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フリーランスは「地雷案件」をどうやったら回避できるのか

ここでの地雷案件とは「不当または過剰な要求を行う依頼」を指します。
ではなぜ地雷案件が発生するのか、地雷案件が発生しやすい人の特徴と対策を紹介します。

なぜ地雷が発生するのか

よほど性格がひん曲がった人でもない限り、依頼する人は地雷を投げつけようと思って依頼しません。
多くは無自覚であったりします。

一見、依頼主が悪いように思えますが、半分くらいは依頼を受けるクリエイター側に問題があります。
地雷案件は、依頼主と受ける側の思い違いが原因であることが多く、ようはコミュニケーションの問題です。

しっかりと対話してから受発注を行うことで、回避できることも多くあります。

日本では地雷が多い

日本はクリエイティブな世界で、日常的に一般人同士でもクリエイティブの売買や使用が行われています。

小学生から高齢者まで、誰もが生産者であり消費者になりえる一大クリエイティブ大国です。

依頼を受ける側もする側も、9割以上は初心者であり、そもそも商売を一切やったことがない学生も多数含まれています。

なので受ける側もする側も、まったく知識がない者同士が行うこともあり、そうなると地雷になります。

地雷になりやすい案件・人の特徴

1、安い

プロの現場でも地雷は多いですが、一般人同士の売買ほどではありません。
もちろんプロの現場は一度地雷になると大変な時間と労力とカネが吹っ飛ぶので有名になりがちですが、ほとんどの場合、受発注どちらも慣れているので地雷になることが減ります。

高額な依頼よりも、低い金額や無料の案件ほど地雷になりやすい特徴があります。

低額な依頼ほど、依頼主側が過剰要求する可能性が高まります。それは単純に金額が低いのでできることが限られる中の依頼であることもそうですが、単純に依頼側に「クリエイターは何ができるのか」の知識が皆無で見当違いな依頼になってしまうという原因もあります。

2、ポートフォリオが無い

クリエイティブを発注するのは、いわば「メニューも看板も金額提示もないレストラン」に入って料理を注文するようなもの。
お互いに、腹の探り合いから始まるなんとも奇妙なお店なのです。

レストランでのメニュー表に当たるものがポートフォリオ。
自分は何がどれくらいでできるのか。というものを見せるのがポートフォリオです。

レストランでも見本の写真と金額はあります。
家の建築だって見本と工事期間と場合によっては金額も記載されています。

それが全くなく、絵だけSNSに挙げていて「依頼受けつけ中」とだけ立派に書いてあるのはメニューがない金額もレビューもないレストランに人を呼び込むようなものです。

お店に来て注文を受ける前に、何を売っているのか客に見せるメニューもなかったら、そりゃ問題も発生します。

客にいちいち説明するのも面倒でしょう。

なので依頼を受ける側としては、必ずレストランのメニューに相当する事例集を作ることが好ましいです。
これが無い場合、地雷案件になってもクリエイター側だけが被害者とも言い難いです。

3、事前説明や取り決めがない

通常であれば契約書を交わすなりします。しかし個人間の取引や、少額のやり取りならこれがないことは珍しいことではありません。

しかし契約書を交わさないとしても、事前に取り決めがないと後から見当違いなことを要求されることもあり、また相手はそれが普通だと思ってしまうこともあります。

特に個人間の取引では相手が同種のクリエイターでない場合、ズレが生じます。

「最近はAIやCGってのがあるんだから絵なんて安くできるだろう」「写真なんて機械なんだしいくらでも撮れば済む話じゃないか。1枚でも100枚でも同じだろう。同じロケ地なんだから」という声は実際にクリエイターに要求された内容です。

依頼を受ければうれしいものですが、受けて損する依頼もあります。
事前に自分を守るため、相手の夢を壊さないためにも事前の取り決めは必要です。

お客さんは幼児と同じです。泣きわめいてしまうと何言っても無駄です。事前にお約束する必要があります。

相手は人間だから分かってくれる。クリエイターの苦労を察してくれ。というのは無理な話です。

では地雷案件を回避するためにするべきことは何か

1、ちゃんとした値段をつける

クリエイター、特に絵師にはこういう人がいます。
「自分はまだ駆け出しなので安くていい」「自分の絵なんてこの程度の価値だろう」などの考えから無料あるいは安くしてしまうのです。

これは、してはいけないことです。

もちろん高いほど良いというわけではないですが、少なくとも高いほどお客さん側の質は上がっていくことが多いです。

低い値段の依頼先を探すということは、コストカットを優先していて作品を優先していない証拠でもあります。なので何かと過剰要求してきます。できる限り安い値段で達成させようと頑張るからです。

低コストというのは、受ける側も低コストで行わねばならないだけでなく、実は相手も低コストで行わねばならないのです

例えば、あなたが3600万円の家と250万円のクルマを購入するというとき、そのための交渉、相手の説明を聞く姿勢、事前の下調べなどを徹底するはずです。

一方であなたが550円のランチを買う時、どうでしょうか。家とクルマを買う時ほど、真剣に調べるでしょうか。調べないはずです。

つまり、値段が低いと相手もコミュニケーションのためのコストをカットする必要が出てきます。

20万円の絵ならいざ知らず、たかだか1000円の依頼に大した時間なんて使えないよ。この要求をとっとと具現化してくれよ。というわけで要求だけ過剰でそのためのコミュニケーションの手間を相手に求められなくなります。

少なくとも相手は真剣に取り合ってくれなくなる可能性が高まります。

あなたは1000円の依頼を受けたとして、相手も1000円の時間しか使えないのです。

もし絵の事前取り決めやコミュニケーションに3時間掛かったら、時給換算で最低賃金を軽く割ってしまいます。

それはあなたも、相手もです。相手も時間コストを払っていることを忘れてはいけません。

また、相手はクリエイティブを依頼したことだけが重視され、値段のことは忘れます。

100円でも10万円でも、同じだけ要求したい気持ちが出てきます。100円だからこれで仕方ない。とはなりません。

仮に「仕方ない」と思われて妥協されたら、次から依頼は来なくなります。以後相手はAIやフリー素材に転換してしまうかもしれません。

2、事前に取り決めを行う

自分と相手では「値段相応」の意味も内容もイメージも異なります。
同じジャンル同士、例えば絵師同士であっても値段相応は異なります。1案件40万円で受けている人と、1万円で受けている人で考えは異なります。

また、客側としても1万円でも40万円でもクオリティも対応も同じだった。という例はよくあるほど、高いから優秀。というわけでもないのがクリエイティブ業界です。

そのため、依頼主との見当違いをなくすため、事前に「何を」「いつまでに」「どれほどやる」というのと加えて「何ができないか」「どうしたら追加料金となるか」というのも決めて、書面か電子データでやり取りを残す必要があります。

金銭が発生するならいつまでにいくら支払うかも大事です。

何をいつまでにどれほどやるか、というのは当たり前なのでここでは除外します。

重要なのは「何ができないか」「どうしたら追加料金となるか」の説明です

実は、依頼を受ける中で重要なのは「何ができるか」ではなく「何ができないか」の部分です。

具体的には「ラフ確認完了後、線画・色塗りに入った後に『やはり構図を変えてくれ』とラフ以前の工程にさかのぼることはできません」などです。
クリエイター側にとって当たり前のことは、依頼主にとってそうではないことは多々あります。

依頼主は「クリエイターは簡単になんでもできる魔法使い」と思っています。
事前に工程、リテイクについて等、こちらから提示して相手に何ができないか、どの範囲までが料金内なのかを確認させるのが大事です。

3、しっかりコミュニケーションをとる

ここでいうコミュニケーションは「コミュ力」で有名な話の上手さとか恋人作りの上手さとは関係ありません。
メッセージングアプリでもなんでもよく、依頼主と連絡を取れるようにしておき、各工程ごとにしっかり相手に確認させ、思い違いをなくすことも大事です。

4、ヒアリングをしっかりする

地雷案件あるあるは「俺の音楽を絵にしてくれ」とか「スタイリッシュに見える写真を撮ってください」といった具体性のないものです。
相手の脳みそを除けないので、相手の要求していることが分かりません。

よほどウマが合う相手でもない限り、これを達成することは難しいでしょう。

その場合、あなたのいうスタイリッシュとは何か、という具体例となる画像や写真を提示してもらったりして、自分が創れるだけのヒントや材料を事前に用意してもらう必要があります。

もちろん、相手が「あなたの好きなように描いてくれ」といった場合は、自分の感じたままに描けばよいでしょう。

ただしその場合でも「可能ですが、その場合、イメージ違いのものが創られる可能性があり、またその場合のリテイクを受けられない場合がありますがよろしいでしょうか」と事前取り決めは必須です。

そうしないと「あなたの好きなように描けとは言ったが、俺の思う俺の音楽は青い男じゃなくて赤髪の女性なんだ」などと後出しじゃんけんされたらたまりません。

しっかりとお互いのイメージが確立した状態で、取り掛かるのがベストです。

クリエイティブの依頼は多くの地雷が発生する可能性があります。

相手のせいではなく、クリエイター側で防げるものも多くありますので、事前に防御しましょう。

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