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のうむの有機化学「芳香族化合物の化学」

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有機化学の中でも芳香族化合物は構造,反応に特徴があります。 ここでは大学レベルの「芳香族化合物の化学」について解説していきます。
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芳香族化合物の化学(15)「アルカロイドとナノカーボン」

芳香族化合物の化学(15)「アルカロイドとナノカーボン」

有機化学の中でも芳香族化合物は構造,反応に特徴があります。
ここでは大学レベルの「芳香族化合物の化学」について解説していきます。

最終回となる今回のテーマは「アルカロイドとナノカーボン」です。

【アルカロイド】主に植物中に含まれる天然の含窒素化合物。

【ナノカーボン】sp2炭素を有する炭素の同位体はいくつか存在する。

カーボンナノチューブは次世代の材料

・炭素原子のみでできているためアル

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芳香族化合物の化学(14)「ピリジン」

芳香族化合物の化学(14)「ピリジン」

有機化学の中でも芳香族化合物は構造,反応に特徴があります。
ここでは大学レベルの「芳香族化合物の化学」について解説していきます。

今回のテーマは「ピリジン」です。

【ピリジンの構造】ピリジンは窒素もsp2混成軌道を有するため,ベンゼンと同じく芳香族性を有し,共鳴構造を描くことができる。ただし,全ての共鳴構造は孤立電子対あるいは負電荷が窒素上に残っているため,電子分布は窒素上に局在化している。そ

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芳香族化合物の化学(13)「芳香族ヘテロシクロブタジエン」

芳香族化合物の化学(13)「芳香族ヘテロシクロブタジエン」

有機化学の中でも芳香族化合物は構造,反応に特徴があります。
ここでは大学レベルの「芳香族化合物の化学」について解説していきます。

今回のテーマは「芳香族ヘテロシクロブタジエン」です。

【芳香族ヘテロシクロブタジエンの構造】共鳴構造

フラン,ピロール,チオフェンはいずれも孤立電子対をもつことから,すべて共鳴構造を描くことができ,芳香族性を有する。また,共鳴構造からわかる通り,ヘテロ元素上に正の

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芳香族化合物の化学(12)「ヘテロ環化合物」

芳香族化合物の化学(12)「ヘテロ環化合物」

有機化学の中でも芳香族化合物は構造,反応に特徴があります。
ここでは大学レベルの「芳香族化合物の化学」について解説していきます。

今回のテーマは「ヘテロ環化合物」です。

【ヘテロ環化合物の一例】
これまでの芳香族化合物は芳香環内部は炭素原子のみであったが,その他にも窒素やリンなどを含むものも存在する。さらに芳香族に限定しなければ,酸素や硫黄を環内に含む化合物が多く存在する。

【ヘテロ環化合物

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芳香族化合物の化学(11)「フェノールの反応」

芳香族化合物の化学(11)「フェノールの反応」

有機化学の中でも芳香族化合物は構造,反応に特徴があります。
ここでは大学レベルの「芳香族化合物の化学」について解説していきます。

今回のテーマは「フェノールの反応」です。

【フェノールの求電子置換反応】基本的にはベンゼンの求電子置換反応と同じ。特筆すべき点はフェノールのヒドロキシ基は活性基なので反応条件が温和になる傾向がある。

【Claisen転移】2-プロペニルオキシベンゼンは200 °C

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芳香族化合物の化学(10)「フェノールの性質と合成法」

芳香族化合物の化学(10)「フェノールの性質と合成法」

有機化学の中でも芳香族化合物は構造,反応に特徴があります。
ここでは大学レベルの「芳香族化合物の化学」について解説していきます。

今回のテーマは「フェノールの性質と合成法」です。

【フェノールの性質】ケト・エノール互変異性

フェノールはいわゆるエノール構造なのでケト・エノール互変異性が存在するが,ケト型は芳香族性を失うためエノール型が有利になる。

フェノールの酸性度

フェノールはフェノキ

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芳香族化合物の化学(9)「ベンジル位の性質」

芳香族化合物の化学(9)「ベンジル位の性質」

有機化学の中でも芳香族化合物は構造,反応に特徴があります。
ここでは大学レベルの「芳香族化合物の化学」について解説していきます。

今回のテーマは「ベンジル位の性質」です。

【ベンジル型共鳴】トルエンはメチル基(ベンジル位とも言う)のC-H結合がホモリティックに開裂することで,π電子がベンゼン環外へ流れるため安定化の寄与が働く。

よって,無触媒でハロゲンを加熱あるいは光照射させることでベンジル

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芳香族化合物の化学(8)「多環芳香族炭化水素の反応」

芳香族化合物の化学(8)「多環芳香族炭化水素の反応」

有機化学の中でも芳香族化合物は構造,反応に特徴があります。
ここでは大学レベルの「芳香族化合物の化学」について解説していきます。

今回のテーマは「多環芳香族炭化水素の反応」です。

【ナフタレンの反応性】ナフタレンには2か所の反応点があるが基本的に1位選択的に反応が進行する。また,ナフタレンはベンゼンよりも活性が高いため,ハロゲン化では触媒が必要とせず,ニトロ化のプロトン源は濃硫酸でなく酢酸で反

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芳香族化合物の化学(7)「置換ベンゼンの合成戦略」

芳香族化合物の化学(7)「置換ベンゼンの合成戦略」

有機化学の中でも芳香族化合物は構造,反応に特徴があります。
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今回のテーマは「置換ベンゼンの合成戦略」です。

【配向性による置換反応の制限】ニトロベンゼンに対する置換反応は配向性によりメタ位にしか置換基導入ができない。一方,アニリンはオルト,パラ位に置換反応が進行する。そのため,オルト/パラ置換ニトロベンゼンやメタ置換アニリン

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芳香族化合物の化学(6)「置換基効果と配向性」

芳香族化合物の化学(6)「置換基効果と配向性」

有機化学の中でも芳香族化合物は構造,反応に特徴があります。
ここでは大学レベルの「芳香族化合物の化学」について解説していきます。

今回のテーマは「置換基効果と配向性」です。

【置換基効果】電子供与基と電子受容基

置換ベンゼンは置換基によって電子供与基と電子受容基に分類され,芳香族求電子反応の反応速度を変化させる。

反応性を変化させることから,電子供与基は活性基,電子受容基は不活性基とも呼ば

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芳香族化合物の化学(5)「芳香族求電子置換反応」

芳香族化合物の化学(5)「芳香族求電子置換反応」

有機化学の中でも芳香族化合物は構造,反応に特徴があります。
ここでは大学レベルの「芳香族化合物の化学」について解説していきます。

今回のテーマは「芳香族求電子置換反応」です。

【ベンゼンの求電子剤の反応】ベンゼンは共鳴安定化により,芳香族安定性を失う付加反応を起こさない。代わりに芳香族求電子置換反応を起こす。

反応機構

求電子剤(E+)への求電子攻撃をした後,脱プロトンが進行する。

エネ

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芳香族化合物の化学(4)「多環芳香族炭化水素と芳香族性」

芳香族化合物の化学(4)「多環芳香族炭化水素と芳香族性」

有機化学の中でも芳香族化合物は構造,反応に特徴があります。
ここでは大学レベルの「芳香族化合物の化学」について解説していきます。

今回のテーマは「多環芳香族炭化水素と芳香族性」です。

【多環芳香族炭化水素】概説

複数のベンゼン環が縮大しπ電子系が拡張した炭化水素を多環芳香族炭化水素(PAH; Polucyclic AromaticHydrocarbon)と呼ぶ。

IUPAC命名法による簡単

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芳香族化合物の化学(3)「芳香族化合物の分子軌道」

芳香族化合物の化学(3)「芳香族化合物の分子軌道」

有機化学の中でも芳香族化合物は構造,反応に特徴があります。
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今回のテーマは「芳香族化合物の分子軌道」です。

【ベンゼンの分子軌道】全ての炭素はsp2混成軌道を有し,C(sp2)-C(sp2)結合によりσ結合,p軌道によりπ結合を形成する。このπ結合が共鳴安定化により,ベンゼン環の上下に電子雲を形成する。

【ベンゼンのπ分子

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芳香族化合物の化学(2)「芳香族化合物の構造」

芳香族化合物の化学(2)「芳香族化合物の構造」

有機化学の中でも芳香族化合物は構造,反応に特徴があります。
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今回のテーマは「芳香族化合物の構造」です。

【ベンゼンの特異性】① 水素化熱が1,3,5-cyclohexatriene(予測値)よりも低い。

1,3-cyclohexadieneの水素化熱はcyclohexaneのおよそ2倍になる。
(正確にはジエンの共鳴安定化

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