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初めて挑戦したプリンは爆発音とともに消えた
「(レンジの稼働音)ブ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……、ボンッ!!」
一体なにが起こった!?と叫びたくなるように、わたしのプリンはレンジの中で惨めな姿になって完成した。
プリン作り初挑戦であったが、ただの卵と牛乳があたためられた作品となった。
オーストラリア産の牛乳に魅了されたのがはじまり
2016年8月、大学4年生のわたしはオーストラリアのメルボルンにいた。
卒業制作の課外研修という名目で、大学から支援金をもらい1ヶ月滞在していた。
運がいいことに、前々からなじみのあるオーストラリアの友人の家にホームステイさせていただくことに。
おかげで初めての海外生活でも大きな問題なく過ごしていた。
「Hi,Nodoka! なんか食べたかったら自由に食材使って!冷蔵庫の中にもあるからね。
Oh! 近くにスーパーがあるからそこ使ってもいいと思うわ。Woolworthsってところね!」
めちゃくちゃ早い英語だったけれど、どうやらそこで食材を確保して食いつなげということだと認識し、早速出かけることにした。
海外経験のある方なら分かると思うが、外国のスーパーマーケットは広い。食材も品数豊富。
日本で見たことがない食品と初めて会うモノばかりで目が泳いだ。
カートを押し進め、朝食用のパンと果物、ヨーグルトをカゴの中にいれたら、その隣で目を引く食品に出会った。
そう、2リットルのバケツ容器にたっぷりと入れてあった牛乳だ。
昔からオーストラリア(らへん)は放牧のイメージが強く、乳製品も絶対美味しい!と思っていたわたしはすぐさま牛乳を手に取った。
裏の製品情報には細かい数字は覚えていないが、どうやら濃度が濃いと書いてある。
「飲むヨーグルトよりかきっと濃いのか!?!?味が気になる!
でも2リットルもあるのか、牛乳嫌いじゃないけれどさすがに多い。……え〜い、買ってしまえ!」
勢いでわたしは牛乳を購入した。
ビニール袋だとちぎれてしまいそうな重たい液体をわたしは両手で抱えながら、友人の家に戻った。
「そのまま飲み続けてしまったら間違いなくOPP(腹をくだすこと)になる。料理に使ってシチューにするか!?う〜ん、迷うなぁ」
そう思いながら冷蔵庫を漁っていると、まんまるの可愛らしいつやつやな卵に出会った。
「牛乳と卵……、プ、プリン……!?」
頭の中の宇宙では牛乳と卵がぶつかり合い、ビックバンのごとくプリンが思い浮かんだ。
すぐさまグーグルでレシピを調べた。
なぜならこの世に生を受けて22年、これまで1度もプリン作りをしたことはなかったからだ。
いや、プリンだけではなく、お菓子全般だ。
友達と交換する恒例行事のバレンタインのチョコレートも親に作ってもらっていたし、簡単で有名な無印良品のお菓子作りキットも触れたことなかった。
そのわたしが!
初めてきた土地で!
初めて手に取った食材で!
初めてのお菓子作り!?!?
わくわくしかなかった。興奮した状態からなんなら成功しかしないと思っていた。
指定された材料をキッチンに並べ、いざプリン作りに挑んだのだ。
材料をマグカップに入れて”チン”して作れる
食材を用意したものの、どういった手法でプリンを作っていいか分からなかった。
茶碗蒸しに似ているし、もしかしたら蒸すのか?って思い調べたら、『簡単!便利!レンジで作れるプリンレシピ』が出てきた。
「えっレンジで作れるの?あの温めるレンジ?!」
当時日本でもレンジで温める◯◯シリーズが流行ってて、専用の容器があれば簡単に一品ができると話題になっていた。
そんなに便利になったなんて、レンジはもはや3種の神器を超えまくってる!と感動してたらさらに感動することが!
『マグカップに材料を入れるだけ!』
専用容器もなにも必要ないことがわかった。おうちにあるマグカップだけでできるなんて、これはもうわたしだけのレシピだ……。
食材も方法もこれでばっちり!準備万全の状態でプリン作りがはじまった。
【作り方その1】プリンの土台
最初はプリンの下にあるキャラメル作りからだ。
『キャラメルの材料となる砂糖小さじ2、水小さじ1を入れレンジで1分30秒加熱する。』
「え〜、キャラメル作る工程から小さじとか気にしなきゃいけないの!?もう最初からかよ〜」
この言葉からお察しの通り、わたしはかなりのズボラだ。
特に料理に関しては一度も小さじや大さじなんて気にしたことがない。
よくレシピ本で味付けに塩・こしょうを少々と言っているが、わたしの中では全ての調味料が少々なのだ。
なので最初の工程から”小さじ”の言葉が出てきたときは、正直めんどくさいと思ってしまった。(お菓子作りではここが肝心なのに)
そしていつもの癖で、”だいたいこのくらいだろう”小さじ2杯の砂糖をスプーンに盛り、マグカップに入れた。
そのあとの水なんて水滴を何回か垂らして終わった気がする。
もちろんレシピの通りキャラメルはうまくできなかった。
それよりいつまであたためても薄い、キャラメル色になれない茶色の水分がマグカップの底を占領していた。(さっそく失敗フラグ)
【作り方その2】プリンの原料
次に卵と牛乳を使い、プリンの”もと”を作る。
卵と砂糖をボウルに入れて、砂糖が溶けるまでよく混ぜる。牛乳も少しづつ加えて、ザルにこして滑らかにする。
「でたでた〜!プリンのレシピ定番、ざるにこして滑らかにする!これがやってみたかったのよ〜!」
事前にプリンのレシピを検索したときに、動画も見てみようとyoutubeで検索していた。
作り上げる工程で特に印象的だったのが、ざるで液体をこす作業。
卵と牛乳を混ぜただけの黄色い液体が、つやつやで滑らかだということが画面越しでも伝わった。
るんるん気分でレシピの説明をよく読まなかったわたしは、そのまま一気に卵と牛乳をボウルに流し入れた。
しかし牛乳を少しずつ入れなかったために、最初からよく混ぜなければいけなくなり、想像以上に泡がたってしまった。
こしてしまえば何とかなると思っていたが、意外となんとかならなかった。
まずちょうどいいサイズのザルが見当たらなく、手持ちサイズのおたまで先がザルになっている器具でこした。
友人に手伝ってもらいなんとか全て流し入れたが、結果的に「な、なめらか?」と言ってしまうほどの”ごわつきさ”が残ってしまった。
「舌触りさえ気にしなければいい話。さぁ、レンジで温めよう」
このあと起きる大惨事を知らず、わたしは最後の工程に移ったのであった。
【作り方その3】プリンを固める……
ついにわたしのプリン作りも最後の工程に達した。
マグカップに液体を入れたら電子レンジで3分加熱。粗熱が取れるまで室温で置き、余熱で火を通す。冷蔵庫で冷やしたら出来上がり。
「やっとプリンが食べられる!」
わたしの気持ちは最高値に達していた。
初めてだらけのプリンがようやくできると思うとわくわくが止まらず、そのままレンジにマグカップを入れてタイマーをセットした。
きっちり3分セットした。
「ピッ、ピッ、ピッ、ブオォォオ〜〜〜ン……」レンジが稼働した。
そして2分過ぎたあたり、ついにあの音が鳴った。
「ブ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……、ボンッ!!」
3分後のできあがりにしては少し早いなと思い、レンジを開けた。
わたしが時間をかけて作り上げたプリンは、レンジの中でマグマのように吹き上がり、プリンとは言いがたい姿に変わっていた。
試しにスプーンで掬い上げてみたが、なにも残らなかった。
プリンというか具のない茶碗蒸しを細かくつぶして水でびちょびちょに浸した作品となっていたのだ。
失敗作がネタへと変わった
「絶対成功するわ〜」と豪語を謳っていた1時間前のわたしはどこにいったのか、消沈しながら惨めなプリンを取り出した。
どの工程でどう間違えたのかと原因を考えるよりか、初めてのお菓子作りを盛大に失敗したエピソードになんだか笑いが込み上げてきた。
何ごともネタにしたくなるわたしは、すぐにTwitterにツイートした。そしたら友人や先輩から”いいね”とコメントが20件近くきた。
なんかこうなった、プリン(笑) pic.twitter.com/a91XgHJKvB
— のどちゃん(和花) (@waka_ndk) August 29, 2016
「めっちゃ笑ったww」
「ラップしたほうがいいよ!」
「仕事に行きたくなくて、平日の真ん中あたりおれもこんな感じに爆発しているわ」
コメントを読み「あぁ、失敗したプリンもこうやってだれかの笑いになっているんだな」と思うと、なんだか成功した気持ちになった。
汚れたレンジを拭きながら温かい声援に浸り、わたしの初めてのプリン作りは幕を閉じた。
そのあとは材料を買いにいったスーパーへ戻り、日本円だと100円で買えるプリンを買ったのであった。
めでたし、めでたし。
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