「きょうの晩御飯:さんま」


さんまが安い。最近特にそう感じる。

スーパーに行っても、商店街の魚屋を見ても大量にあるのはさんまのみ。

彼は魚好きで、特に焼き魚が大好き。

そして魚好きにありがちない「骨をとるのが」めちゃめちゃ上手い人。

しかし僕は魚が好きじゃなく、特に焼き魚が苦手だ。

そしてそういう人にありがちな「骨をとるのが」めちゃめちゃ下手な人だ。

そんな理由があるから僕はめったに魚を食卓に出さない。


ある日、スーパーで夕食の具材を選びながら、ふと僕は思った。

きっと彼はこのしつこいくらいさんまコールを知っているかもしれない

そしてきっと喉から手が出るほど食べたいのかもしれない。

しかし僕の事を気にしてきっと言い出せないのかもしれない

そう思うとすこし可愛そうになり

若干の迷いと葛藤があった後

僕はそんな彼の思いに「かもしれない運転」突っ込むことに決めた。

「わかった、明日はさんまを出そう」

僕はこのとき実際スーパでそうつぶやいた。


その日の夜、二人で夕食を食べながら僕は彼に告げた。

「明日はさんまだから。」その時の彼のうれしそうな顔といったら。

二つの意味で「ごちそうさま」を言い食器をシンクへ運んだ。

しかし後になって思うと

あの笑顔はもっと深い意味があったのでは?と考えてしまう。


当日

『夕食の準備少し待って下さい』と

彼からLINEが入った。少しだけ不安になりながらも

僕はいつも夕食後に片づける洗濯物を音楽を聴きながら畳み待っていた。

玄関のチャイムが鳴った。

なんといつも帰宅する時間よりも30分早く彼が帰ってきた。

畳んだ洗濯物を山にまとめ彼を出迎えに行くと

僕の不安は的中した。

彼は片手にビールを何本かいれたスーパの袋をもち、

もう片方に七輪を持っていたのだった。

「買ったの...?」

うなずき、どんどん部屋に入っていく。


僕たち二人は食とお金に関しては対照的だと思う

僕は料理はできるがこだわりなどはなく

安くて、食べられればいいという人間で

反対に彼は、多少?高くてもおいしくていいものが食べたい

が、料理はできない。という人間だ

片方はお金をかかるのを嫌がり、もう片方は嫌がらない。

しかし彼が家計を握ると破産しかねないので今は僕が握っている

不安とは予想外の出費だった。


その日は仕方がないので、七輪もって

近く河原に行き(僕のうちはマンションだから)

二人で焼いて食べ、ビールを呑み、家に帰った。

陽が早くに沈み涼しくなった河川敷を彼と二人で歩いていると

悔しいけど、こういうのも悪くないなと思った。

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