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無口な歌詞

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あの日から、やめられない作詞。 歌い出してくれたら嬉しいのに。
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2021年10月の記事一覧

のに

のに

これから話せない?
関係を忘れて
今は知らない二人きり
背中がやけに熱い
.
口に出すほどに崩れていって
もはや形を保っていないけれども
.
誰のアイラブユーの続き
派手に濡れた睫毛の先
それでも愛しているのつもり
風邪でも引いてしまう前に
早く帰った方がいい
のに
あたしもあなたも
まるで別人になったかのように
どうでもいい話を始める
.
.
このまま忘れたい
静寂に紛れて
敢えて見せない薬指

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ぬか喜び

ぬか喜び

声を上げて笑った
遠い日の輝きが
ここまで届いて照らす
.
焼け焦げた影の上に立ち
また手を振るのだ
.
大概上手くはいかない
だからといって
駄目だとも限らない
あらかじめ決まった数の
ポケットの中には
他人から見れば
ぬか喜びのような日々の破片
それでも僕には特別なもの
.
.
雨を避けて残った
教室の静けさが
今さら懐かしくなる
.
仄暗い部屋のままで待つ
その気はなくても
.
いきなり言葉

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シャッター

シャッター

写真に残したいから
携帯を向けたのではないと
気づいてしまった途端
こんなにも立派な虹すら
味気なくなるのね
.
それでもこの手を下ろすのだって
どこか恥ずかしくて
結局押してしまうシャッター
.
アルバムに溜まるだけの
掃いて捨てるほどに
膨れ上がった想いの表れを
消せないでいることが
何よりもの証で
ついさっきもあと一歩のところまで
行けたのにってまた
つまりは変わっていないってこと
まだ一秒

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とことん

とことん

十月暮れの蚊のように
そんな慈悲を私にもください
.
.
最後まで走り切った人が偉いなんて
一体何処の誰が言っているの
その人の靴底は
どのくらい減っているの
.
それでも他人のせいや
ネガティブで終わらせないで
それじゃまた独り言
.
どうせならばとことん
優しい人になりたい
ついでにとことん
明るい花でありたい
気が滅入るような曇り空に
一筋差し込む陽射しがくれた
あの元気を分けてあげる
演技

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そして君

そして君

道を外れたと知るには
少し歩き過ぎた
前にも後ろにももう
見憶えのある場所なんて
ないように思えた
.
こんな時に
浮かべるのは
決まって君なのか
.
証明のしようがない
だってそういうことでしょう
散々迷った挙句
はい間違えましたとは
目を見て言えない
思い立ったら
思い至った
慣れるよりもずっと先に
忘れてしまいたい
.
.
月が隠れたと知るには
少し望み過ぎた
ここにも向こうにももう
安心で

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ネギ

ネギ

真夜中が生む雰囲気に
呑み込まれたら最後
独り言はポエムに
溜め息はしゃぼん玉に
.
かしこまってまで
見たくはない夢の中から
一目散に逃げ切った
.
綺麗なままよりも
世界を煮詰めた鍋の底
草臥れて残った
ネギのような気持ち
って言っても判らないだろう
僕だってまだ半信半疑
早く眠ってしまった方が
明日は輝かしい
.
.
さよならを知る明け方に
取りこぼしたら最後
独り言はナイフに
溜め息は置き

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ハナ

ハナ

新しい部屋に
まずは花を飾った
何もない部屋の中に
近所のお店で買ってきた
花を飾った
.
ニュースでは
季節外れの桜の話題
こんな気持ちは初めて
.
そもそものひとりは怖くない
怖いのはひとりになってしまうこと
そんなことに気がついた夜には
震える手を必死に隠した
百円の花瓶と数百円の花束
慰めてくれなくていい
その優しさに興味はない
きみはいつまで咲いていてくれる
.
.
美しいわりに
すぐに

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それは見えないもの
けれどもあるの
特別というよりは
大切なもの
.
思い返せばいつだって
無駄なものなどなかった
.
そう言い切りたいから
多少の目はつむる
志半ばに折れた花の蕾は
多分きっともう二度と
咲ける保証などはないから
慎重になってしまう
でもそのくらいがいい

そしていざ
.
.
それは消えないもの
確かにあるの
唯一というよりは
大切なもの
.
並び替えればどれだって
違う色でも

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アルマジロ

アルマジロ

自分で自分を守らなきゃ
誰が守ってくれるんだ
だからって立てた爪の先から
零れる涙を見ても
同じ涙を流せますように
.
.
かりそめに笑っている場合ではない
昨日で終わりを迎えた世界と
揚げたてのドーナツ
見比べて垂らすよだれの美しさ
.
ここで待って知る
永遠の長さとか
.
自分で自分を守らなきゃ
誰が守ってくれるんだ
だからって立てた爪の先から
零れる涙を見ても
同じ涙を流せますように
たまた

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リフレイン

リフレイン

歌声と産声
それはどれも
独り言ではないから
どうしても
聴き流せないの
.
あなたに向けたところで
リフレイン
.
二回目に意味ができてしまう
だから敢えてわざとらしく
大袈裟なくらい声に出す
他の理由を誰かがそっと浮かべる前に
丸ごと全てを呑み込む気持ちで
思いの丈を吐き出す
小さい頃はこんなにも
難しくなかったはずなのに
.
.
囁きと溜め息
そして今も
綺麗事ではないから
一つでも
聴き逃

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HOT GIGS

HOT GIGS

イヤホンをなくして以来
聴きたい音楽まで
なくなった気がした
何でもない瞬間にまた
何かを見逃すの
そればっかり
.
鳴らぬなら
鳴らせてみせようHOT GIGS
.
音楽にそもそもボタンなんてない
再生はいつだってここから
歌い始めれば聴こえる
共鳴と残響をフルボリューム
音楽にそもそも理由なんてない
衝動はいつだってばらばら
繋ぎ合わせれば広がる
空想と後悔がストランディング
.
鳴らしたくな

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酸微化

酸微化

腐りかけているんじゃない
少し色は染まったけれど
僕はずっと僕だったし
思っているよりも
時間がかかってしまっただけ
.
泳ぎ疲れたプールサイド
よく見れば色々と浮かんでいる
水面を足でかき混ぜる
.
世界も自分も
同時進行で変わってゆく
そんな中で
動かないもののために歌う
その勇姿に贈る讃美歌
今はどうか
あの頃なんて言わず
これからを愛されたい
多少の毒を持ったとしても
.
.
治りかけてい

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色のない花束

色のない花束

弾き語りたい時に
ギターはなくて
さまよう指先
忍ばせた空のポケット
.
道端に咲く
色のない花束
拾えない
.
季節を越えられないものばかりに
埋め尽くされてしまった部屋
こんなにも落ち着く理由を
誰かが解き明かしてしまう前に
これも何かの夢だって
作られたフィクションだって
醒めきった頭のまま
見つめるだけしかできない
.
.
弾き語りたい時に
ピアノはなくて
さまよう指先
絡ませた下手なアド

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けむり

けむり

手を振ることも
叶わなかった
代わりに握りしめる
拳の中に
ひしゃげた空き箱
.
離さないと
新たな何かは
掴めないというのに
.
もっともらしい正解から
一番遠いものを戴こう
残りものに福など
求めたりはしないさ
だから好きなタイミングで
有終に飾る絵を贈らせて
こんな時にこそ
喫みたい煙
.
.
手に乗ることも
叶わなかった
代わりに爪を立てる
拳の中に
最後の一本
.
終わらないと
新たな炎

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