板垣千佳子

合同会社ノヴェレッテの代表として、クラシック音楽のアーティストのマネジメントをおこなう…

板垣千佳子

合同会社ノヴェレッテの代表として、クラシック音楽のアーティストのマネジメントをおこなう。 編書「ラドゥ・ルプーは語らない。」(アルテスパブリッシング刊)

記事一覧

サントリーホールでイーヴォ・ポゴレリッチを聴く。

前職で1991年から2018年までポゴレリッチの担当マネージャーをさせていただいていた。27年間、彼の音楽の移り変わりを近くでみてきて、他のアーティストよりもずっと劇的な…

板垣千佳子
4か月前
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最後の来日にはしたくない、、、円熟のピアニスト、ヴァレリー・アファナシエフ まもなく来日

鬼才ピアニストといわれるヴァレリー・アファナシエフは現在76歳。まもなく来日して、王子ホールでの3年に渡るプロジェクト「TIME」の最終回でシルヴェストロフ、ドビュッ…

板垣千佳子
6か月前
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ピーター・ゼルキンを想う

サー・アンドラーシュ・シフのミューザ川崎のレクチャー・リサイタルに行った。 シフさんがゴルトベルク変奏曲のアリアを弾き始めた瞬間に、ピーター・ゼルキンのことを思…

板垣千佳子
7か月前
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ワイセンベルクの思い出

和喫茶でアイス抹茶ティーを注文した瞬間にアレクシス・ワイセンベルクのことを思い出した。 確か1990年頃のこと。当時、大阪のザ・シンフォニーホールの隣にはホテル…

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ラドゥ・ルプーの引退公演

4月17日。ラドゥ・ルプーがこの世を去ってからちょうど一年がたつ。 2019年6月21日、ルツェルンでの引退公演のことを思い出している。 もうこのシーズンで演奏はやめる…

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怖いのは「展覧会の絵」

どんなにクラシックが好きだって嫌いな曲はある。 私にとってはムソルグスキーの「展覧会の絵」がそれにあたる。おどろおどろしいものが嫌いだし、昔見たバーバ・ヤガーの…

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半音の魅惑~「森の情景」から

もうすぐ4月17日。ルプーさんが天国に召されてから1年がたつ。 やりきれないので、私の心の中に大切にしまわれた音の記憶をたどってみる。 「ラドゥ・ルプーは語らない…

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サントリーホールでイーヴォ・ポゴレリッチを聴く。

サントリーホールでイーヴォ・ポゴレリッチを聴く。

前職で1991年から2018年までポゴレリッチの担当マネージャーをさせていただいていた。27年間、彼の音楽の移り変わりを近くでみてきて、他のアーティストよりもずっと劇的な変化を遂げているので、どんなに音楽が奇抜でも、無条件の愛で受け入れる土台が私にはできている。今日もどんな演奏になるのだろう、バックステージでなくてホールの中で聴くことができて幸せだな、と思いながらサントリーホールに向かった。

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最後の来日にはしたくない、、、円熟のピアニスト、ヴァレリー・アファナシエフ まもなく来日

最後の来日にはしたくない、、、円熟のピアニスト、ヴァレリー・アファナシエフ まもなく来日

鬼才ピアニストといわれるヴァレリー・アファナシエフは現在76歳。まもなく来日して、王子ホールでの3年に渡るプロジェクト「TIME」の最終回でシルヴェストロフ、ドビュッシー、プロコフィエフを、また大阪、横浜公演では、ショパン作品のみのプログラムでポロネーズ、マズルカ、ワルツを弾く。
先日秘書を通じて「もう来日は最後になるのではないか」とマエストロが呟いていると聞き、愕然とする。実際、来年以降のアジア

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ピーター・ゼルキンを想う

ピーター・ゼルキンを想う

サー・アンドラーシュ・シフのミューザ川崎のレクチャー・リサイタルに行った。
シフさんがゴルトベルク変奏曲のアリアを弾き始めた瞬間に、ピーター・ゼルキンのことを思い出した。そしたら、ピーターの愛弟子のTomoki Parkさんがシフさんの通訳として舞台上にあらわれたので驚いた。

以来、ずっとピーターのことを考えている。

なぜピーターのことが心に浮かんだのか、、前々日には八ヶ岳にいて、ピーター・ゼ

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ワイセンベルクの思い出

ワイセンベルクの思い出



和喫茶でアイス抹茶ティーを注文した瞬間にアレクシス・ワイセンベルクのことを思い出した。
確か1990年頃のこと。当時、大阪のザ・シンフォニーホールの隣にはホテルプラザがあって、シンフォニーホールで演奏するアーティストはたいていそのホテルに滞在していた。ワイセンベルクのツアーに同行していた私は、マエストロに「ラウンジでお茶を飲もう」と誘われて行くと、マエストロは「ここのアイス抹茶ティーは本当に

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ラドゥ・ルプーの引退公演

ラドゥ・ルプーの引退公演

4月17日。ラドゥ・ルプーがこの世を去ってからちょうど一年がたつ。

2019年6月21日、ルツェルンでの引退公演のことを思い出している。

もうこのシーズンで演奏はやめると本人から聞いていたので、2019年の年が明けた頃から、夏までにはヨーロッパに飛ばなければとずっと思っていた。
ところが2月はじめのパーヴォ・ヤルヴィ指揮フィルハーモニア管とのロンドン公演以降、体調不良でキャンセルが続く。6月初

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怖いのは「展覧会の絵」

怖いのは「展覧会の絵」

どんなにクラシックが好きだって嫌いな曲はある。
私にとってはムソルグスキーの「展覧会の絵」がそれにあたる。おどろおどろしいものが嫌いだし、昔見たバーバ・ヤガーの絵が怖すぎたからか、「展覧会の絵」だけはどうしても好きになれない。

マネージャーをしていて幸福な時間は、アーティストとプログラムの話をする時。ある時、ガジェヴと話していたら、次のシーズンは「展覧会の絵」を弾くという。
ドキッ。えっ。私はす

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半音の魅惑~「森の情景」から

半音の魅惑~「森の情景」から

もうすぐ4月17日。ルプーさんが天国に召されてから1年がたつ。

やりきれないので、私の心の中に大切にしまわれた音の記憶をたどってみる。
「ラドゥ・ルプーは語らない。」のあとがきでは幸福な音の記憶としてシューマンの「ダヴィッド同盟舞曲集」と「ホルンとピアノのためのアダージョとアレグロ」をあげたけれども、もちろんそれだけではない。
とりわけ私の心に深く刻まれているのはシューマンの「森の情景」の第3曲

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