子ども食堂&子育て世代支援を行う「ホッとサロンすくすく」
私事ではあるが、多忙な日々だったために取材日からなんと約3か月が経ってしまった。
貴重で興味深いお話だったので、記事に残しておきたいと思う。
今回は、「ホッとサロンすくすく」代表の加々美さんにお話を伺うことができた。
コロナ禍の影響
私個人的に最も衝撃を受けたのは、
仕事が無くなってしまった。
病気になって仕事ができなくなってしまった。
という電話が増え続けているそうで、
「正直言ってパンパンなんですけど、お断りすることができない―
―生活がかかっているので」
と加々美さんが話されたことだ。
そんなこんなでコロナ禍の影響で支援を求める家族は、コロナ禍以前である1年前の倍になったという。
参加者が増えたという変化によって、食材調達やそれに伴う金銭面の問題、それぞれの参加者とコミュニケーションをとる時間、状況把握などを考慮すると、今まで通りの方法では上手くいかないことも生じうると容易に想像できる。
責任感を持って困難に立ち向かい、参加者の支援にあたる姿は、私には眩しかった。
加々美さんの過去
実は、加々美さんも、かつて苦しみ、なんとか生きていた生活を送っていた当事者のひとりだった。
時は加々美さんの子育て時代まで遡る。
長男が、中学に入った頃いじめにあい、そのストレスで弱いものに当たるようになったために、家庭崩壊になってしまったという。
生きるか死ぬかという生活を何年も続け、
藁にもすがる思いで行ったのがフリースペース(現在:フレンドリースペース金沢)だったそう。
フリースペースは1週間のうちたったの2時間だったが、ご飯を食べ楽しく遊び、1週間分の元気をもらえたと話す。
そして、スタッフに悩みごとを吐き出して、丸ごと全部受け止めてもらったことで、加々美さんも子どもたちも救われたという。
「苦しい時があったから―
―感謝できる心を持てるようになった。」
苦しい経験を自身の財産として前向きに捉え、今の活動に生かそう!という気持ちは、加々美さんの原動力になっていると感じた。
「隣近所も本当に家族と同じだったんですよ」
昭和30年代前後は、みんなが貧乏であったから、助け合って生きていた。
しかし、今は「居場所」だったり「まちづくり」をテーマにしないといけない世の中。
それが問題だと加々美さんは話す。
私が、加々美さんの話す時代と現代を体感で比較することはできないが、確かに一理あると思う。
今は自己責任の風潮が強いという話をよく耳にする。
資本主義の大量生産大量消費により、モノが簡単に手に入る世の中になったことで、直接人々が支え合わなくても生活できるようになったからだろう。
そして、この莫大な富を生み出す資本主義のサイクルの生活に慣れてしまったせいで、
人の心よりも、お金や時間の効率を優先する世の中になってしまったかもしれない。
社会に貢献できない人間は必要ない・・・?
そんなの、生きづらいと感じる人がいない訳がない。
食材ではなく、心を大事に
「食材を渡したからOKってことは絶対ない―
―自立していくことを私たちはすごく願っているんですよ。」
食材を持って帰ってもらうことは、空腹を満たせるだけにすぎないので、それよりも
長い目で見た時にその家族になにが必要か?
と考えることを大事にし、それぞれの家族に合った支援をしているそう。
加々美さん自身がお母さん方と直接コミュニケーションをとり、アンテナを張って、困っている事、サポートの必要性をキャッチする。
中には、買い物と「すくすく」に来ることぐらいしか、外に出る機会がない方もおり、喋ることを求めるお母さんは多いという。
また、それと同時に、負の連鎖を断ち切りたいと話す。
どう愛情を表現したらよいのか、どう子育てをしたらよいのか、
どうご飯を作れば良いか分からないお母さんも多く、
スタッフが教えるという形で介入していくこともあるそうだ。
お母さんの心が豊かになることで、子どもの心も豊かになることを目標とされている。
支援者になること
押しつけ合いではなく、お互いに助け合うと、
「ありがとう」と感謝が増える。
そして感謝が増えると心が豊かに、穏やかになっていく
と加々美さんは考えていると話す。
お話によると最近、参加者がボランティアスタッフになったそうだ。
その方は、スタッフを始めてから「すくすく」を運営していくための準備など、裏側を知ったことで
「ありがとう」が増え、心が穏やかになった様子が見られるとも話していた。
他人をケアすることで自分のケアもする。
良い相互関係が生まれているなと感じた。
また、当事者にしか分からない傷みがあるはずだから、参加者がボランティアスタッフになることはメリットもあるだろう。
参加者から支援者になるということは、参加者だった視点を持っているので、ホットサロンすくすくのさらなる改善や発展にも期待したい。
また、加々美さんの展望である、
この団体をNPO法人にしたい。
常設のシェルターのような要素を含めたい。
という夢が近い将来、実現できることを願っている。
最後に
子ども食堂や子育て世代の支援を行う、場の提供をすることで、
スタッフや参加者同士がお互い顔見知りになるきっかけになる。
相談ができる相手がいて、支援を求める手段があるという安心感は地域とゆるく繋がりを持てる希望であり、現代の日本社会のニーズであると感じた。
個人主義傾向が進行している世の中だが、
心を大事にした、人とのゆるい繋がりがある豊かな社会を願いつつ、
今回はこれにて終わりにしたい。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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