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『蒼海』8号掲載6句


マフラーに残る宴の熱気かな

大根の葉踏みて深夜のワンルーム

雪催サドル低きが過ぎゆきぬ

北風や道の果てなる富士の峰

冬の陽に如来像めくぷりんぱふえ

貨物列車よぎり春愁断ちにけり

          南波志稲


 今号も10句提出6句掲載。

 離婚して国立の線路端の狭い部屋に住んでいた頃の句。季節は冬から早春の頃です。

 部屋を探していた頃、たしかNHK俳句だったか、長嶋有さんが「線路の近くっていいよね」みたいなことをおっしゃっていたのが頭の片隅に残っていて、その部屋を紹介されたときにここがいいかもって決めたんでした(単純)。

 狭いしキッチンも小さくて不便ではあったけれど、自分ひとりの身軽さと自由を満喫できたし、そういえば仕事も休ませてもらって無収入だったけれど厄介な感染症も流行る前で、いま思えばこの人生でトップ3には入るであろう幸福度の高さだった気がします。

 国立は学生街なので本屋さんも喫茶店も充実していて私には住みやすい良い街でした。実は今でも月に1度は国立へ行っています。今の家の近所に良い美容室がなかなか見つからなくて。行くたびに独居を始めた頃のことを思い出して、ここが今の自分の出発点、第二の故郷だと思います。

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 富士見通り。道の突き当りに雪で真っ白な富士山が見える。(2020年2月1日撮影)