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地域自治組織の国際比較から考える、自治会の役割〜あるいは「依頼をボイコットする自由がある」という意味の自治について


地域自治組織の国際比較に関する報告から


こないだ、地域自治組織の国際比較に関する研究会で、イギリスのパリッシュと中国の居民委員会に詳しいゲストの話を聞きながら、日本の自治会の特性と将来を考えた。それぞれを比較することで、それぞれの立ち位置、制度の背景にある思想みたいなものがより浮き彫りにして理解できたように思う。

研究会での議論の詳細は割愛するが、議論の中で面白かったことをメモしておきたい。

イギリスのパリッシュと中国の居民委員会

比較対象として面白かったのが中国だ。中国の人民管理システムは、90年代以前は職場や学校といった所属集団が中心だった。この集団を「単位」と呼ぶ。しかし改革開放政策以後、人々の流動性が高まったことから、「単位」が人民管理システムとしてうまく機能しなくなってきた。そこで、特定地域を管轄する「居民委員会」へと管理システムのコアを移行したのである。

これが日本の自治会と違うのは、制度上自治体としての地位を持っていて、公金(地方税)を財源とする有給の事務局も抱えている点である。この点はイギリスのパリッシュとも通じる。しかし、日本の自治会はよく知られるように、地方自治体としての法的な地位も持たないし、公金を財源とする有給スタッフもいない。

その意味では、中国に比べると、職場や学校が社会管理のコアだった時代は確かに日本にもあったが、日本では自治会が強化されたわけではなかったのが日本の特徴だといえる。

日本で地域自治組織が強化されなかった理由

なぜそうなったのか、というところまで議論は踏み込んでいなかったが、これまでのコミュニティ政策論的な議論から、相互に関連する大きく三つの理由が考えられると思った。

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