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三千円の使いかた 原田ひ香

今大人気の作家さん。
何冊か読みましたが、どれも面白く読みました。
解説で垣谷美雨さんも書いていますが、このかたの小説は「あるある感」満載。「一橋桐子」のように、あるあるから始まって「ないない」に飛躍していくこともあるけれど、基本は「あー、わかる!」「悩むよねー」「そうそう、モヤモヤするわ」「で、どうする?」な小説です。

「あるある」なことを文章にしていくのは実に難しい。
その昔、松任谷由実(その頃はまだ荒井由実だったかな?)が「中央フリーウェイ」という曲で「この道は まるで滑走路 夜空へ続く」と歌った時、
「そうそう、夜、彼氏の車で中央高速走ってると、ほんとにそんな気がするのよ!」と思ったものだった。
助手席でぼんやり感じていたことを、ぴったりな言葉にしてもらった気持ち良さといったら!
NHKの「言葉にできないそんな夜」という番組で「そのきもち、何て言う?」とナレーションが入るけど、なんとなく思っていたり感じていたりすることを、他人と共感できる言葉にできるのはほんとにすごい。

なんとなく、「同じ三千円を使うなら、こんな使い方もあるよ」的なお話かと思っていたのだけど、違った。
使えるお金が3千円あるとき、それを何に使うかは(選択の余地なく生きるために必要なものを手に入れるという事態も含めて)大げさに言えばその都度、生き方を決めていくことだ。
何に使うのがいいのか、どう使ったらいいのか、正解はない。

還暦を過ぎてから、とんでもない借金を背負うことになった私には、最後のお話が身に沁みた。
「人生の全ては経験でチャンスで、借金もまた一つの経験であり、チャンスだと思ったのです」
正直、この歳になってからの借金を「これも経験」と言えるほど、私は器の大きい人間じゃない。
ならば、開き直って「チャンス!」と思うしかない?
チャンス?もしかしてチャンスなのか?きっとチャンスだ。
自分に言い聞かせているところ。




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