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わたしの二次創作日記_18

7.別ジャンルに足を踏み入れて、二足の草鞋で活動しだした2021年の夏から秋

①わたし、新しい沼にデビューする

2021年の春から夏にかけて——
私はあいも変わらず、毎日、毎日めっちゃ声のデカい蝉村先生から長男イチロウの発達について指摘される日々を送っていた。次第にイチロウは、毎朝「幼稚園、行きたくない!」「イヤ、イヤ!」とぐずり出すように進化した。

息子の挙動ばかりが気になり、落ち込んだりイライラしてしまうことから少しでも目を逸らしたかった私は——再び、二次創作小説を書きだした。

今度は、夏アミ(この日記内の架空アニメ)のタクシン(タクヤとシンジの腐カップル)ではない。

2021年の1月に出会った運命のドラマ「ノエルー聖なる夜にー※」で、だ。
※同じ事件にそれぞれ違う立場で関わることになった三人が「友愛と恋愛」「性愛と純愛」の狭間で揺れながら、事件の解決に挑む本格ミステリー。主な登場人物は、ウィリアム(男・四十代)、コレット(女・二十代)、ルイ(男・三十代)……
という、この日記内の架空ドラマ。

友達でも恋人でもない。
家族でも仕事仲間でもない。
その、主役三人の「なんとも名前のつけようのない関係」に夢中だった私は——

カプものは、書かねえ!トリオでいく!

と決めた。

今の私は、この時の私に「いやいや、公式で絶対見られへんもん(公式でくっつかへん二人がイチャイチャしてるとか)が見たくて、pixiv開いている人がほとんどちゃうん!? 自分、ゴリゴリの評価依存症やろ? カプなしは、相当フォロワー持ってる人か実力者やないと閲覧数もブクマも大していかへんけど大丈夫!?」って全力ツッコミだが、この時の私がそう決めたのだから仕方ない。

タイトルは「はじまりはいつも聖なる夜に」
あらすじは、ウィル(男・四十代)、ココ(女・二十代)、ルイ(男・三十代)の三人が、「友愛と恋愛」「性愛と純愛」の狭間で揺れながら、本編と全然違う設定の事件に巻き込まれるストーリーである。
ま、要約すると、当時の私は、公式三人の絶妙に恋愛にならない関係が好きすぎて、ただただサイドストーリーみたいなものを書きたかったのです。
しかも、構成を考えた時点で、総文字数は五万字から七万字はいきそうな、同人にしては超大作(プロローグ、エピローグと全三章)に取り掛かろうとしていた。
(「あってもいいけど、同人やなくて、いいやん」って、今、日記書きながら、また思ってしまった……)

この「同人やなくて、いいやん」ジャンルの長編。
いったい、どれだけの人が読んでくれるだろうか……
ちなみに当時の私も、「ノエルー聖なる夜にー」の二次創作タグ「#聖夜」をチラッと覗き……
ほぼカップルの作品しかないことを知っていたので、今の私ほどではないが「カプものの方が好まれる」ことは、なんとなく察していた。
(カプ人気ランキングは、1.ルイウィル(腐カプ)、2.逆のウィルルイ(腐カプ)、3.ウィルココ(男女カプ)。ちらほら、ルイ夢、ウィル夢。カプ要素なしの作品は、ほぼ無し)

あとこの「#聖夜」というタグ、公式が放送中だった2021年の冬にドバッと増えているものの、春には既に閑古鳥状態。

だから余計「ああ〜〜……全然、読まれてない、ブクマも全然つかへん! キィ——ッ! もう書きたくない」ってメンタルが崩壊した結果、頭に浮かんでいる物語が未完結になることを恐れた。

とりあえずせっかく始めたことだから、書き続けたい。
その一心で、一生懸命考えた。
そして、通知中毒と評価依存症で苦しんだ過去(わたしの二次創作日記_10参照)と同じ轍を踏まないよう、自分を管理しながら私は書き続けたのだった。(具体的な方法は「わたしの二次創作日記_16」参照)

一ヶ月に一万字程度のスピードで。
支部には上げず、ただひたすら書き続けた。

毎朝「幼稚園、行きたくない!」とグズるイチロウに、「そやなぁ。行きたくないなぁ。行きたくないけど、まぁ行こっか。パパも会社行きたくないけど、さっき行ったで」とか適当なことを言いながら。
そんなイチロウと暴れるジロウを自転車に乗せて自転車を漕ぎながら。
途中、市営のバス停で寝泊まりしてるおばあちゃんに絡まれたりしながら。
迎えに行くたび、蝉村先生からイチロウの発達について色々お言葉を頂きながら。
普段お世話になってる近所の小児科の先生や、3歳半健診で発達心理の先生に、長男イチロウのことを相談しながら。
すると「赤ちゃん返りしてるだけやから、もっと甘やかしてあげて」「性格やと思うけど、なんとも言えないので様子みましょう」「この子、なんの問題もないって。言ってることわかってるやん。最近の園は……」など、いろんな人にいろんなことを言われながら。
そのことを蝉村先生に伝えても「こんなに喋らへん子、見たことないし。言ってること絶対わかってないって」と同じ話を毎日されながら。
一歳半になり爆走暴れ男に進化したジロウを公園で追いかけまわしながら。
スーパーに買い物に行き、夜ご飯を作って。
夫の愚痴を聞いて、夫に愚痴を聞かせて。
……

空き時間に黙々と、新しくゲットしたPCに文字を綴り続けた。

そうこうしているうちに、春から夏に、夏から秋へと季節は移り……
2021年9月某日。
カップル要素なしのトリオもの、ウィリアム、ココ、ルイを主人公にした二次創作「はじまりはいつも聖なる夜に」が完結した。
実に、半年近くかかった。

長く手元で暖めていたせいか、作品をpixivにあげようとした日。
「聖夜にどハマりしたものの、今更書き出した新参者です。お手柔らかにお願いします」というキャプションをつけながら、私は激しい緊張と不安に飲み込まれていた。

全然、読まれなかったらどうしよう……と、ネガティブがここに来て爆発したのだ。
いや、そもそも一年近くpixivにいなかった人間の作品など、読まれると思う方が間違いな気がする。

しかも、初めてのジャンル。
数少ない私のフォロワーが万が一気がついてくれたとしても、違うジャンルの作品はスルーだろう。 
フォロワーは私のファンではない。
そのことは、リバっぽい作品を書いた時、五臓六腑に沁みたところ(わたしの二次創作日記_9参照)だ。
違うジャンルの作品など、タクシンでフォローしてくれた人は決して読まないと覚悟した方がいい。であれば、タグに頼るしかないが……カップルタグをつけられないトリオもの。しかも聖夜に興味がある人自体、減っているこの状況で——

ぐるぐる考えているうちに、今度は「誤字、大丈夫か?」とか、「私はずっと読んでるからわかるけど、初めて見た人がこの流れで理解できるのだろうか?」とか、そんなことが、猛烈に気になりだしてきた。

つまり、半年近くも同じ話と向き合い続けることで、私の中で「はじまりはいつも聖なる夜に」へ、もの凄い愛着が生まれていた。同時に、作品への客観性を失っていた。

こんなに愛しい作品が評価されなかったら、私はまた深く傷つくだろう。
それで書くことが嫌になってしまいそうで怖い。
いっそのことpixivになんて晒さないで、このまま手元でずっと暖めておきたい——

そこまで思い詰めた私は——その日「はじまりはいつも聖なる夜に」をpixivにあげることを あきらめた。

「この子を独り立ちさせるのは、まだ早い」と。

そうして一週間寝かせて、もう一度「はじまりはいつも聖なる夜に」を最初から最後まで読み、わかりづらいところや誤字をなおしたところ——
ネガティブより「病まずに六万字書けた」「好き嫌いはとにかく、一応読み物として初見の人が読んでもわかるレベルにはなった」という事実に満足感の方が勝った。
この時に、私は初めて文字校正と推敲をきちんとした。
そして、その大切さに気づいた。

「よし、この子は社会に出しても大丈夫! すぐに拾ってくれる人がいなくても、私の愛しい子には変わりないから……誰も可愛いと言ってくれなくても、私だけは心の底から可愛いって思ってるよ」

という気持ちにやっとなれたので、私はめっちゃドキドキしながら「はじまりはいつも聖なる夜に」をpixivにあげることにした。
#聖夜 #ウィル #ココ #ルイ のタグだけつけて。

しかし、カップルタグのついてない過疎ジャンルの長編に、いいねもブクマもすぐつかないのは必然——

ただ、ある程度市場調査?した上で作品を書いた為、これは想定内のことでもあった。

しかし——
「私の愛しい子には変わりないから……誰も可愛いと言ってくれなくても、私だけは心の底から可愛いって思ってるから大丈夫だという気持ちで送り出した作品だから。気にしたら負け」と己を鼓舞しつつも、半年間かけて一生懸命書いた作品。
やっぱり……いっぱい読んで欲しいし、いっぱい褒めて欲しい。

ちなみに、当時のやるせない気持ちが気分ログという日記アプリに残っているので、一部抜粋してご紹介します。

「アップから二日で、閲覧数が30いった。だけど、ブクマもいいねもまだつかない。カプものじゃないのに、これだけいけばいいか。求めすぎよね」
「やっぱり、長すぎて読む気が起きないのかな。カプものにしたら、よかったのか……ウィルココ(男女)は結構好きやし。人気はなさそうやけど」
「十日経って、閲覧数が100超えた。なんやかんや、夏アミよりは人がいるのかな。ブクマも2ついたし。カプものじゃないのに、上出来と思おう」
……

今、日記を見返した私の感想は、「この日記書いている人(私)、めちゃくちゃ数字に執着する人間やな」です(笑)

ま、それは置いといて……
そうして一ヶ月も経つころには、ブクマが7に増えていた。
そのブクマの中に、タクシン界隈の人は一人もいなかった。

私が勝手に好きになり過ぎて彼女の言動に一喜一憂するようになった、神絵師の「山川」さん。
リバ以外は必ず読みに来てくれた、読み専の「Moe」さん。
交流上手のブクマゲッターで私が勝手に嫉妬していた、R18専門字書きの「ゆらゆらくらげ」さん。
圧倒的文章力で私の気力を根こそぎ奪っていった、実力派長編字書きの「彗」さん。
とりあえずいいねとブクマを付け合う関係になっていた同じ穴のムジナ、私と同じ評価依存症に陥っていたと思われるアンダー18絵師の「茹でブロッコリー」さん。
彼女からのフォローとブクマが欲し過ぎて、でもなんの反応ももらえなかったタクシン界隈の絶対神、プロ漫画家の「如月卯月」先生。
……
(上記の彼女たちの詳細は、わたしの二次創作日記_6参照)

本当に、誰一人いない。

だけど、むしろそれでよかった。いや、それが嬉しかった。
「山川さんが読んでくれへんのは、なんでなんやろう」とか「なんで、ゆらゆらくらげさんばっかりブクマつくんや!如月卯月先生にまで、フォローされて」とか、そういったモヤモヤが、一気にリセットされたから。

「違うジャンルの作品を書くって、こういうことなんや……」と初めて知った私の心は、驚くほど軽くなっていた。

と同時に。
初めて書いた作品に感想がもらえて、Twitterやってない奴の作品を拡散までしてくれる「タクシン」という沼の温かさが、身に染みてもいた。
リバっぽい作品を書いた時は——山川さんの不穏な呟きや、誰にも読んでもらえないことに心が折れて「タクシン界隈、怖い」と怯えたけれど……。

極度の評価依存症の私は、通知中毒に陥るのが怖くて最初は我慢していたものの、やはり懲りずにTwitterで「#聖夜」の検索をしていた。
しかし、私の作品に対して何か反応している人は見つけられなかった。
Pixivに感想がつくことも、一ヶ月待ってもなかった。
六万字の小説をあげたところで、なんの音沙汰もない。
そっとブクマをつけてもらえるのみ。

「タクシンって、沼にいる人の温度がめっちゃ高いジャンルやったんや」と、私はこの時に初めて知った。

このままタクシンのことは忘れて、ジャンルをガラッと変えてしまうことも可能だ。心機一転、違う土地で大学デビューといったところだろうか。
しかし、アラフォーまでずっと関西に引きこもっている私に、違う土地へ行く度胸などあるわけもなく。

「聖夜」の二次創作小説を書くことで、タクシンからしばらく離れていた私は——

「やっぱまた、タクシンでも書きたいな」
と思うようになった。
だって、タクシンが嫌になったんと違って、中の人間関係に拘泥してしまう自分が嫌やっただけやし、と。
浮気夫が妻と離れて暮らすことで、妻の大切さに気づいた的な心境だったのかもしれない。

そうして、三千字程度のタクシンSSの設定を、ぼちぼち練り始めていた2021年の10月某日——

ふとPCからPixivを立ち上げた私は、ベルマークの通知横に「10+」の赤文字を見つけて息をのんだ。

「え!? なになに!? フォロワー、いきなり増えてる。それに……『はじまりはいつも聖なる夜に』のブクマが急に25!?」

驚いた私は、pixiv内の「#聖夜」を検索してみた。

「祝! 2期決定おめでとう」
「とり急ぎ、ウィル・ココ・ルイに捧げます」
などなど……狂喜乱舞イラストが溢れている。

そこでやっと「ノエル」でググった私は、「ノエルIIー聖なる夜、再びー」というタイトルのドラマが、2022年の新年から始まることを知った——

「まじかァ——(号泣)!!!!!! また、ウィル・ココ・ルイの三人に会えるの!? 新作やんな!? し、幸せすぎる……」

心震わされ、理性という名のリミッターがおかしくなった私は——

「こうなったら、バリバリ『#聖夜』でも書きたい! いや、絶対に書く」と即決した。

日常では、イチロウの発達問題が特に進展のないまま——

こうして私の「#夏アミ #腐アミ #タクシン」と「#聖夜 #ウィル #ココ #ルイ」の両方を書くという「二足の草鞋的同人生活」が始まった——

NEXT→そういえばPTAに当たっていた私がママ友とねっちりバトルを繰り広げながら同人活動に精を出す「7.別ジャンルに足を踏み入れて、二足の草鞋で活動しだした2021年の夏から秋 ②風に吹かれて消えていくのさ、晩秋」へと続く……

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