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タスマニアを歩く3:クレイドルマウンテン

タスマニア随一の景勝地でもあるクレイドルマウンテン。岩をよじ登ってたどり着いた山頂で待っていたのは絶景。そんなクレイドルマウンテンへのハイキング。

ビジターセンターへ

僕はデボンポートで車を返し、クレイドルマウンテンのビジターセンター行きのバスに乗った。乗客は皆ハイキングの格好をしていた。バスは郊外ののどかな風景から曲がりくねった山道を走るようになった。次第にあたりはガスで覆われるようになり何も見えなくなった。ビジターセンターへ着いた時は小雨が降っていた。

僕はビジターセンター近くのキャラバンパークへチェックインした。ここで2泊する。キャラバンパークと言っても、テントやバンで寝るわけでなくドミトリーで寝る。僕は荷物を置いて再びビジターセンターへ戻った。

ビジターセンターは混んでいた。いろんな国籍の人たちがいた。クレイドルマウンテンは世界遺産で、世界中から観光客が訪れている。そして世界中のハイカーを惹きつけるオーバーランドトラックの起点でもある。僕も翌々日からそのトラックを歩く予定だ。

まだ時間があったのでシャトルバスでハイキングの起点となるドーブ湖(Dove Lake)まで行ってみた。あたりはガスに包まれ、山は見えなかった。少し周辺を歩いた後、ビジターセンターへと引き返した。

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クレイドルマウンテンへ

翌日は気持ちよく晴れていた。僕は朝一のシャトルバスに乗って湖を目指した。途中大きなバックパックを持った親子がバスを降りた。おそらくオーバーランドトラックを歩くのだろう。自分も明日は彼らの立場になることを考えるとワクワクした。僕は彼らに「グッドラック!」と心の中でエールを送った。

朝早いのであまり人はいなかった。昨日は見えなかった山がよく見えた。湖の奥にはこの日目指すクレイドルマウンテンがそびえ立っていた。なかなか険しそうだ。僕は気合を入れて歩き始めた。

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湖を一周するトラックから外れ、急登を登り始めた。周りは木々に囲まれていたが所々から木漏れ日が差し込んでいた。僕は次第に吹き出てくる汗を感じた。

急登を登り切ると、緩やかなトラックになった。振り返ると青々としたドーブ湖が見えた。しかしトラックの先には切り立ったクレイドルマウンテンが立ちはだかっていた。

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途中ウォンバットを見かけた。夢中で草を食べているようだった。僕が近づいてカメラを向けても気づいていない様子だった。なんとも可愛らしい姿だった。

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緩い登りだったトラックがやがて急になった。吹き出る汗と胸の動悸を感じながら先へ進む。やがて岩をよじ登らなくてはいけないほどの急登になり、足だけではなく手も使わなくてはいけなかった。

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やがて山頂と思われる場所に着いた。「ここが山頂」という看板こそないが、方位とどの方向に何(山か都市)があるかを示す方位盤があったので、おそらくこれが山頂だろう。

眺めは最高だった。僕が歩いてきた方角は遠くまで見渡せたが、反対側は雲海に覆われていた。雲海の中からポツンと山が突き出していた。まさかこの時は翌日自分があの山の山頂にいようとは思っていなかった。遠くに広がる景色を見て「ここを明日から歩くのか」と感慨深かった。

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次第に人がやってきた。僕は山頂が混み合う前に降り始めた。皆苦悶の表情を浮かべていた。僕も同じような表情だったのだろう。しかし登りきった後の景色の素晴らしさがそれまでの苦しさを忘れさせてしまう。だから何度も山に登ってしまうのだろう。

帰りはまた違ったトラックを歩いて湖へと戻った。バスに乗って宿へと戻り、翌日からの長旅の準備に取りかかった。

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(タスマニア旅行:2019年2月)

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