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74.ああ、時は、なんて早いの。人生はまるで砂時計のように思えるわ!

「明日への手紙・あれから」


夜汽車に乗っていつまでも、いつまでも手をふり続けていたつばさ。

あれから2年が過ぎ、もうすぐ母になるつばさ。

私はあなたのことを、ひとり想い出しています。

花嫁になる日までのあなたの想い出をかみしめたように、もう一度あなたの幼い頃のことを味わっています。

子どもが生まれると、周りにはあたたかな、しあわせな雰囲気が生まれるのはなぜでしようね。赤ちゃんは泣きますが、周りは笑顔に包まれます。わたしはあなたの泣き声を想い出しました。

わたしもあなたと一緒に泣いていたのを覚えていますか?

その日はかみさまが与えてくれた今日という一日でした。


あれから28年以上もの年月が流れました。次はあなたが母親になる番ですね。そして、わたしが微笑む番です。

あなたが、これから誕生する赤ちゃんと一緒に泣いているのが見えます。実は、そんな情景を思い描きながら、わたしもまた泣いてしまっているのです。


いのちからいのちへ、そしてまた、

いのちからいのちへと続いていくのですね。


おばあちゃんからわたし。わたしからあなた。生まれてくる赤ちゃんは四代目になるのね。

もうすぐ三人の母親に見つめられて、四人目の母になる子が生まれます。

さあさあ、顔を見せてちょうだいな。

新しいいのちさん、あなたにふたつの詩を贈ります。

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絵本「今日」作者不詳 伊藤比呂美訳 福音館書店刊より

「TODAY(今日)」

今日、わたしはお皿を洗わなかった。
ベッドはぐちゃぐちゃ。
漬けといたおむつはだんだんくさくなってきた。

昨日こぼした食べかすが、床の上からわたしを見ている。
窓ガラスはよごれすぎてアートみたい。
雨が降るまでこのままだとおもう。
人に見られたらなんていわれるか。

ひどいねぇとか、だらしないとか、今日一日、何をしていたの?とか。
わたしは、この子が眠るまで、おっぱいをやっていた。
わたしは、この子が泣きやむまで、ずうっとだっこしていた。
わたしは、この子とかくれんぼした。

わたしは、この子のためにおもちゃを鳴らした。
それはきゅっと鳴った。

わたしは、ぶらんこをゆすり、歌をうたった。
わたしは、この子にしていいこととわるいことを教えた。

ほんとにいったい一日何をしていたのかな。
たいしたことはしなかったね、たぶん、それはほんと。

でもこう考えれば、いいんじゃない?

今日一日、わたしは、澄んだ目をした髪のふわふわなこの子のために、
すごく大切なことをしていたんだって。


        絵本「今日」作者不詳 伊藤比呂美訳 福音館書店刊より

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人は生まれる時に泣き、周りをしあわせの笑顔でいっぱいにしますね。
人が逝く時、やっぱり周りは涙を流し、悲しみの渦に包まれます。
逝く人は感謝の微笑みに包まれて、この世から離れていきます。

でも、どちらも幸せと喜びと感謝の涙ですね。


「A TOUCH OF LOVE(ふれあい)」


六月の赤ちゃん。
笑顔をふりまくあなた。

わたしが瞬きするうちに、いつのまにかひとつになっていた。

ふたりでいっぱい楽しむはずだった一年なのに、
いつのまにか、あなたはふたつになっていた。
ふたつのあなたは、わたしに甘えっぱなし。

みっつになったら、自分の意志を持ちはじめた。
みっつのお誕生日、もう少しこのままでいてほしいと願ったけど、
ケーキの上のろうそくは四本になっていた。

よっつになったあなたはすくすく育ち、
ああ、もうあなたはいつつになってしまった。


今やあなたは本や規則を受け入れる時がきた。
そう、あなたはもう学校に行く歳になった。


ついにその日がやってきて、あなたはきっと不安でいっぱいのはず。
ふたりでゆっくりと名残を惜しみながらバスに向かう。
あなたがバスのステップに足をかけ、わたしにさよならと手をふる。
言葉につまり、わたしは涙が止まらなくなった。

ああ、時間はなんと早く流れていくの。

つい昨日まで、あなたと過ごした時間は夢のよう。

そして明日、バスがあなたを連れ帰り、あなたの両足が地面についたとき、
あなたは立派にキャップとガウン(卒業式)を身にまとっているのでしょう。
だからこそ、わたしはこの一瞬一瞬を握りしめておこうと想う。


次にあなたを見やるとき、あなたの横にはたくましい男が立っているのだからね。
                     作者不詳 創訳COUCOU

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ああ、時は、なんて早いのでしよう。

人生はまるで砂時計のように思えます。

ある百歳の老人はいいました。
「百年なんてあっという間に過ぎる。もし人生が二百年あっても同じだろう。だがな、一日を一年、十年と想って味わえば、何百年も人は生きることができる。だがな、実際に何百年生きたとしても同じ。人生はあっという間に過ぎ去るものよ・・」


©Social YES Research Institute / coucou


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coucouです。みなさま、ごきげんよう!

このつばさの物語は、私のかけがえのない人の一人です。言葉こそ少ないけれど、娘を見続ける、見守り続ける姿を見ていたら、この物語が生まれました。夜汽車は結婚式を挙げてしあわせそうな、かなしそうな顔をしている娘さんの心を代弁したものです。

いつのまにか、私は母親となってしまいました。


みんな、いつもありがとう!


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