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#エッセイ 記事まとめ

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noteに投稿されたエッセイをまとめていきます。
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#人生

おばあちゃんは88歳で本を書き始めた。

小さい頃から本が大好きだったおばあちゃん。 とにかく活字を読むのが好きだった。 でも歳を重ねていくうちに、大好きだった本も目が疲れるから読めなくなっていた。 そんなおばあちゃんが、88歳で本を書くと言い始めた。 なにか物語が思い浮かんだわけではなく、 自分のことを書いて残しておきたい、という想いからだった。 原稿用紙に震える手で書き始め、 最後の方はもう字が書けなくなってしまったので おばあちゃんが喋る内容を家族が聞いてメモを取っていくやり方に変わった。 おばあちゃん

食べ頃のアボカドを売ってくれるスーパーは天才

日本の夏。人の居なくなる日中の賃貸アパートのなんと暑いことか。 これにはアボカドもバナナもお手上げである。 アボカドとバナナ。この子らは二大「追熟が美味しさの要となる食べもの」だ。というか要どころか、すべてだ。 彼らはスーパーではたいてい、食べ頃より少し前、まだ熟し切っていない状態で売られている。遠い国で収穫・出荷され、輸入されて日本にやってきてスーパーに並ぶまでの時間の考慮や、売り場に並べることの出来る日数もできるだけ長くなるようにということだろう。(最近知ったのだが、

おいしい人生の必需品

 ねぇ、カートリッジ換えた? 今日のお米、おいしいね!  当時 小学1年生だった娘のことばに、心底おどろいた。たしかに炊飯前、わたしは浄水器のカートリッジを交換した。白米を食べて、水の味の違いをわかるだなんて、どんな繊細な舌を持ってるんだろう。天才じゃあるまいか。もう、この子は料理人に育てるしかない!と思ったかどうかは忘れたけれど、わたしは舞い上がった。  今思えば、すべての幼いこどもは天才だし、娘は料理人になりそうにない。   ❅    我が家のキッチンには、ポッ

一周まわってせまい世界

小中高は学年全員友達!みたいに明るく努めていた。 そのことに疑問を感じたことはなく、自分はそういう性格だと信じて疑ったことはただの一度もなかった。高校2年の冬までは。

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己の人生を追い求める父の人生ゲーム

数年前の冬。 実家に帰った時に、いつもあまりタイミングの合わない兄と私の帰省が重なり、珍しく家族が4人実家に揃うことがあった。 仕事の都合でお正月に休みを取れないこともある兄や、交通費が跳ね上がるため、帰省シーズンをずらして帰ったりする私。 両親は祖父の介護をしていたことなどもあり、ここ数年は各々が忙しい毎日を送っていた。 そんなわけであまり昔のように家族で団らんをするようなタイミングがなかったのだが、偶然が重なり、その年は数年ぶりに4人で落ち着いたお正月を迎えた。 ゆっ

地球は自転し回ってる、いつまでも

 半年ぶりくらいに、いつもお願いしているカメラ屋さんを訪れて以前預けていたフィルムの現像を取りに行った。ついでと思ってフィルムを8本預けたら、なんと諭吉さんが一枚吹いて消えた。突然のことすぎて、声を出す暇もなかった。久しぶりに現像に出しに行って忘れていたが、こんなに現像するのにお金がかかったんだっけ?と若干震える手でクレジットカードを差し出す。 *  緊急事態宣言だから、と自分に言い聞かせてこのところフィルム現像を取りに行くことをサボっていた。昔は少なくとも1ヶ月に1回く

間違えた道の先で、素敵な花に出逢えるかもしれない

分かってくれる人がいてほしいだなんて、 おこがましいのかな。 例えば、あの映画のあのシーンがグッとくるとか 例えば、あの曲のこの歌詞に泣けるとか。 自分と同じ人間なんていないと分かっているのに、どこか通じ合える人を心から求めてしまう夜がある。 たぶん私は、心の深い部分を分かってくれる人を常に求めているんだろうなぁ。 そしてそんな人はなかなかいないから、分かってくれる人が現れると軽率に好きになってしまう。 そういうとこ、ある。 心の深い部分というのは、 その人の本質を表

幸せへの軌跡

昨晩、集まった人たちと別れてひとり帰路についたのは、あと1時間ほどで今日という奇跡的な一日が終わろうとしている時刻だった。 冷たい北風がワインでホロ酔いになった火照った頬に気持ちよく、最寄り駅から家までの夜道を大好きな藤井風の曲を聴きながらゆっくりと歩いた。 スコーンと抜けた真っ暗な高い空を見上げると、明るく輝く月がほぼ真上に浮かんでいる。空気は澄み渡り、上空の風が強いことを示すように月の周りを雲が早足で駆けてゆく。その神々しい姿をじっと見つめていると今日一日の出来事が次

『明日、世界一周に行く』という人生

2020/9/24@八王子 『 人は幸福になるために生きているけど、幸福になるようにデザインされてない。』 って本で読んだ。 『 お金は鋳造された自由だ 』 とドストエフスキーは言った。 明日、世界一周に行くこの言葉が胸にあれば、生きていける。 人生の軸である。 歩くための背骨である。 " 明日、世界一周に行ける " 自分になるために、今日の自分がある。 自分になるために、今日の自分がある。 湯浅教の誕生である。 絶対的な教えがあれば、宗教は作れる。 教典は、『 幸

初めて自分らしく笑えた日。

「生まれた環境を言い訳にしない」 これは、僕がいつ何時でも忘れないように、 心の中で大切にしている信念。 でも昨日、ある飲み会がきっかけで、 僕の人生の中に、もう一個、信念ができた。 「本当の自分で生きる」 たけひろ シャルコーマリートゥース病。 はい?と思った方、その判断は間違ってない。 こんな病気、聞いたこともないだろう。 僕も初めて聞いた時、 外国の美人な女性を、頭に思い浮かべた。 そう、彼女の名前のような病気こそ、 僕が生まれつき抱えている難病である。

繊細で傷つきやすいあなたに「ちょっと変わってる人になる」ススメ

最近、HSP(ハイパー・センシティブ・パーソン)という単語が流行っているらしい。 人一倍繊細で傷つきやすい人を指すとのこと。 実際にHSP的な傾向があって大変な人もいると思うけれど、若く多感な時期はだいたいみんな繊細で傷つきやすいものだろう。 大人になるほどに、おおかたの人は頑張ったり頑張らなかったりして鈍感になっていくのだけれど、それは傷つきやすい時期を経た後の話だ。 じゃあ、どうやって傷つきやすい時期を乗り越えたらよいのだろうか。(あるいは、どうやって傷つきやすい

今日もわたしは、適切に生きられない

今朝も、コーヒーを淹れる。 * コーヒーは良い。 そして、ペーパードリップは良い。 お湯を沸かしているあいだに、顔を洗う。 そして、お湯が湧いたら煙草に火をつけて、ゆっくりとドリップする。 わたしの、大切な時間。 * 何百回、 きっと何千回も、わたしはペーパードリップしている。 サーバーは定期的に割ってしまっているので、もう3代目か4代目になるけれど いつも同じくらいの大きさのサーバーを買って、たっぷりと落とす。 やかんはもう、10年以上同居をしている。 あ

私は逃げるために戦場から降りた

私には趣味がない。 たまに「趣味は?」と聞かれたときは、ギターとかお菓子作りとか言ってみたりする。 話のつなぎとして言ってみるけど、それはただの私が「出来ること」に過ぎなかった。 本当は趣味と言えるほどではないし、思い入れも今はない。 とにかく私は悲しいほどに物事にすぐ飽きてしまう人間だった。 だから「好き」という理由で何かを続けることができなかった。今までずっと。 だから、自分の好きなことに没頭している人がすごく羨ましい。 私も新しいことを始めると、周りが見えな

嗚呼、俺たちの明日よ。

また、こいつも結婚か。 ふと来る、昔からのLINEグループでの「私事ですが」。 そういや、25過ぎた辺りから、こんな感情が湧き出てきた。 嬉しいんだけど、なんか離れていく。そんな、もどかしい感情。 そういや、そうだな。 学生時代バカやってた時代から、もう幾つも時も重ねてきた。 俺といえば、まぁ知ってる企業に入社して、 若い頃はヤンチャしてたけど、なんか仕事にも慣れて。 このままでいいんだけど、このままでいいのか?という感情が常に付く。 そうか、あいつも結婚か

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