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【読書】もしも本屋さんを開くなら

もしもあなたが本屋さんを開くなら、どんな本屋さんにしますか?

私だったら、居心地が良いと思ってもらえる、地域に寄り添った本屋さんを開きたい。

先日、ファン・ボルムによる『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』を読みました。本屋さんを舞台にしたお話です。
2024年本屋大賞翻訳小説部門第1位を獲得しています。

※以降は、ネタバレを含みますので閲覧にはご注意ください。

まずは、あらすじから。本と書店が人をつなぐ物語となっています。

ソウル市内の住宅街にできた『ヒュナム洞書店』。会社を辞めたヨンジュは、追いつめられたかのようにその店を立ち上げた。書店にやってくるのは、就活に失敗したアルバイトのバリスタ・ミンジュン、夫の愚痴をこぼすコーヒー業者のジミ、無気力な高校生ミンチョルとその母ミンチョルオンマ、ネットでブログが炎上した作家のスンウ……。
それぞれに悩みを抱えたふつうの人々が、今日もヒュナム洞書店で出会う。

公式サイトより


韓国のお話なので、韓国ならではの名称も出てきており、韓国になじみがない方は慣れるのに少し時間はかかるかもしれないけれどきっとすぐに慣れるから大丈夫!

それくらい素敵な物語だから。綺麗にお話を着飾っているわけでもなく、人間味があるのだけれど、毒々しさがなくてすんなりと入ってくるかんじが良い。

ヨンジュは、ミンジュンと一つの空間を使いながら、沈黙は自分と他人を同時に気遣う行為にもなり得るのだと学んだ。相手の顔色をうかがいつつ無理に話をする必要のない状態。その状態での自然な静寂に慣れていく方法も学んだ。

p.40

あらすじにもあるように、ヨンジュは主人公である店主。そして、ミンジュンは口数の少ない青年です。

この場面の素敵なところが、誰も自分の考えや価値観を押し付けようとしていないところ。

一緒に働く仲間ではあるけれども、お互いを受け入れて1つの空間を共有しているところが良い。それに、「沈黙は自分と他人を同時に気遣う行為にもなり得る」という表現が好き。

一緒の空間にいて沈黙になってしまうことが怖いと思うけれど、この考え方は素敵だなと思います。互いに干渉せずに、一緒にいたとしてもふと独りになる瞬間があっても良いと思いました。


このミンジュンの成長も良いの。ヨンジュのお店で働き続けて感じたミンジュンのセリフがこちら。

「いい人が周りにたくさんいる人生が、成功した人生なんだって。社会的には成功できなかったとしても、一日一日、充実した毎日を送ることができるんだ、その人たちのおかげで」

p.320

出会ったばかりのミンジュン、過去のミンジュンを知っている私からしたら、そういう考えのできるミンジュンが誇らしく思います。

いい人が周りにたくさんいる人生が、成功した人生」っていう言葉が良い。ミンジュンの今の環境は周りにいる人たちのおかげだということも本人が理解していて、今を充実していると感じていることが嬉しい。

私たちは、成功した人生というと、肩書といったステータスだったり、経済面で見てしまいがちだけれど、何を良い人生だと思うかは人それぞれであり、必ずしもそれらの事柄が必要条件にはなることはない。

「いい人が周りにたくさんいてくれて、おかげで充実した毎日を送ることができているから、僕の人生成功したよ」なんて言えたら格好良いよねと思うのです。


登場人物は彼だけではなくて、他にも数人出てきて、彼らの物語もぜひ読んでみてほしいなと思います。もしかしたら、自分の今の暮らしと共感できる人がいるかもしれないから。


私は、時には課題と衝突しつつ試行錯誤しながらも、ヨンジュが周りの人と一緒に作り上げてきたこの本屋さんが好きだし、私自身も誰かの居場所の拠り所になれていたら良いなと思う。

たとえば、このnoteがそういう存在でいられたら良いなと思いました。


『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』の公式サイトがあったので貼っておきます。


今回はここまで。読んで下さりありがとうございました。では、また。




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