芳香族化合物の化学(13)「芳香族ヘテロシクロブタジエン」
有機化学の中でも芳香族化合物は構造,反応に特徴があります。
ここでは大学レベルの「芳香族化合物の化学」について解説していきます。
今回のテーマは「芳香族ヘテロシクロブタジエン」です。
【芳香族ヘテロシクロブタジエンの構造】
共鳴構造
フラン,ピロール,チオフェンはいずれも孤立電子対をもつことから,すべて共鳴構造を描くことができ,芳香族性を有する。また,共鳴構造からわかる通り,ヘテロ元素上に正の形式電荷が偏ることから,ヘテロ元素上は電子不足で,環上の炭素は電子豊富になる。
安定性
芳香族ヘテロシクロブタジエンの芳香族性はヘテロ元素による電荷の偏りが小さいほど増大する。したがって,電気陰性度の小さいチオフェンが最も芳香族性が高く,フランが最も小さい。
【芳香族ヘテロシクロブタジエンの合成法】
γ-ジカルボニル化合物に対し任意のヘテロ元素源を加えて環化させることで合成できる(Paal-Knorr合成法)。
【芳香族ヘテロシクロブタジエンの反応】
芳香族求電子置換反応
フラン,ピロール,チオフェンは芳香族性を有することから,ベンゼン同様に芳香族求電子置換反応が進行する。反応点は2,3位の2か所だが,2位への反応が有利に進行する。
ピロールのプロトン化
ピロールは窒素上の非共有電子対が芳香環に流れ,窒素上は電子不足になることは共鳴構造からわかった。つまり,ピロールはアミンと比較して塩基性が低く,窒素上ではなく,2位がプロトン化される。
一方,塩基存在下でピロールは容易に脱プロトンすることができる(pKa = 16.5)。
開環反応
フランは温和な条件下で加水分解し,γ-ジカルボニル化合物が得られる(Paal-Knorr合成法の逆反応)。
チオフェンはRaneyニッケルを用いた脱硫酸を行うと,硫黄を含まない非環状飽和化合物が生成する。
Diels-Alder反応
フランは最も芳香族性が低いので,唯一Diels-Alder反応が進行する。
【参考図書】
ボルハルトショアー現代有機化学(下)
「芳香族化合物の化学」をまとめたpdf(power pointスライド)も作成しております。
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