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生きるとは、自分の物語を作ること

ステイホームついでに部屋を片付けようかと思ってたら、
大学時代によく読んだ河合隼雄の本が出てきたので
久しぶりに手に取ってパラパラ読みしてみた。
高校時代、
河合先生の本を読んで大学の進路を決めたことを
思い出して懐かしかったものの、
ここ10年くらいはほとんど読んでいなかったので、
何となくKindle版で河合先生が亡くなる直前に
「生きるとは、自分の物語を作ること」という
好きな小説家の小川洋子氏と河合先生との対談を
河合先生の死後にまとめた本を
ポチって一気に読んだ。
で片付けは結局していない。
私はそんな女だ。


やっぱり河合先生の話は面白い。
小川洋子氏の小説「博士の愛した数式」の話、
箱庭療法の話や人の死の話、
厳密さと曖昧さの共存の話などどれもおもしろい。
最後の対談は河合先生が亡くなられて実現せず、
小川洋子氏が「長すぎるあとがき」として、
河合先生への想いを綴るところも良かった。

なかでも、源氏物語のところが特に興味深かった。

紫式部が「源氏物語」を書いた時代の文章と言えば、
男が書く「誰それが公中に行った、天皇は元気であった、
誰それが死んだ」みたいな
全部漢語で書ける公式文書がほとんどだった。
そんな時代に、
女が、気持ちを書こうと思って、
大和言葉を表すために平仮名が生まれて、
人の死をどういう風に思ったか、どう感じたかを、
平仮名を使って書き始めた。
初めて女性が心の動きを描いた物語が「源氏物語」であり、
世界の文学史の中でもいち早く誕生した「物語」だ、
と河合先生は語る。

紫式部先輩が第一人者だったのか、と感慨深い気持ちだ。
私も紫先輩の遺志を勝手に継いで、
色んなことをどんな風に思いどんな風に感じたかを
綴って生きていきたいと改めて自分に誓った。

また、
「全く矛盾性のない、整合性のあるものは
生き物ではなく機械」で、
「命というものはそもそも矛盾を孕んでいるもの」
と河合先生は言う。
自分がどんな風に矛盾しているかを意識して
生きていくしかない。
矛盾こそが個性。
だから、
「矛盾との折り合いのつけ方にこそ、
その人の個性が発揮される」と。

良かった。
安心した。
私は矛盾だらけの人間だ。

私は軸がブレない人だと時々言われるが、
ブレブレで矛盾だらけやなともよく言われる。
もうすでにそこに矛盾がある。
人一倍いい加減でそのせいで矛盾が生じまくるんだけど、
その矛盾を否定せず、肯定して
どうにか折り合いをつけようとしているから、
その過程を見れば私はブレブレだし、
結論だけ見れば私はブレていないのだろう。
人は見たいところだけを見たいように切り取って見る。
人がどう見ようと、
これからも、矛盾に折り合いをつけるためにも、
心の中の矛盾や葛藤、もやもやを何とか表現していきたい。
それは人によってさまざまな表現方法があって、
絵やダンスや歌でもいいのだけど
あまりその辺は得意ではないので、
私は文章で表現していきたい。

なぜ書くのか。
理由なんてないし、いらない。

河合先生の言葉とこの本のタイトルの通り、
「生きるとは、自分の物語を作ること」だ。
私は現代の紫式部かのごとく長々と文章を綴り、
紫式部とは違う、自分自身の物語を作っていく。
それが生きるということだから、理由はいらない。
自分の物語を探して作っていくこと。
自分の脳がしっかり機能する限りは、
そうやって、これからも生きていきたい。

とかなんとか、急に格好つけて、
売れてる小説家のような使命感を持って
生きることを考えた、1つ歳を重ねた本日。
そんな訳で、
部屋の片付けはいつまでも取りかかれない。

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写真は、歳の数よりかなり多いキャンドル。
ディワリの日のインドのバラナシにて。



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