の指先が動かなくなる 体の自由が中途半端に効かないという状況に若干逃げ出したくなりながら 僕が考えるのは お風呂に入る事 程よい温度のお湯で満たされた湯船につかり 手足の指先が徐々に動きやすくなるのはたまらなく快感だと思う なので僕は18時過ぎ、仕事が終わりに近づくと その事しか考えられなくなる 末端

      • 恋について思うとき僕らが思うこと

        できればこの文章を読むときにMiles Davisの枯葉を聴いていただきたい それはとても重要なことだから 僕は先日ある女性とデートをした 彼女と会うのは二回目だ 僕は1回しか会っていない女性と しかもその1回目であまり言葉を交わさなかった女性とデートをするのは とても久しぶりだった 僕は年甲斐もなくドキドキし、家では時間をかけて服を選び 髪や眉などの身だしなみをいつもよりも念入りに手入れした いつもよりとは、ガールフレンドがいたときに比べて、 ということな

        • 真夜中の植物園 蜜子 1

           太一と出会ったのはその植物園だった。中華街で地下鉄を降りると、海の近くにあるガラス張りの小さなドームが『横浜中華植物園』だ。  そこは誰も見向きもしない街の端っこでいつ行っても中はがらんとしている。私は半年くらい前に仕事でそこを通りがかった時から気になり入ってみた。そこはドームの天井を境に、小さなジャングルができているようで、見たこともない形の木やカラフルな花たちが小さいドームの中にところ狭しとひしめいているように見えた。温度調節のためか外よりも湿度と気温が若干高くて、私

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        • その日の人々
          1本
        • 私の人々
          1本
        • 真夜中の植物園
          1本
        • sang comme paris
          5本
        • 短編「今日の晩御飯」
          2本

        記事

          Sang comme paris Chapitre5

          最後に喪主であるミッキーの挨拶になった。ミッキーは大柄で前に立つとなんだか迫力があった。「父は。」話し始めたミッキーの声は絶対に聞けないであろうとてもしおらしい声で、ミッキーは挨拶を始めた。 「父は本当に素晴らしい人でした。そして同時に私にとってあこがれの存在でした。穏やかで博識でそれでいて力強い父が大好きでありました。最後の任地から日本に戻ってきた父は痩せていてかつての力強さこそ無くなっていたもののベッドに横たわる表情は昔とあまり変わらず穏やかで澄んだ目をしていました。参

          Sang comme paris Chapitre5

          Sang comme paris Chapitre4

          式が始まった。喪主のミッキーが入ってくると、ひそひそ声がたくさん聞こえる。ミッキーは少し控えめなカツラに、シンプルな喪服。店で見たどのミッキーよりも化粧が薄く、ほとんど素顔に近い感じがした。しかし目だけは泣いた後を隠そうとするのか少し派手なように見えた。ゆっくりと参列者に向かいお辞儀をするミッキーの厳かさに、ひそひそ声もいったんやんだように感じた。 するとケイちゃんは「ちょっとトイレ」といいバッグを持って席を立った。ユウさんもカナコも立った。僕は何が起こるか予想していたので

          Sang comme paris Chapitre4

          Sang comme paris Chapitre 3

          列が進むと「あっケイチャン。」と中年太りしたおじさんがケイチャンを見つけて前から歩いてきた。「誰ですか?」僕が小さな声でケイちゃんに聞くとケイちゃんは笑って「わからないのかお前、カナコだよ。」汗をハンカチで近づいてきたのはよく見るとたしかにang comme parisのホステスの中でおじさん人気No1のカナコ、彼女だった。お店にいるときはかかわいらしい服装で、ころころとよく笑うひとだけどこうしてみると普通の人当たりがよさそうなおじさんだった。 しかしここではいつもの笑顔じ

          Sang comme paris Chapitre 3

          ハコベ

          ハコべ 箱根へ旅行に行ったときのことです。 私は友人二人と夏に温泉旅行に出かけました。宿は古くからあるXという旅館でした。事前に調べたところによると、とてもよさそうな宿でした。 私たちは芦ノ湖で遊び、午後、日が少し傾いてきたころに宿に向かいました。 宿は山の中にあり、山沿いの国道を、普段見れない景色を楽しみながら進みました。 私は運転をしていたので周りや対向車などに気を付けて進んでいましたがふと、右手側の山間に不思議なお堂を見つけました。そこは見るからに古く、荒れて

          玉川からの電話

          玉川からの電話  「ああ、そうか、うん、わかったよ、ああ着替えたら向かうよ」電話を切ると辺りはいつも以上に静かな朝だった。寒くて寝床戻り煙草をつけた。これはもしかしたら世間が、奴の死を悼んで静かにしているのかもしれない。なんせ鳥さえ鳴かない。まだ大分眠気が残る頭で奴と初めて会った時の事を思い出す。 奴と初めて出会ったのはいつだったろう。もう何十年も前の気がする、しかしそんなに年月は経っていないはずだ。記憶ががさばるなんて俺も歳を取ったもんだ。苦笑いをし、近くの灰皿でたばこ

          玉川からの電話

          大林さん

          僕は一時期、図書館で働いていたことがある。 その時、大林さんに出会った。 大林さんは声が大きくて、いつも顔が赤く、目が据わっている男の人で。 誰と話すときも敬語だった。そして誰の目も見ずに会話をしていた。 そんな大林さんが初めて僕に興味を持ったであろう時は、はっきりしている。 仕事の帰り道、僕は数人の同僚と歩いていた。私はそのとき、小学生の時に イタ飯を炒めた飯だと勘違いしていたことを話していた。 そばを歩いて通りがかった大林さんは「炒めた飯ですかっはっはっは」

          サンドイッチと紅い口紅

          「サンドイッチほど冷遇された食べ物ないはずだろ」  「そう?」  「だって映画でよくルームサービスなんかで頼むだろ」  「そうかしら」  「その時に大体、いらないとか、だべたくない、とか言われているよ」  「そんな映画観たことないわ」  「君は映画をあまり観ないからね」  「あなたが観すぎるのよ」  「他に何もすることがないからね」  「無趣味な人」  「君だって」  「私はあるわ」  「君はサンドイッチでは何が挟まっているのが好きだい」  「その話

          サンドイッチと紅い口紅

          Sang comme paris Chapitre2

          お店の名は『sang comme paris』 フランス語の直訳で「パリは血」という意味だそうだ。オカマバーはこの街に一件しかない。しかももう8年も店を続けている。中は普通のバーと一緒でカウンターがあり、ボックスが何個かある。ホステスは常時4~5人いて、あとはカウンターでお酒を造るバーテンが一人いる。ママは基本カウンターの中にいて接客をしていることが多い。時々昔からの常連さんなどが来ると一緒にお酒を飲む。繁華街と言われるほど盛んな街ではないけれど、やっぱり店柄上最初はそうとう

          Sang comme paris Chapitre2

          今日の晩御飯:豚バラと白菜の鍋

          僕と彼は冬になると決まってあるゲームをする。 それは「どちらが寒いと言ってしまったかゲーム」だ。 冬に入り、本格的に寒くなりだすと僕ら二人は 一つの料理が食べたくなる。 それは鍋だ。 二人とも鍋が大好きで、冬は鍋とこたつとみかんがあればいいう僕らなのだけれど 二人とも鍋が好きすぎるため、こだわりが強く、決して譲らない。 その昔、二人で暮らし始めの頃、初めて鍋を食べようと決まった日、 僕らはウキウキで買出しに出かけたが スーパーで大喧嘩になってしまった。 実

          今日の晩御飯:豚バラと白菜の鍋

          夜の植物園 1幕

          古来、伊達男達にとっての美徳の一つは他人の彼女を寝取る事であり、醜男にとって一つの宿命は美人の奥さんを寝取られてしまうという事ではなかろうか。今から話す物語は別に古代ローマの組んず解れつの貴族の話でもなければ中国大陸の雅やかな宮廷に潜むエロティシズムの話しでもない。世界で類を観ない視姦好きの民族と言われる、北東アジア日本の物語である。 夜の植物園・開園 八回目、今月に入って八回もこの部屋に呼ばれた。 最初プレイした時は全然怯えててお金をもらうのも申し訳なくなる位貧相な

          夜の植物園 1幕

          Sang comme paris Chapitre 1

          その年の秋は、僕にとって、とても忘れられない小さな出来事が起こった。 それはうだるような夏が終わりすこし涼しくなり始めた頃、突然の訃報からはじまった。       改札を出ると、喪服をきた人たちがちらちらと目に入った。       知らない顔で階段を下りて駅前の喫煙所に向う。途中、僕も喪服を着ていたのでじろじろと見られる。歩きながらポケットを探ると煙草が切れていることを思い出して立ち止まる。買おうと思ったけど、お通夜に行くまでに財布を使うと縁起が悪いと聞いたこと

          Sang comme paris Chapitre 1

          「きょうの晩御飯:さんま」

          さんまが安い。最近特にそう感じる。 スーパーに行っても、商店街の魚屋を見ても大量にあるのはさんまのみ。 彼は魚好きで、特に焼き魚が大好き。 そして魚好きにありがちない「骨をとるのが」めちゃめちゃ上手い人。 しかし僕は魚が好きじゃなく、特に焼き魚が苦手だ。 そしてそういう人にありがちな「骨をとるのが」めちゃめちゃ下手な人だ。 そんな理由があるから僕はめったに魚を食卓に出さない。 ある日、スーパーで夕食の具材を選びながら、ふと僕は思った。 きっと彼はこのしつこいく

          「きょうの晩御飯:さんま」