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【小説】読書感想文

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【noteの「読書の秋」特集ページ(https://note.com/topic/reading)に掲載】小説の読書感想文をまとめています。
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記事一覧

木平古栗「ポジティブシンキングの末裔」で皮剥かされた

元旦に高尾山に登り、心から健康を祈願し始まった本年。山も登って団子も食った元旦が、今年一番元気だった気がする。2024年に投稿したnote記事のどれを読んでもおわかり頂けるが、絶不調の日々が続いている。 健康守りとして買ったひょうたんが連なった根付けは、我が家の鍵につけてしっかり持ち歩いている。人生のどん底と言うわけでもなく、低空飛行でも細々生きていられてるのは、この800円くらいしたひょうたんのおかげだろうか。 そもそも、実際にひょうたんのおかげでなくても、「〜〜のおかげ

『ふたつの人生』 ウィリアム・トレヴァー(著),栩木伸明 (訳) 中篇ふたつを一冊の本にまとめたもの。最高の短篇小説家による中篇は、果たして最高か?いやあんまり面白かったので感想文書いたら盛大ネタバレになってしまいました。

ふたつの人生 (ウィリアム・トレヴァー・コレクション) 単行本 – 2017/10/25 ウィリアム・トレヴァー (著), 栩木伸明 (翻訳) Amazon内容紹介 本の帯 裏から ウィリアム・トレヴァー・コレクション(全五巻)の紹介文 ここから僕の感想 というわけで、「世界最高の短篇作家の、その中篇小説」って、どうよ。この前読んだ短篇集『ラスト・ストーリーズ』はほんとによかったから。   この本に収められたふたつの中篇、印象・性格が全然違う二篇でした。    先

【メンバーシップ】村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」

こんばんは! 僕の頬に痣はありません!小栗義樹です。 また1週間が始まってしまいましたね(笑) 僕は今週から、越谷雑談がやてっくのコンテンツとなる「情報源」の確保に邁進するつもりでいます。 このあたりの話も、いずれはメンバーシップに書こうと思っているのですが、そろそろ「がやてっくというニュースメディアのこと」を赤裸々に書く場所を作りたいなって考えています。 毎日のほほんと更新している越谷雑談がやてっくですが、無意味なことはしたくない性格のため、そこにはちゃんと狙いや意図

『1Q84』:春樹ワールドの魅力にどっぷり浸かる

みなさん、いかがおすごしですか! オーウェルの1984を紹介したこともあって、今度は村上春樹さんの代表作の一つ『1Q84』について、じっくり語りたいと思います。この小説は、私たちを別世界へと誘い、現実とは少し違う不思議な世界観で魅了してくれます。それでは、さっそく『1Q84』の世界へ飛び込んでいきましょう!  ※ネタばれありなので、読まれていない方は注意してください。 ストーリー:2人の主人公と不思議な世界の始まり『1Q84』は、30歳の青豆という女性と、予備校講師の天吾と

筒井康隆「ビアンカ・オーバースタディ」ほか

【どうでもいい話】「作品を出すだけで嬉しい」とは、作家にとってある意味で辛い言葉ではなかろうか。 もちろん褒め言葉としても取れるが、自作の作品としての良し悪しを度外視されるのは優しい戦力外通告のようにも聞こえる。 それでも、筆者には二人「作品を出すだけで嬉しい」作家がいる。一人は筒井康隆、一人は萩尾望都だ。 もう筒井康隆は「ダンシング・ヴァニティ」も「聖痕」も「モナドの領域」も読んでいない。萩尾望都も新作のポーの一族は「春の夢」で止まっている、「王妃マルゴ」は今後もおそら

『城』小説家 辻邦生の始まり。運命に左右されるリゾート地の夏。

発表年/1961年 短編『城』は、辻邦生作品の中で初めて商業出版誌に掲載されたものです。辻邦生さんはこの小説で「小説を書くというエクスタシーを全身で味わった」とおっしゃっています。そのことは、このあとに書いた『ある晩年』についてのあとがきでも語っておられます。 さらに雑誌『近代文学』を創刊された埴谷雄高氏から、いいものが書けたら「近代文学」に載せてあげる、と言われたことで、辻邦生さんは最初から、 ということになります。何と羨ましい出発でしょうか・・・ 1.フランス滞在か

「人間失格」の超かんたん解説~太宰治の魅力にハマる?~

今日は、超有名だけど暗そうで敷居の高い本「人間失格」について、分かりやすく語っていこうと思いまーす。ちょっと難しそうなイメージがあるかもしれないけど、この小説、じつはとっても共感できる人間ドラマなんですよ。太宰治の波乱万丈な人生も垣間見えちゃうから、興味津々間違いなし!さぁ、「人間失格」トーク、スタートしましょう! 太宰治って、どんな人?まずは、この小説を書いた太宰治について、ちょこっとお勉強しましょう。太宰治は、昭和初期に活躍した、とっても個性的でユニークな小説家なの。彼

【読書感想文】ナースの卯月に視えるもの

Amazonへ投稿したレビューをまず転載します。 【これは慈愛の物語】  タイトルだけを読むと「ちょっとホラーかしら」と警戒してしまいました。良い意味で騙された気分です。だって卯月に視えるのは「優しい心が生み出す優しい世界」なのですから。その優しさを受信して卯月が動き出し物語が展開していきます。  看護の現場を緻密に心情豊かに描く「お仕事の場面」と日常的な「お食事の場面」を切り替えながら、主人公や同僚、患者など登場人物たちの生活、生命の活動の物語です。  病も死も悪い事、

子どもでもわかる「原因・結果の法則」⁉️芥川龍之介の『蜘蛛の糸』②

いつも私の記事をご覧くださり、ありがとうございます! この度、定期購読マガジン「仲川光🌸文学入門①近代文学」、第四回目の記事を公開させていただきます! この記事がいいな!と思った方、続きが読みたいと思った方は、ぜひ定期購読マガジンの方をご検討くださいね。↓↓ ※単体の有料記事だと250円。 ※定期購読マガジンですと1ヵ月980円。(約8記事分) ※単体記事で8記事買うと2000円になるため、継続購読であれば、圧倒的に定期購読マガジンがお得です🌸 前回に引き続き、芥川龍

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SF短編集2冊の感想

少し前に読んだ作品の感想を2件、まとめた記事です どちらもジャンルとしてはSFに相当する作品なのですが、SFってこんな作品もあるんだ、こんな切り口のSFもあったのか、と、意外性を感じ取れる作品集ですので、普段SFというものを読みつけてない方へも、どっぷりSF沼に漬かっている方へもおすすめしてみたい作品となっております 高山羽根子/うどん キツネつきの タイトルにきつねが入っているので読んでみた作品です 創元SF文庫というレーベルのこともあり、SFを読むつもりで飲み始めた

文芸誌の完成、2024年4月の読了本+感想と、活動報告

こんにちは。 執筆期間中で読書ペース、note更新が滞っていました! 読書も楽しむための読書から、研究へと移っている状況です〜! 活動報告と、文学フリマのお知らせ諸々です! これからの予定1) 5/19『文学フリマ東京』参加します!! 2週間切りましたね!自分としては3度目、第一芸人文芸部としては2度目の文学フリマ、めちゃくちゃ楽しみです。 会場でお待ちしています! そして文学フリマで初売りになる文芸誌『第一芸人文芸部 創刊準備二号』が完成しました! 書影はこちら!

「苦しい」よりも「生きられない」よりも「人生」は上―『乳と卵』川上未映子(2008年)

 胃痛と、それをかばっての腰痛の併発。そして全体的に行き止まりで、足踏みしているような倦怠感を抱えながら寄った本屋で、やっつけ気分で買った。  この小説は私が大学生だったときに読んでいる。なのに今回買うのか?もったいなくないか?など、考えるのが面倒だった。しんどくて自暴自棄になっていて、その「無駄かも精神」に唾を吐きたかった。  川上未映子×村上春樹のインタビュー本『みみずくは黄昏に飛びたつ』で、川上未映子はこの「乳と卵」のために文体を作ったと話していた。  対談集『六つの

不適切にもほどがある的な生活してました

『山の上の家事学校』 を近所の本屋さんに注文しにいったら、 「あ、それお店にありますよ」 と書店主のクワハタさんが書棚から持ってきた。 (あ、あるんだ) 地元の本屋さんなんで、ベストセラーか地元出身作家と地元誌しか置いてないだろうという思い込みを反省した。バイアス(偏見)である。 主人公の幸彦は新聞記者、しかも政治部。 おそらく全国紙、書いてないけど。 離婚して1年。 生活がどんどんすさんでいく。 コンビニ弁当のガラがほどよく積み上がる。 万年床。閉まったままのカーテン。

じんわり涙が溢れる、切なすぎる小説 6冊

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