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『イヴリン嬢は七回殺される』スチュアート・タートン(著)三角和代 (訳)

森の中に建つ屋敷“ブラックヒース館”。そこにはハードカースル家に招かれた多くの客が滞在し、夜に行われる仮面舞踏会まで社交に興じていた。そんな館に、わたしはすべての記憶を失ってたどりついた。自分が誰なのか、なぜここにいるのかもわからなかった。だが、何者かによる脅しにショックを受け、意識を失ったわたしは、めざめると時間が同じ日の朝に巻き戻っており、自分の意識が別の人間に宿っていることに気づいた。とまどうわたしに、禍々しい仮面をかぶった人物がささやく―今夜、令嬢イヴリンが殺される。その謎を解かないかぎり、おまえはこの日を延々とくりかえすことになる。タイムループから逃れるには真犯人を見つけるしかないと…。

否が応でも、西澤保彦の『七回死んだ男』を連想してしまうが、読後感はシュタインズゲートに近かった。プロットが美しい。

殺人事件の起こる1日を繰り返すタイムリープものだが、戻るたび、別人の中に居る点が新しい。色んな視点から、事実を収集し、真相に近づいてゆく。
戻るたびに別人なので、自分が同時に複数おり、昨日や明日の自分と協力するところも面白い。これを利用したトリックも仕込まれており、作者の手腕に感動した。

さらに、同じように同じ日を繰り返している人間があと二人いて、繰り返しから抜けられるのは、真相を明らかにした一人だけ、という競争に巻き込まれる。
これにより、殺人事件の調査と、後二人との駆け引きが発生し、一人とは協力、一人とは殺し合いになり、ドラマを肉厚にしてゆく。

さらにさらに、なぜリープするのかも次第に明かされ、終盤は驚きの連続。徹夜で一気読みしてしまった。

ただ難点もあり、構成に緩急がなく、急の連続で、読むのに疲れるし、会話、比喩が皮肉たっぷりのコテコテなイギリス文学だし、キャラは多い上に、呼び名が統一されていないなど、翻訳ものが苦手な人にはしんどい一冊と思われる。
後、折角のタイムリープ物なのに、過去改変ネタがないのも残念かな。

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