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つかの間の幻影

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志稲です。結社誌等への既発表作品をまとめています。
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#俳句

『蒼海』22号掲載7句

『蒼海』22号掲載7句

六月の再会蒼樹清らなり

揚羽ゆくむかし川底だつた道

夏のれん皿洗ふ音響きをり

ふふみては頷く兄や冷し酒

レジ奥の黒電話鳴る夜の秋

桃の皮剥ぐとふ愉悦微かなる

ビル群にそれぞれの窓秋来る

         南波志稲

作句時季は昨年の夏~立秋の頃。
派遣社員として西新宿で働いていて、このままでいいのか悩みながら転職も考えていたりして…。

ちなみに1句目の「六月の再会」というのは、コロ

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『蒼海』21号掲載7句

『蒼海』21号掲載7句

都庁舎に南北の塔おぼろ月

道端に眠る老女や雪柳

不織布は舞へわが春の帰還せる

春灯し伸びては消ゆる影ぼふし

白木蓮もんわりコインランドリー

葉桜や社食のやうな恋だつた

雹降つて歓声ののち震への来

          南波志稲

作句時季はちょうど1年前くらいです。都下のK市から23区内に転居した直後でした。狭い部屋でしたが、通勤時間を短縮できたのは本当によかったです。

昨年の春は一

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『蒼海』20号掲載7句

『蒼海』20号掲載7句

休職者の席にみかんと諸々と

列長くレシート長く大晦日

乗初に朝日賜物めいてをり

初詣みくじ見せあふてふ光

立春の朝やバターの指拭ふ

頬張れば大袈裟にはみ出すレタス

角筈に眠るたましひ春霞

           南波志稲

作句時季は一昨年の年末~昨年の早春。
蒼海への投句をnoteにUPするたびに1年前を振り返ることになるわけですが、かなり昔のことのように思えます。私事ですが2023

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『蒼海』19号掲載7句

『蒼海』19号掲載7句

早退の吾に充ちゆく秋の昼

糸屑のごと残る蚊や吸はせとけ

銀の腹舐めて秋刀魚に猛る火よ

話せずばただ触れたきを星月夜

マフラーに鼻先埋む受験の子

飴の匂ひ鉄焼く匂ひ一の酉

汝が好む湖沼のはなし掘炬燵

         南波志稲

作句時季は昨年の秋~初冬。
この頃は派遣社員としてとある大学の入試広報関係の部署で働いていました。詳細は省きますが多忙でした。「早退」したのはワクチン接種のた

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『蒼海』18号掲載7句

『蒼海』18号掲載7句

汗ゆ汗生るるごとしもオフィス街

涼しさよ五色のガラス陽に透けて

夜のプール上がり一礼する媼

水飯やわが身を管と思ふとき

空蝉の残れる葉裏日は高し

古きポンプ巻く朝顔や次は何処

室外機のほとぼり冷めず今朝の秋

           南波志稲

作句は1年前の夏~初秋です。
今年もすでに猛暑ですが昨年も暑かったなぁ。そんな暑さの中、米どころの温泉地に避暑に行ったり青梅に映画を観に行ったり

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『蒼海』17号掲載6句

隣室の空き部屋となり春の雨

桜しべ降るや立川駐屯地

花蕊までひらききつたるチューリップ

目借時水辺にみづのにほひして

六畳に繁茂の果ての豆の花

「学校に空爆」柏餅もらふ

作句時季はちょうど1年前くらい。2022年の2月から5月初めです。
(投句締め切りは2022年5月15日)

いや~、あれはたったの1年前のことか~、などと思い出すこと数多。
ロシアのウクライナ侵攻についてはもう1年以

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『蒼海』16号掲載7句

『蒼海』16号掲載7句

市境の一本松や冬の月

数へ日や旧き名刺を裁断す

初声の矮鶏堂々と天満宮

初夢や長嶋有と句会せる

積ん読の本積み直し七日かな

春浅し盲導鈴の鳥の声

ドーナツの穴よりながむ春霞

作句時季は2021年末から2022年の早春。
(投句締め切りが2022年2月15日でした)

身巡りが慌ただしく、記事UPが遅くなってしまいました。

投句の季節と合わせるために『蒼海』の届く頃と時期をずらしてい

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『蒼海』15号掲載7句

『蒼海』15号掲載7句

秋の日やキウイにおじぎさせて捥ぐ

下りてなほ楽しき山よとろろ汁

灯火親しゆつたり座る自由席

かりがねやいまだいらへの無き手紙

ポインセチア遅刻の電話かろやかに

片恋よ十字に縛る古日記

途切れたるレール北端時雨かな

昨年秋に作句したもの。
「国立本店」の10期メンバーになってすぐ、交流のため市内の澤登キウイ園でキウイ狩りをしたり、有志メンバーで高尾山登山に行ったりしていました。

仕事

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『蒼海』14号掲載7句

『蒼海』14号掲載7句

あぢさゐの犇めきてその奥昏し

職歴の狭間は沼地バナナ剥く

靴擦れに汗沁みたるや外回り

言ひかけてやめたる喉をソーダ水

すすり泣く面談の子や扇風機

日盛りや刃傷沙汰の規制線

背泳ぎの不意なる無音終戦日

          南波志稲

作句は昨年の夏。たったの1年前なのに大昔のことのようです。

当時は街なかの就労移行支援事業所に転職して、転職したばかりの頃に職場の近くで殺人事件があった

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『蒼海』13号掲載7句

『蒼海』13号掲載7句

乗り慣れて乗り換へ慣れて四月尽

新緑や窓辺の席に撮るごはん

撫で牛の鼻つやつやと夏兆す

まどろみてまなうら朱き五月かな

しばらくは職無き日々を冷奴

玉苗やアンドロイドの指細し

明日も生く心へ強きシャワーかな

           南波志稲

作句時季は昨年の春~初夏。
公立図書館の司書から福祉の仕事へと転職が決まり、有休消化で自由な時間がありました。

当時は谷保駅の近くに住んでいて

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『蒼海』10号掲載7句+α

『蒼海』10号掲載7句+α

夏至の日やマスクの内の大あくび

暑中見舞会ひたいとのみ書き添へて

ハンカチにくるみて螺子の遺品めく

ごきぶりを遣らひしのちも壁は壁

線路炎ゆもとより帰る町は無し

夏雲やせめて終点まで往かむ

向日葵をなぎ倒すほど笑ひたし

           南波志稲

詩歌関連の記事はだいぶご無沙汰になってしまいました。

今号は7句掲載。もう巻末から自分の句を探す癖がついていて「そういうとこアレだ

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『蒼海』9号掲載6句

『蒼海』9号掲載6句

吾は穢れたりきや春の水に問ふ

藤棚の濃きも淡きもみつしりと

内見の窓開け放ち初夏の風

郭公やひとりで住まふ2DK

消毒に慣れし手指へ南風吹く

ひなげしや単線路沿ひどこまでも

          南波志稲

 今年4月~5月の初めころ、ステイ・ホームで外出もままならなかったころの句です。

 前号からのつづきになりますが、国立の15平米ほどのワンルームは狭いだけでなく諸事情で洗濯機を置く

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『蒼海』8号掲載6句

『蒼海』8号掲載6句

マフラーに残る宴の熱気かな

大根の葉踏みて深夜のワンルーム

雪催サドル低きが過ぎゆきぬ

北風や道の果てなる富士の峰

冬の陽に如来像めくぷりんぱふえ

貨物列車よぎり春愁断ちにけり

          南波志稲

 今号も10句提出6句掲載。

 離婚して国立の線路端の狭い部屋に住んでいた頃の句。季節は冬から早春の頃です。

 部屋を探していた頃、たしかNHK俳句だったか、長嶋有さんが「線

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『蒼海』7号掲載6句

『蒼海』7号掲載6句

掛稲の列見晴るかす小海線

信濃路や軸逞しき榎茸

ほの温きおやき頬ばる秋の暮

校正の眼の奥熱し曼殊沙華

まちぼうけ喰ひしごとくに帰り花

決心は固し紺地の日記買ふ

    南波志稲

 『蒼海』には毎回10句投句しているのですが、どうも6句掲載が定位置になっていていかんなぁと思います…が、落とされた理由は投句から半年近く経ってみるとなんとなくわかるもので、精進せねばと思います。

 この前

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