今日の晩御飯:豚バラと白菜の鍋

僕と彼は冬になると決まってあるゲームをする。

それは「どちらが寒いと言ってしまったかゲーム」だ。

冬に入り、本格的に寒くなりだすと僕ら二人は

一つの料理が食べたくなる。

それは鍋だ。

二人とも鍋が大好きで、冬は鍋とこたつとみかんがあればいいう僕らなのだけれど

二人とも鍋が好きすぎるため、こだわりが強く、決して譲らない。

その昔、二人で暮らし始めの頃、初めて鍋を食べようと決まった日、

僕らはウキウキで買出しに出かけたが

スーパーで大喧嘩になってしまった。

実は

僕は

水炊きや寄せ鍋などのシンプルな鍋が好きなのに対し、

彼は

キムチ鍋やスンドゥブなどの辛くて温まる鍋が好きだ。

僕もキムチ鍋やスンドゥブが嫌いではないが、自分からは作ろうとは思わない。

そのため、その時の鍋は決まった時では、当然お互いが自分の思い描いてい

る鍋を相手も思い描いているだろうと大きく勘違いしていた。

しかし、いざ買い出しに行くと、ぐらぐらと違和感が生まれた。

野菜系やお肉は大きく変わらないからそれほど感じなかったが、

徐々に進んでいくと相手がなんだか自分が普段使わない具材ばかり入れてくる

そしてついにスープや素をえらぶ段階でその違和感の正体が分かった。

「相手の考えている鍋は自分のとは違う」

そう分かった瞬間から、徐々に言い合いになり、大喧嘩へと発展し

とうとう鍋は中止になってしまった。

そして

どうしても鍋を食べたいけれども、喧嘩はしたくない。と二人で悩んだ末

彼が編み出した解決法が「どちらが寒いとい言ってしまったかゲーム」だった

冬至を過ぎてからの一週間、

その年初めて家でやる鍋の種類を決める事ができる権利をかけて戦うゲームだった。

一週間のうち、最初に寒いと言ってしまった方が負け

聞いた方は鍋の種類を決める権利を得ることができる。

その次の鍋は負けた方が決める。そのまた次の鍋は勝った方が決める。

という交代で種類を決められるというルールにもなっている。

去年は僕が負けてしまい、どろっどろに濃くて辛いキムチ鍋を食べさせられた。

二人で買出しに言ったある日、まだ冬至は先だったけど明らかに

二人とも今年の勝負を意識していた。

彼はこれ見よがしにキムチ鍋のもとを見せてきたり、

僕は僕で、無視しながら買い物を進めたが、心の中では熱くリベンジを誓っていた。

そんな喧々諤々の僕らの横を小さい子どもとお母さんの親子連れが

話しながら通り過ぎていった。

「お母さん、今日あれ食べたい」

「なーに?」

「ほらお野菜とお肉が並んであるやつ」

「あぁ白菜と豚バラのお鍋ね、いいわよ今夜はそれにしましょう」

「やったー!!」と子どもの喜びが半端じゃなかったので僕はつい

携帯を取り出して検索してしまった。

それはどうやら重ね鍋といいうものらしく、何重にも重なった白菜と豚バラに

出汁がしみこみヘルシーかつボリュームもある鍋と書いてあった。

食べたい。非常に食べたい。野菜好きの僕にはたまらなく素敵な鍋じゃないか

口の中で重ね鍋のまだ見ぬ味を思い描く

そして何としても今晩の晩御飯はこれだ、と強く念じ

彼の方を見ると

相手もこっちを見ていた。そしてにやにやしながら

自分の携帯の画像を見せる。

そこには僕が今見ていたものと同じものが写っていた。

今年は何事も揉めず鍋が決まりました。



しかし

鍋を食べ終えた彼は来週からのゲームの開始を宣言してました。



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