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167.歌のつばさに 愛しき君をのせて

明日への手紙〈はじまり〉

今日はどうしてもあの時のあなたに逢いたくなったのです。
だから、私は時間旅行をして、幼い娘に逢いに行く事にしました。

私は目を瞑り、心を静かに穏やかにして、あの日、あの時を想い出します。
すると、暗闇の奥深くにたたずむ光を感じ、その光の中からあなたの声が聴こえました。

とても懐かしく、あたたかな風を感じます。

©NPО japan copyright association Hiroaki


一番目の想い出は、あなたがお腹にいた時です。

私がいつもお歌を聴かせたり、いろんなお話をするたびにお腹を蹴って返事をくれましたね。
私がとても悲しいときも優しく声をかけてくれましたね。
私はいまでもしっかりとそれを覚えています。

二番目の想い出は、あなたが初めてママと言ってくれた時です。

私はとても驚きました。
その時、私はあなたのママになりました。
あなたはどんな時でも声をかけてくれました。
私が困っている時、悲しんでいる時、どうしたらよいか解らない時、あなたは笑顔で話しかけ、一緒に歌を歌ってくれましたね。
私の幸せな時でした。

三番目の想い出は、私が実現できなかった事のひとつひとつを、あなたが叶
えていく姿。

あなたが叶えたすべての事が私の実現でもあったのです。

私の人生はあなたの人生のすべて。
あなたの人生こそが私ができなかった人生のすべて。
だから何も悔いがありません。
私には喜びしかありません。
あなたは私に大きな幸せをくれました。

あなたのおかげで、美しいメロディーが私の心の中に流れています。

©NPО japan copyright association Hiroaki



つばさのうた

歌のつばさに愛しき君をのせて
ガンジスの野辺へと君を運ぼう
そこは白く輝く美しい場所

そこは赤い花が咲き誇る庭
静寂の中 月は輝き
水連の花 愛する乙女を待つ

菫は微笑み 星空を見上げ
薔薇が耳元でささやく 芳しきおとぎ話

賢くおとなしい小鹿
走り寄り 耳をそばだてる
遠くに聞こえる 聖なる川の流れ

僕等は椰子の木の元に降り立ち
愛と平穏を満喫し
幸福に満ちた夢を見よう


この歌は1836年にドイツの詩人ハインリッヒ・ハイネがつくり、メンデルスゾーンが曲を付け
たものです(今から177年前)。
「うたのつばさ」という詩で、歌のつばさを借りて陽のさす花園の香りとともに、幸せ溢れる懐かしき夢の国へ行く歌です。


私は、つばさを自由に羽ばたかせて、幸せが溢れる国に行ってほしい、そんな願いから、あなたを《つばさ》と名付けました。
つばさは私がとても苦しく、孤独で寂しかった頃、ずうっと見守り支えてくれましたね。
もし、あなたがこの世に誕生していなかったら、今の私の人生はありませんでした。

いつも二人だったけれど、一人ぼっちではありませんでしたね。
ですから、あなたが幸せになってくれれば、もう私に寂さはありません。

私は少しだけ時間旅行を未来にセットしてみました。

©NPО japan copyright association Hiroaki

今日は私の人生の最良の日です。

昨晩は眠ることを忘れ、時間旅行をしていました。
時間がまるで止まったかのように、朝が緩やかに流れていきます。
窓の外には優しい鳥の声が鳴り響き、日差しは柔らかく、緑は美しく青々として、まるでつばさの歌のように、爽やかな風が心地いい。
私の心の中に大好きなレ・ミゼラブルの「夢破れて」の曲が流れています。

私は喜びで一杯です。

夢に描いていた光景が私を包んでくれています。
ウエディングドレスを纏った娘を家から送り出します。
娘は、家と猫たちに挨拶をします。
猫のネムとリンちゃんはなぜか寂しそう。
一緒に行きたいのでしょうね。
二匹をそっと抱きしめながら、「許してね・・」、と語りかけます。
そして、娘は猫たちに「ありがとう」と挨拶しました。
猫たちの鳴き声も祝福の声でしょう。
後ろ髪をひかれながら扉を閉めました。

私たち親子は悲しみなんてまるでないのに、涙が溢れんばかりです。

式場に向かう時間の中でもその曲は響き続けます。
なぜか、人も周りの建物も光り輝いているような気がします。
なんとゆったりとした時間の流れなのでしょう・・。

なんと光に満ちた時なのでしょう・・。

ようやく式場に着きます。夕方からの式なのに朝早くからの出発でした。
式が始まりました。私も娘も、父や母も友人たちも緊張していました。
誰にも解らないと思いますが、この式は私の結婚式でもあるのです。
私が望んでもできなかったこと、私の願っていたことのすべてが実現する時だからです。

この時をどれだけ願ってきたでしょう。
式の始まりと同時に娘と私が選んだ曲が流れます。
バッハの「カノン」「主よ望みの喜びよ」「G線上のマリア」などの曲はまさにこの日に相応しい・・。

この日は神様の光に導かれた時でした・・。

私の未来の時間旅行はここまでです。

©NPО japan copyright association Hiroaki


私は時間旅行中に不思議な光景に出くわしました。
少し寄り道をしてみましょう。

そこは、ある駅のホームでした。
ホームには7、8人ぐらいの人のかたまりがありました。
その中央には新しい洋服を着て、とても嬉しそうな笑顔の女の子がいます。
少し離れたところには、女の子の母、祖父母、伯父さんと思われる人がいました。

伯父さんらしき人は両腕に二匹のネコを抱いています。
みな楽しそう、何やら明るい話題で持ちきりのようでした。
きっと、めでたい旅立ちの日なのでしょう。

ホームにアナウンスが入り、汽車が到着しました。
女の子は大きな荷物を持って、嬉しそうに手をふりながら汽車に乗り込みました。
女の子は重い荷物を荷台に乗せて、大急ぎで窓側の席に着きます。
定刻通り発車のベルが鳴り響きました。
女の子は慌てて、少し曇った窓ガラスを手でこすります。

あんなに楽しそうに笑っていた女の子の目からは涙が溢れていました。

ホームで見送る人たちもみんな泣いています。

そして、汽車は走り出しました。

母らしき人は動き出した汽車を追いかけるように走り出しました。
ホームの先端まで来ると立ち止まり、汽車が見えなくなるまで手をふり続けていました。

みな、涙していました・・けれど、笑顔です。

やがて、緑の森の中へと汽車は走り、そして見えなくなりました。

その時、女の子は流れていく車窓に何を想い、何を考えていたのでしょうか。
次に会えるのはいつなのでしょう・・。

移りゆく景色を身動きせず、じっと見つめていた女の子。

未来のあなた・・幸せですか?

人生、がんばっていますか。

これはあなたの時間旅行?

それとも私の時間旅行?

人生って、やっぱり「ありがとう」しかありませんね。

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