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旅や山についての話多めです

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最近の記事

山を歩くことは旅することだ

「あなたにとって山とは何か?」 そんなことが不意に問われたのは、忙しないお盆の時期が始まる直前の針ノ木岳登山口でのことだった。僕は登山届を書いていて、まだうる覚えの新しい住所を必死に思い出そうとしていた。僕は不意に投げかけられた質問に動揺しながらも、手を止めずその問いの答えを考えた。答えを出すのにさほど時間はかからなかった。 「歩く旅です」 僕はそう答えた。その質問をしてきたのは登山相談所にいた女性の指導員だった。彼女は僕が登山届を書く様子をじっと見ていた。僕は彼女に何

    • 海外ラジオで旅行気分を味わう

      海外に行かなくなって久しい。いつの間にか日本の生活に慣れてしまい、海外へ行ける機会はしばらくなさそうだ。でもふと海外へ行きたくなる。 そんな時僕は日常を「海外気分」に仕立て上げる。その中で一番手っ取り早いのが「海外のラジオを聴くこと」だ。家にいるときやドライブしているとき、海外のラジオを聴いているとまるで海外にいるようで気分が上がるものだ。そこで、ここでは僕の「旅行気分を味わえるお気に入りの海外ラジオ局」を紹介したい。 あくまで僕の独断と偏見と趣味によって選ばれたものなの

      • Wildernessを求めて

        ニュージーランドに住んでいた時「Wilderness(ウィルダネス)」という雑誌を愛読していた。Wildernessはニュージーランドのハイキング専門雑誌だ。現地ではハイキングやトレッキングのことはTramping(トランピング)と呼ばれていたので、Wildernessはトランピング専門雑誌ということになる。愛読していたと言っても、当時働いていたバックパッカーにあったトランピング好きのオーナーが集めたWildernessのバックナンバーを読み漁っていたに過ぎない。僕はそのバッ

        • 「栂海新道」という合言葉

          7月の終わりに梅雨が明け、いよいよ夏山のシーズンが到来した。僕は久々の登山に足を慣らすべく、蓮華温泉から朝日岳、雪倉岳、白馬岳を周遊するルートを2日かけて歩くことにした。ここ数年で北アルプスのメジャーなルートをほぼ歩き尽くした僕にとって、今回の選択は「歩いていない場所」というどちらかというと「消去法」だった。正直あまり期待はしていなかったのだが、結果として予想以上にいい旅となった。「栂海新道(つがみしんどう)」と言う合言葉が飛び交う朝日岳を巡る旅の記録だ。 ▲▲▲ 「小谷

        山を歩くことは旅することだ

          旅する手紙

          僕は旅先から手紙を書いて送るのが好きだ。海外旅行での話である。つまりエアメールのことだ。 ここ数年海外に住んだり旅行することが多く、たまにエアメールを日本にいる友人や家族に送った。ポストカードを探すのも楽しいし、どんなことを書くか考えるのも楽しい。汚い字で書かれた下手な文章は、我ながら味が出ていると思う。 今回のパンデミックによって中断させられた世界旅行では、訪れた国から一枚は送るようにしていた。友人に送ることもあったが、両親宛に送ることが多かった。海外旅行などに馴染みの

          旅する手紙

          世界一透明な湖を求めて

          ニュージーランドの奥地にある「世界一透明な湖」を求め数日かけて歩く。そんな探検のミッションのような謳い文句に誘われ歩いた6日間。美しい自然を巡るニュージランド南島ネルソンレイクス国立公園でのハイキング。 ▲▲▲ 「ブルーレイク」 この名前を初めて聞いたのはモトゥエカの日本人ご夫婦の元でWwoof(宿・食事と労働力のエクスチェンジプログラム)をしていた時だ。たまたま遊びに来たご夫婦の友人のスイス人が昔よく山を歩いてたというので、僕が「おすすめ」を聞いたのだ。 「僕は行っ

          世界一透明な湖を求めて

          タスマニアを歩く4:オーバーランドトラック

          世界中のハイカーを魅了するオーバーランドトラック。鬱蒼とした原生林、青々とした湖、ゴツゴツとした岩山がハイカーを楽しませてくれる。そんなオーバーランドトラックを歩く4泊5日の旅。 ハイカー憧れのオーバーランドトラックオーバーランドトラックはタスマニアのクレイドルマウンテンからセイントクレア湖まで続く65kmのトレッキングコースだ。世界遺産区域にすっぽり入っている。所々にサイドトリップがあって、タスマニア最高峰のオッサ山(1617m)にも登ることができる。 通常は6日間で歩

          タスマニアを歩く4:オーバーランドトラック

          タスマニアを歩く3:クレイドルマウンテン

          タスマニア随一の景勝地でもあるクレイドルマウンテン。岩をよじ登ってたどり着いた山頂で待っていたのは絶景。そんなクレイドルマウンテンへのハイキング。 ビジターセンターへ僕はデボンポートで車を返し、クレイドルマウンテンのビジターセンター行きのバスに乗った。乗客は皆ハイキングの格好をしていた。バスは郊外ののどかな風景から曲がりくねった山道を走るようになった。次第にあたりはガスで覆われるようになり何も見えなくなった。ビジターセンターへ着いた時は小雨が降っていた。 僕はビジターセン

          タスマニアを歩く3:クレイドルマウンテン

          タスマニアを歩く2:フレイシネット国立公園&ケープハウイ(+ホバート)

          タスマニアは山だけではなく海も魅力だ。フレイシネット国立公園、ケープハウイ、ホバートの3つの海の見える場所を巡るタスマニアトリップ。 フレイシネット国立公園 ウォールズ・オブ・エルサレム国立公園を後にし、ロンセストンと向かった。ロンセストンで食料を調達し、さらに南へ。2日間のハイキングで疲れていたが、この日はまだ運転しなくてはいけなかった。ハイウェイをおりると、道はニュージーランドのような曲がりくねった道になった。 翌日に歩くフレイシネット国立公園(Freycinet N

          タスマニアを歩く2:フレイシネット国立公園&ケープハウイ(+ホバート)

          タスマニアを歩く1:ウォールズ・オブ・エルサレム国立公園

          エルサレムの壁。そう名付けられた場所がタスマニアの奥地にある。一体どんな風景が待っているのか。2週間のタスマニアの旅の最初の目的地ウォールズ・オブ・エルサレム国立公園への1泊2日のハイキング。 デボンポートタスマニアにフェリーで上陸後僕は車を借り、デボンポート郊外のキャラバンパークで夜を過ごした。ニュージーランド以来数ヶ月ぶりとなる車中泊だ。勘を取り戻すのにさほど時間はかからなかった。しかし、キャラバンパークに場違いの真っ白なトヨタのSUVで寝るのはなんとも奇妙な感覚だ。レ

          タスマニアを歩く1:ウォールズ・オブ・エルサレム国立公園

          エチオピア・シミエン国立公園トレッキング

          エチオピア北部の4000m級の山岳地帯。息を飲む絶景と厳しい環境の中に暮らす生き物や人々の姿があった。そんなシミエン国立公園へのトレッキングの旅。 ゴンダールへ僕はエチオピアの首都アディスアベバに数泊したのち、北部のゴンダールへと向かった。シミエン国立公園でトレッキングをするためだ。エチオピアにはそのために来たと言ってもいい。多くの人がエチオピアといえば火山の「ダナキル」や南部の「少数民族巡り」へ行くようだが、僕はあまり興味がなかった。僕はハイキングが好きだったので、自然の

          エチオピア・シミエン国立公園トレッキング

          イスタンブールで街歩き、食べ歩き

          アジアとヨーロッパが混じり合うイスタンブール。歩いても歩き尽くせない、食べても食べ尽くせない、旅人の心と腹を満たす街。そんなイスタンブールへの旅の話。 イスタンブールへカイセリからの夜行バスがイスタンブールに着いたのは夜明け前だった。バスターミナルから別のバスに乗り継いでトラムに乗った。まだ夜は明けてないというのにたくさんの人が乗っていた。おそらく皆出勤しているのだろう。 僕はスルタンアフメットという駅で降りた。多くの人がここで降りていった。僕は予約しておいた宿へ向かった

          イスタンブールで街歩き、食べ歩き

          テヘランが意外だった話

          「厳格なイスラム国家」、「反米国」といったイメージを抱いていたイラン。しかし、実際に首都テヘランに降り立つと、そんなイメージが打ちこわされていくのだった。そんなイラン、テヘランへの旅の話。 イラン入国僕はエマム・ホメイニ空港に降り立った。まずはアライバルビザを取得しなくてはいけない。ビザを申請する部屋へと向かった。あまり混んでいなかった。それでも時間がかかったが、問題なくビザを取得できた。ビザを持って入国審査へ向かった。パスポートにはスタンプは押されなかった。僕は無事にイラ

          テヘランが意外だった話

          極寒の桃源郷へ

          「桃源郷」、「ナウシカの谷」と形容され、旅人を惹きつけるパキスタンのフンザ。そんな憧れの地にようやくたどり着いたのは冬だった。寒さとトラブルに見舞われたパキスタンへの旅の話。 フンザへ僕はバスの車内灯の明かりで目が覚めた。どうやら休憩をとるようだ。外は少し明るくなっていた。前日の夜にラワルピンディを出発したバスはいつの間にか急峻な山に囲まれる谷を走っていた。バスは道路沿いのレストランの前で停まった。外へ出ると寒かった。 僕はフンザへ向かっていた。旅人憧れの地。バックパッカ

          極寒の桃源郷へ

          南インドはメシがうまい

          ゴア、ハンピ、チェンナイ。北インドとはどことなく雰囲気が違う南インド。そして何よりメシがうまかった。そんな南インドを巡る旅の話。 ゴアへ僕は夜明け前に目を覚ました。予定では列車がゴアに着くのは1時間ほど後だ。デリーを経ったのは前々日の午後だった。僕は40時間近く列車に乗っていたことになる。 ほとんどの時間、僕は上段のベッドの上にいた。タブレットで本を読み、飽きたら寝るというのを繰り返していた。周りの人も同じように、携帯をいじるか、寝ていた。お腹が空いたら、持っているビスケ

          南インドはメシがうまい

          ヒマラヤを歩いた時の話 その3

          ヒマラヤの奥地を、6、7000m級の山々を眺めながら、村々を渡り歩くトレッキング。そんな冒険心くすぐられる言葉に導かれ、ネパールのヒマラヤでアンナプルナ・サーキット・トレックを歩いた時の話(その3)。 DAY7:ヤク・カルカ→トロン・ハイ・キャンプ空は気持ちよく晴れていた。ロッジで朝食を食べ出発する。道は谷の奥へと続き、緩やかに上りとなっていた。 いくつか村を通り過ぎた。やがて谷が小さくなり、小さな橋を渡り対岸への道へと続く。 トロン・フェディに到着した。いくつかロッジ

          ヒマラヤを歩いた時の話 その3