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フランスのデザートにハズレなし (ルピュイの道③】

フランスのルピュイの道を歩いた旅で思い出すのは、まずフランスの田舎の町で毎日食べたごはんのこと。


スペインを800km歩いた時は、朝昼に食べるのは大体ボカディージョと呼ばれるバゲットのサンドイッチか、トルティーリャと呼ばれるスペイン風オムレツ、というかシンプルなジャガイモ入りの卵焼き。そしてフルーツをたくさん買ってかじりながら歩いたり、生で絞るオレンジジュースが信じられないくらい美味しくて毎日どこかで飲んでいた。
夜は、毎日スペインのバルで仲間と飲んで食べたり、スーペルメルカドで色々買って、アルベルゲと呼ばれる民宿のような宿で仲間と自炊したり、時々みんなで宿のオーナーが作ってくれるごはんを食べたりした。
どちらかと言うと雑な料理だったりシンプルな料理が多かった。スペインの名誉のため補足すると、どれも美味しかったけど。
フランスはと言うと、初日は「朝からクロワッサン食べちゃうもんねー」と言いながら、パン屋で買ったクロワッサンを食べて歩いた。ポロポロ食べかすを落として歩いたけど、風で飛んで牛が食べててくれるといいなと今思う。クロワッサンの食べ歩きは喉が渇くということを学び、後半はお店で落ち着いてクロックムッシュやクロックマダムを食べるのが朝ごはんになっていった。

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ドゴール空港で買ったラデュレのマカロンを食べながら歩いたり、途中の町のシュークリーム屋さんでエクレアを買って食べたりした。スペインとは買い食いの趣きがガラッと変わった。と言うか自分であえてスペインで食べてたものを選ばずに変えていたのかも知れない。おフランスなんだからこれだ、と勝手な決めつけでチョイスしていたりもしたかも。
とにかく、毎日食べるものが変わったおかげで同じカミーノとは言え気分が違った。

1番違ったのは晩ごはんである。
スペインでアルベルゲと呼んでいた巡礼者用の宿も、ジットというフランス語の呼び名に変わった。山小屋や民宿のような雰囲気で、こじんまりしていてどこも大体素敵だった。
ルピュイの道を歩いて初めて知ったのだが、大体どこのジットも晩ごはん付きの宿泊(例外が数軒あり、仲間と近くのレストランへ食べに行った)で、宿のみんなでごはんを食べるのである。その日同じ道を歩いてきた人たちと食卓を囲んで大皿を突つき合うなんて、ディスタンスが近すぎて今じゃ無理なのかなあと思ったりするが。
でも、その関係性があっさりしつつ、ワイワイできて、もう翌朝には各自のタイミングで出発してバイバイなので心地良かった。次の日の宿も同じだったりするけれど、それはそれで面白かった。
ジットの晩ごはんは、大体どこのジットも、最初に板の上に何種類ものチーズが並んで出てくる。スペインではそういう文化はなかった。

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そしてパン、サラダ、メインディッシュ。
よくよく考えたら、それはコースのフランス料理だったのである。大皿で取り分けるところはフランス料理屋さんとは違うが順番がフレンチであり、作っているジットのオーナーはオーナー兼シェフという感じだった。決して豪華な食材を使った高価な料理ではなかったが、味付けが洗練されているような気がしたり、フランスの田舎の温かさを感じるような料理だったりした。

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そして、必ず最後にデザートが出たのも、散々歩いて疲れ切った私は、泣けるほど嬉しかった。
フランスのデザートにハズレなし。
ということわざが私の中で生まれた、ルピュイの道。
正直に言うと、私はサラダはそんなに要らないし、最初から肉を食べたいし、チーズは後半でほしいなぁとも思う。
スペインでよく食べた「メヌー・デ・ペレグリーノ」と呼ばれる巡礼定食も、サラダとメインが順番に出るが、チーズはないし、デザートもないところが多かった。出たとしてもフランと呼ばれるプリンやシンプルなアイス。
そのかわり、赤ワインが一本ボトルでドンと付いてくる。このお得感は他の何にも変えられないようにも思う。
そういう意味ではそれぞれの巡礼晩ごはんに良さはある。
赤ワインを飲みながら食べる大雑把なスペインの料理が好きだったし、ジャガイモをこんな風に使いますか!と驚きの連続で、材料はシンプルだけどフランスの田舎で食べる繊細な料理も美味しかったなぁと思い出す。
スペインとフランスと、巡礼中のごはんに関して甲乙つけがたいぞ、と思ってはみるものの、フォンダンショコラにアイスクリーム添え、ミルフィーユ、繊細にデコレートされたシュークリーム、大胆に生クリームとチョコソースがかかっているアラカルト、生クリーム好きにはたまらない生クリームに隠された何か、皿からはみ出てベリーがこぼれるタルト、その辺の店で買ったただのマドレーヌなどなど。
デザートのレベルの高さを考えればフランスの圧倒的勝利だな、と歩きながら毎日そんなことを考えていた。


ちなみに毎日20〜30km、8時間くらい歩くハードな旅をして帰国しても、体重が1gも減っていない理由がどこにあるのか、私には見当もつかない。

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