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エシカルフード コーナー展開の効果 ーエシカル消費研究会第4回レポート

こんにちは。「Tカードみんなのエシカルフードラボ」事務局です。
「Tカードみんなのエシカルフードラボ」では、食の領域を中心とした生活者のエシカル消費に関してさまざまな視点で研究開発し、その成果を発表していく「エシカル消費研究会」を立ち上げました。
2022年12月16日、流通・メーカー・専門家が一堂に会し、第4回の研究会をオンラインで開催しましたので、その様子をお伝えします。
 
 前回の様子はこちら

 
第4回「エシカル消費研究会」の参加企業 ※五十音順
・味の素株式会社
・ハウス食品グループ本社株式会社、ハウス食品株式会社
・株式会社ファミリーマート
・明治ホールディングス株式会社
・河口真理子さん(立教大学・不二製油グループ本社株式会社)
・佐々木ひろこさん(一般社団法人Chefs for the Blue)
・中村優吾さん(九州大学大学院システム情報科学研究院 助教)
・山本謙治さん(株式会社グッドテーブルズ) 
ほか1社


1.   エシカルフードを集めたセレクトショップで消費者意識に変化


2022年10月16日(日)、1ヶ月限定のセレクトショップ「Hello,エシカル!~お買いものから地球を考える~」が代官山の蔦屋書店内にオープンしました。

Hello,エシカル!~お買いものから地球を考える~ 売場の様子

これはエシカルフード基準を満たしたチョコレートやコーヒーを集めたセレクトショップで、エシカルな課題や各企業の取組の情報の展示も行いました。そういった情報に接した時、消費者はどう感じ、どう動くのか、この取り組みを今後に繋げていくために、来場者の方にご協力いただきアンケートを実施していました。その結果を中心に、検証レポートとして研究会で報告しました。 アンケート協力者の内訳は、女性が83.8%で大半を占め、性年代では女性40代、50代が45.1%を占めました。協力者のエシカル認知率は、「内容まで知っていた」と「聞いたことはあるが内容はよくわからなかった」を合せた認知・計で73.0%でした。2022年2月に実施した調査では認知・計で32.9%でしたので、参考比較ではありますが、一般的な消費者全体と比べて元々エシカル認知率が高い人たちであったと考えられます。また、普段エシカルを意識して食品を選ぶことがあるかについては、チョコレートで37.7%、コーヒーで33.9%の人が、「よく選んでいる」もしくは「時々選んでいる」と答えています。食品・飲料全般では51.4%でした。 では、セレクトショップの展示を見てどう感じたのかを見ていきます。ここからは、下の図の定義に沿ってエシカル度で分類して見ていきました。 

エシカル度の分類


対象商品への好感度の変化では、全体で87.3%が「好感度が上がった」もしくは「やや好感度が上がった」と答えました。好感度が下がったと回答した人はいませんでした。エシカル度別では、エシカル度の高い層ほど好感度が上がった人が多い傾向でした。
また、対象商品の購入意向については、全体で89.9%が「買いたい」もしくは「やや買いたい」と答えました。買いたくないと回答した人はいませんでした。エシカル度別では、エシカル度の高い層ほど購入意向があると回答した人が多い傾向でした。

対象商品への好意度の変化/購入意向


購入意向の理由については、全体では「フェアトレードを行っているから」「オーガニックだから」「おいしそうだから」が上位でした。エシカル度別では順位に変動があり、それぞれ購入意向に繋がる動機が異なることがわかりました。
エシカル意識・実践ありの層は「フェアトレードを行っているから」に続き、「エシカルな取り組みに共感したから」が高くなっていました。普段からエシカルを意識して実践している層にとっては、「エシカルへの共感」が購入理由になり得ることが確認されました。
エシカル意識・実践なしの層は、「フェアトレードを行っているから」「オーガニックだから」「環境に配慮された包材だから」が高くなっており、エシカル自体への共感より具体的な取り組み内容を理由として選択する人が多い結果でした。普段実践していない層には、「エシカル」という概念自体への共感を促すよりも、具体的な取り組み内容から入る方が受入れられやすい可能性があると考えられます。
また、エシカル認知なしの層は「おいしそうだから」が最も高く、「オーガニックだから」がそれに続きます。オーガニックについては、以前の消費者インタビューで健康によいイメージを持たれる傾向がみられました。この層は、まずはその人自身にとってメリットのある価値が重要であると考えられます。

対象商品 購入意向の理由

2.   エシカル消費における消費者のステイタスと態度変容モデルー仮説― 


後半では、これまでの研究結果を元に、エシカル消費における消費者のステイタスと態度変容モデルの仮説を共有し、参加者でディスカッションを行いました。
 
まず前提として、Tカードみんなのエシカルフードラボでは、「すごくエシカルな人が100人より、たまにエシカルな人が1000人の方がソーシャルインパクトが大きい」と考えています。イギリスのEthical Consumer Research Associationによると、エシカル先進国のイギリスでも、エシカルなものばかり買っているAlways ethicalな人は数%。また、エシカルなものを買わない・興味がないCan not be ethicalな人は20~30%と言われています。半数以上を占める「時折エシカルなものを買う人(Sometimes ethical)」の行動が巨大なマーケットとなると考えられます。
 
この考えを前提に、エシカル消費における消費者のステイタスを図に表しました。

エシカル消費における消費者ステイタス


破線の矢印が態度変容の起こり得るポイントで、その中でも特に赤色の矢印の動きを促進していくことが、エシカルフードの普及に向けて重要だと考えられます。その際にタッチポイントや態度変容のスイッチになり得ると考えられるものを赤の吹き出しで記載しています。

3. 参加者からのコメント


この仮説を元に、参加者のみなさまでディスカッションを行いました。その際に出た意見を紹介します。
 

ターゲットについて
・ボリュームが大きいと考えられる「認知なし」をまずターゲットにすべきではないか。そこをターゲットにして「認知あり」を増やせれば連動してときどき実践する人も増えていく。
 
・「不明瞭」から「理解」が大事。理解というより共感が大事だと思う。
 
・理解をただするだけでは購買に至らない。購買動機の中にエシカルの物差しを入れるには、社会課題を解決することの理解、共感が必要ではないか。それらがあってはじめて自分が購入することの付加価値になっていく。
 
・売れるまで待ちきれずにお店の棚から外れてしまうので、購入頻度は重要。エシカルの認知が広がっている、今後売れる、と見込みをお店にも示さないといけない。
 
・「認知なし」をターゲットにという言葉が流通企業、メーカー企業からあったことは驚きで、心強い。0を1にするのはとても大変なこと。

態度変容のスイッチについて
・社を代表するような商品でエシカルと名乗れるようになれば波及力があると思うが、コストがネックになる。価格として15%ほど高くなってしまう。その15%分をお客様に認めてもらえるかと言うと、今の日本の市場ではすぐには受け入れられないと思う。きっかけ作りをして広げていくのか、エシカルが広がるのを待つか。メーカーとしてどう訴求するかが難しい。
 
・自社製品のサステナブルな取り組みは、ブランドサイトに掲載したり、イベントで伝えている。やらないと生き残れないが、フォーカスして伝えすぎるとウォッシュのように見られかねない。あたりまえのことを誠実に続けることが重要だと思う。
 
・多くの人が知っているブランドでも、容器を紙にしたり、パーム油の認証を取っている商品があるが、エシカル消費になっていることは消費者に認識されていないのではないか。カテゴリの中で1つ、2つエシカルな商品があるより、カテゴリそのものがエシカルになると、よりわかりやすくなると思う。
 
・パッケージやオケージョン、購入場所の違いも、意識が変わるきっかけになるのではないか。他の商品と混ざって置いてあるとわかりにくいが、取り出して置いてあると何かが違うと意識されるのではないか。


エシカル消費研究会では、今後、消費者のステイタスと態度変容モデルについて仮説検証を進めていく予定です。今後も進捗状況についてはこちらでレポートしていきます。
 
 
 
 
 
 

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