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軽井沢在住 今年の1月に進行性核上性麻痺で闘病中だった主人を見送りました。 闘病中のこ…

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軽井沢在住 今年の1月に進行性核上性麻痺で闘病中だった主人を見送りました。 闘病中のこと、主人のこと、日常のいろいろを綴っていきます。

最近の記事

延命と安楽死と           

「生きていてくれればそれだけで」と願うことも、 「安らかな死」を願うことも、 もとは「祈り」だったはずなのに。 だれかの「祈り」を守るために「権利」が持ち出されて それはいま、なんだか祈りとは遠く離れたところにある。 昔は祈るだけで手を下すすべはなかった人の死が 技術で少し先送りしたり、早めたりすることができるようになった。 なんとか助けたいとか、苦しめたくないという思いの強さゆえ、 獲得してきた技術はすごいことなんだけど、 それは良いことばかりじゃない。 以前新聞記事で

    • メメント モリ

      大切に思う「言葉」があるのだ。 意味はもちろん、その音から受ける印象や雰囲気、耳触り。 めったにその言葉を使うことがなかったのは、それを使う時は、 大事に慎重に丁寧に扱いたいと思っていたからだったのだなぁ。 その大切な言葉が、テレビから頻繁に流れてくる。 「メメントモリ」という言葉を知ったのは、藤原新也の写真集だったと思う。 有名なシルクロードで犬に喰われるご遺体の写真などを収めた写真集のタイトルが「メメントモリ」だった。 ただ、私には藤原新也が撮った別の写真にこの言葉が

      • 「くもをさがす」

        カナダで乳がんと診断された西加奈子さんのノンフィクション。 こちらは正統派の闘病記。 ただ、たどり着いたところは「猫だましい」とおなじ、 「自分の体のボスは自分」だ。 がんを告知される前から漢方に頼っていた彼女は、抗がん剤の妨げになる場合があるから漢方は止めて欲しいと言われてショックを受ける。 漢方は精神的な拠り所ともなっていたので、 「今は本当に漢方に助けられてるから止めたくない」と伝えると あっさり「オーケー」と言われる。 日本ではまず考えられないと思う。 楯突いてどう

        • 芸人とかジャーナリズムとか(1)

          ウーマンラッシュアワーの村本が高浜原子力発電所1号機の再稼働に際して Xに綴った発言が波紋を広げているという。 《事故があった時、地元の人だけじゃなく日本中が被爆しますように》 もちろん、再稼働について 福井だけじゃなく日本全体の事としてちゃんと考えて という意味があっての発言だ。 これを額面通りに受け取った人たちもいて、それで批判が殺到したらしい。 ウーマン村本のことを知っている人なら、発言の真意はわかるだろう。 けれど、ネットでは、彼のことも彼の芸風も全く知らずにこ

        延命と安楽死と           

          猫だましい

          朝はなるべく朝日と共に起きられるよう、寝室のカーテンは開けたままで寝る。 寝つきが良く、そう簡単に目が覚めないのだが、日の出が早くなってきたらちゃんと6時ごろには目がさめるようになった。 一度夜中に眩しくて目が覚めたら、その日は満月で、窓からの月明りが部屋を煌々と照らしていた。それはそれは素敵な眺めで、ちっともいやじゃなかったし、月が窓を通り過ぎて部屋に明りが入らなくなったら、あっさりと眠りに落ちた。 今朝は気がついたら7時半を過ぎていて、天気は曇り、久々に寒い朝だった。 そ

          猫だましい

          ヒヤシンス してあげたのは ひとつだけきみよりさきに死ななかったこと

          毎年ちゃんと芽を出す球根。 毎年ちゃんと嬉しくなる私。

          ヒヤシンス してあげたのは ひとつだけきみよりさきに死ななかったこと

          道行きや  伊藤比呂美

          むねのたが  若いころ、伊藤比呂美さんが苦手だった。 思っていることは共感できるのだけど、 声が大きすぎるとか、話し方がキツすぎるとか、そんな感じ。 さらに、あなたの思うことにとても共感するけれど、 私はそんなにはっきりと自己主張はできないよ  と何だか拗ねた気持ちになった。 思ったことをちゃんと言えない自分がだめなやつだと思ってしまう。 自分の気持ちのままに破天荒に生きる彼女が羨ましくて、 嫉妬していたんだと思う。 それが、久しぶりに手に取ったエッセイが面白かった。 相変

          道行きや  伊藤比呂美

          認知症にもいろいろあってな

          ブルース・ウィリスさんの家族が、彼が前頭側頭型認知症を患っていると公表しました。 昨年亡くなった夫が最初に診断された病気です。 Yahoo!ニュースでも簡単に触れているけれど、このタイプの認知症は 人格が変わるなどの症状がみられます。 でも、記憶などに症状が出ないので、診断が遅れることが多いし、 側からは病気とわかりにくい。 家族にとっては、これが一番厄介で辛かった。 たくさんの友人・知人に嫌な思いをさせて、そのために多くの人たちと疎遠になり、それが病気のせいだったとわかっ

          認知症にもいろいろあってな

          認知症にもいろいろあってな の日常  花を買うゆとり、そして今と未来。

          昔どこかで読んだのだけど、マザーテレサは 懐に余裕があったら花を買いなさい と言ったそうな。 もちろん、言葉はそのままじゃないですよ。 マザーテレサは「ふところによゆうがあったら」なんて言い方しないよね。たぶん。 余裕があったら人に分け与えなさい と続くとばかり思っていた私は たいそうびっくりした。 「花、買っていいんだ…。」 そして球根を買った。 植物を育てるのが上手じゃなくて、手間のかからない球根を毎年植えていたのだけど、夫が病気になってから、かつかつの生活でしばらく

          認知症にもいろいろあってな の日常  花を買うゆとり、そして今と未来。

          君のクイズ 小川哲

          人生はクイズ。 なんとなーく雰囲気でわかっていたようなこの言葉、 深く納得いたしました。 問題の途中でピンポンして正解する人を、いままでとんでもない記憶力!と思っていた。 そんな単純なもんじゃないんですね。 記憶の中から答えを拾い出すことには違いないけれど、 散らばったピースのような膨大な記憶の中から探し出すのではなく、 引っかかった記憶に経験を照らし合わせ、その経験からさらに記憶を引っ張り出していく感じなんだ。 そして「確定ポイント」。 前からやってくる問題と後ろに連なる

          君のクイズ 小川哲

          みぎ足を ひきずる癖の 足あとに ついていきたい 今朝の初雪

          #自由律俳句

          みぎ足を ひきずる癖の 足あとに ついていきたい 今朝の初雪

          三千円の使いかた 原田ひ香

          今大人気の作家さん。 何冊か読みましたが、どれも面白く読みました。 解説で垣谷美雨さんも書いていますが、このかたの小説は「あるある感」満載。「一橋桐子」のように、あるあるから始まって「ないない」に飛躍していくこともあるけれど、基本は「あー、わかる!」「悩むよねー」「そうそう、モヤモヤするわ」「で、どうする?」な小説です。 「あるある」なことを文章にしていくのは実に難しい。 その昔、松任谷由実(その頃はまだ荒井由実だったかな?)が「中央フリーウェイ」という曲で「この道は まる

          三千円の使いかた 原田ひ香

          虚空の人ー清原和博を巡る旅 鈴木忠平

          若い頃の清原のイメージは、明るく、素直で子供っぽいイメージだった。 多少やんちゃな感じはあったとしても、誰かにガツンと怒られれば「ごめんなさい」としゅんとしてしまうようなイメージだったのだけど。 だから薬物で捕まった時にはちょっとびっくりした。 ダメになるとしても、そちらにいくイメージがあまりなかったから。 どこでどうなってこんなことになったのか。 まず、清原が金になると思った人がいたのは間違いないけれど、薬物に手を染めた時、周りに怒ってくれる人がいなかったのか。 「偉く」

          虚空の人ー清原和博を巡る旅 鈴木忠平

          信仰 村田沙耶香

          久しぶりにあった同級生に、一緒にカルト商売をはじめないかと誘われたミキ。友達との飲み会のネタにしようと話を聞きに行く彼女は「まとも」な側の人かと思って読み始めたんだけど。 庭の石を何気なくひっくり返したら、裏には小さい虫がびっしりとはりついていて、それがざわざわと蠢いていたような、ぞわっと身体中の産毛が逆立つような気分だ。 この人の小説はいつもそう。ぞわぞわするのに目が離せない。 気持ち悪いものを見た時って、そういうことがある。 「げっ」と思ったら見なきゃいいのに、ついじ

          信仰 村田沙耶香

          あちらにいる鬼 井上荒野  

          書いたひとはもちろん、書かれた人も小説家。 一人は小説家の妻だけれど、実際には彼女も小説を書いていたらしい。 いやぁ、小説家おそるべし。 書いた人、書かれた人、全員鬼である。 井上光晴とその妻、瀬戸内寂聴(瀬戸内はるみ)をモデルに、井上の娘である井上荒野が書いた、表面上はある意味穏やかな、実は壮絶な三角関係のお話。 3人をモデルにした小説とはいえ、寂聴さんには何度もインタビューをしたそうだし、ほぼほぼ事実なのだろう。 本の中では「みはる」「笙子」「白木」となっているけれど、

          あちらにいる鬼 井上荒野  

          カミングアウト・レターズ

          昨年、Eテレ「理想的本箱 君だけのブックガイド」で紹介されてから ずっと読みたいと思っていた。カミングアウトをふり返る、あるいはカミングアウトする手紙と、それに対する返事が収められた一冊。 番組でも語っていたが、昌志さんのお母さんの手紙が素晴らしい。 息子にカミングアウトされた時の恐怖。 そういうことにあまりにも無知であった自分への怒り。 小さかった息子がした覚悟や諦めに気付いてやれなかった後悔や悲しみ。 その思いを抱えたまま、息子の好物だったインゲン豆のたくさん入った肉じ

          カミングアウト・レターズ