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深夜便に乗って旅に出る 【山ごもりの夏休み①】

私は深夜便が好きだ。
関空からの飛行機だと、以前はカタール航空が0時台の便を飛ばしていて、EUのどこに行くにしろ、それに乗ってとりあえずドーハに向かうのが好きだった。
アジアだとエアアジアの深夜便があってそれに乗ってとりあえずKLに飛ぶ。そこから旅を始めることが多かった。


深夜便のいいところは、定時まで仕事をして、急いで家に帰って風呂に入ってから関空に向かえることだ。その日は有休をとらずに旅立てるのがいい。その日一日の仕事は朝から常にふわふわしていて、もう既に飛んでいるとも言える。
仕事を終えて急いで帰るというところがミソで、もうとにかく一目散で帰る。早く、この日常からエスケープしたい!という気持ちを体で感じるためにも急いで帰る。そして、可能なら湯舟に浸かり、ああしばらく湯舟でゆっくりはできないなあと日本のお風呂に別れを告げ、寝る前に塗るクリームを顔に塗って、何ならリラックスウェアでバックパックを担いで、暗い街を抜け出して関空に向かう。
関空では、寝る前だけどいいかしら…というわずかな罪悪感と戦いつつ、レストランがあいてなければホッとしてコンビニでおにぎりやからあげくんを買って食べる。トイレで色んなものを絞り出し、歯を磨いて、完全お休みなさいモードにテンションを持っていく。そして最後の方に搭乗し、空席状況を把握し、CAさんに伝えて3席空いている所に誘ってもらえたら、即シートベルトをしてアイマスク、耳栓装着をしてリクライニングを倒さず、おやすみなさい、と離陸前にまず眠りに落ちるのが私のルーティーン。その後、目が覚めたら3席占領して横になるか、リクライニングを倒すなどのコンフォータブル仕様にして再度眠る。
次に目覚めたら大体もう着陸直前。これが私の理想の深夜便。

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長らく飛んでいないなぁとため息をつきながら、3月に夜行フェリーに乗って似たようなことをしたのを思い出して浸る。飛んではいないけど夜行フェリーに乗ったんだった。
夜行バス、夜行列車。とにかく夜行が好きだ。
寝ながら移動できるのがいい。いつでもどこでも寝られる私にとって夜行ほど快適で効率的なものはない。これまでのいくつもの夜行の旅が思い出される。海外に飛ばずに半年が経ってしまって、どの旅も、もう遠い過去のような気がする。


そして緊急事態宣言を経て、ようやく今日、旅に出られる。
今夜、夜行バスで富山に向かう。久しぶりの旅だ。
寝て起きたら富山。最高。
以前と違うのはコロナの感染予防をしなくてはいけないことだけど、喉の乾燥防止で機内でマスクはしていたからほぼ変わらないスタイルで行ける。
夜行のロマンを空ではなく陸で、日本で、感じる。
バスは3列シートで両隣とはちゃんと隙間がある。パーソナルスペースもソーシャルディスタンスもバッチリだ、多分。
私のバックパックちゃんはバスの底に揺られているはずだ。
バックパックの中にテントや寝袋、食料を詰め込んで15kgくらいだと思ったら35kgになっていたが、きっとはかりが間違っているのだと思うことにした。
前代未聞の35kgの荷物を持って出発。
カミーノの旅では荷物を減らすことを追求し、たった12kg(それでも重い)の荷物と出会う人々の優しさで、十分私の人生は満たされるのだと知ったはずだが、今回は自分を思い切り甘やかすので、持てるだけ荷物を持っていきたい。どう考えたってジョンソンヴィルのウィンナーは12本も必要ないと分かっていても持っていくと決めた。私の腰とバックパックの肩紐がもつことを祈りながら。
私の一足早い夏休みが始まる。
あいにくの梅雨真っ只中だけど気にしない。
そもそも山の天気は変わりやすい。
天気によって自分の行動が制限されたり、選択肢が減るのは嫌いだから、はむかっていきたい、安全に。
明日の朝目覚めたら富山。最高。
そしてまだ仕事が半日残っているが、もうほぼ富山に向かっていると言っていい。
行ってきます!と、もうほぼ言いかけている昼休み。

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