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詩集 真夜中


雲のスープ



眠りの薪をくべる
囀りならずっと
羽の擬音で 雲の上まで
そこから降る雨や川を
模る 音を走らせ
向かい側から見上げてみたら
捩じれる空の由来がなびく
縁側の風

眠れる夜が明ける
夢の奥底からそっと
柑橘の声 果実の舟で
そこで目覚める瞳の意味が
彩る 指を走らせ
キッチンの火とサラダのボウル
思い浮かべる日々はサラサラ
直喩の川へ





詩集 第18弾になります

"夏の終わり" と "真夜中" を、全体のコンセプトにしています

海、祭り、花火など、夏に纏わる詞を多く収録しています

気に入っていただけたらうれしいです^ ^

新作も3つ収録しています




潮騒



夏を切り抜く
風が誘った 窓を眺めた
昨夜ゆうべの海は瑠璃色
映し出したら



空を駆け抜け
少し望んだ
雲の連なる明日
砂に佇む 今に羽ばたく 
遥か 目を凝らすんだ



息を吸うんだ ざわめく水面
ひらめく歌を 少女は綴った
またね 青色 たぐる糸と
めいめいの日々 思いは巡る



そしたらずっと音がする
潮騒の
ルリルラと海に星は来る
壮大に
指で らせんの珊瑚の世界
想像してみてよ
カーテン ゆれる 眠る
少女は夢の中 広がる



心の海に 手をつなぎ
そこで聞こえる 潮騒と
回顧の重なる頃に 朝が降るだろう
少女の目の奥に



息を吸うんだ 読み返すほど
ときめく歌を 少女は奏でた
「また明日ね」
近い放課後 波の塗り絵のつづきを描く



そしたらずっと音がする
潮騒の
ルリルラと海の暮れる頃
記憶を隣に
街灯を 次に 次に歩いた
夜を束ねる
今も海沿いの色を浮かべる
詩的な少女の夢が広がる



いつもの海に 手をつないで
そこで聞こえる 声に夢中に
おもかげは変わらないまま 笑えば
朝が降るだろう 少女の目の奥に





頬杖ついている心は
砂を歩くころには
息を吸ったら磯を感じるくらい
身近になれる
瞳はとうに海を抱擁している


鐘の響いた放課後
雲をつつんだ少女の夕暮れ
手にするノート
嘘のない文字が遊泳している


ああ


パラレル 僕が羅列している
パラレル 君が羅列している
パラレル 僕が羅列している
パラレル 君が羅列している


鐘の響いた放課後
雲をつつんだままのノートと
砂浜 フレーズ 歌う少女の


パラレル 夢の畔までつづく
パラレル 夢の畔までつづく
パラレル 夢の畔までつづく
パラレル 夢の畔までつづく



ハート



髪をとかして 今日も嘘の話が一つ
忘れたものは影に紛れる
やがて君も見惚れだす朝は
すべての力を込めて
幕が上がるよう 恍惚な日


羽をひろげて 今日も寝入りばなを歌う
星の車を窓に見つける
糸の熱で 宵闇を縫う 私の心
幕が上がるよう すると悲しみ


何かになりたいって気付いたの
いつかなりたいって思ったの
何かになりたいって気付いたの
いつかなりたいって なりたいって


君と見上げた東雲へ歩こう
手を離さないでいてよ
御伽噺はもう少し
遠くまで行けば見えるよ


扉をひらき 今朝も布団の外へ
塗り絵の街は涙の色
夜の音を そのルアーで 探し出したら
なつかしく思うもの 静謐


何かになりたいって気付いたの
いつかなりたいって思ったの
何かになりたいって気付いたの
いつかなりたいって なりたいって


君と見上げた東雲へ歩こう
手を離さないでいてよ
御伽噺はもう少し
遠くまで行けば見えるよ


何かになりたいって気付いたの
いつかなりたいって思ったの
何かになりたいって気付いたの
いつかなりたいって なりたいって


君と見上げた東雲へ歩こう
忘れないでいてよ
御伽の国はあと少し
御伽の国はあと少し



砂上の楼閣♯



砂を掴めば掴む程に
ルアーを凝らす池の畔で
遠く微かに 人の幻
暁を一つ越えて来る火は
千里の夢を見ているらしい


雲の滲んだ蒼茫
錆びた歯車の散らばる辺りで
グラフィックの私は独り
きらめくように吹く
風向き あつめている


砂を編んだ
陽の光の差す空き瓶を
拾ったようで より色は
モノトーンに染まってく


影だけがそこにある
影だけがそこにある
不思議な都がある


砂を編んだ
陽の光 ぐるり 一回り
そう思っても 今は
君に会えることもない


汽車は通り過ぎたらしい

汽車は通り過ぎたらしい

夜になるまで暇をつぶし





空想のはしごを上る人々の夢の中
暁は何よりも 満たされていた


両手を広げ 腕の帆に
星が零れる瞬間に
暁は賑やかに 振り向いていた


緩やかな川のほほえみに
車輪を漕いだ一心と
猫のまどろみ 暗闇に
のどを鳴らして 朝を待つ


景観が 隙間から走る
景観が 隙間から走る


暁の街に降る
陽射しに実は分かっている
誰もいない未来を少し想像している
りんご飴のような月を深く抱いて眠っていた
赤い 青い 色彩の 約束を覚えていた


霧をかき分けていく
猫のあくびで 明く空に
口ずさんだ 口ずさんだ つぶやき


暁の街に降る
陽射しに実は分かっている
誰もいない未来を少し想像している
りんご飴のような月を深く抱いて眠っていた
赤い 青い 色彩の 約束を覚えていた




祭囃子



電車の流れで回想する昼
想いの日の意は 故郷へ
りんご飴一つ買って歩こう
祭りの中でにぎわう光


暮れるほど 望んだ声が
段々、段々、近づいてくるよ
少しずつ降りる帷に突き上げた手
叩く太鼓の音が


どんどんと祭囃子になる
通り沿いは夢になる
どんどんと祭囃子と拍手
ふと走りだす風と私の夏が
次の番地の君までの距離、届け


車の音の鳴る 高架下に
ひとり歩く その線香花火
りんご飴だけ頬ばる夜は
いっそう晴れやかに


どんどんと祭囃子になる
通り沿いの輪を踊る
どんどんと祭囃子が広がる
想像以上 季節の熱が


次の番地で窓を見てる君、届け
次の番地の君までの距離、届け



夏に眠る



おはよう 夏の大三角から降る明日は今になる
手にすると 水は跳ねる 輝きを秘めながら


さよなら 街をくぐり抜け
どこにも居ない君のことを忘れる夜に
鏡は 記憶からうつしだす


うつりだす
君が花火のらせんで とびきり光っていたんだ あの夏に
つかんだ虹 その温度を多分 覚えていたんだ


くりかえし
君が花火のらせんで とびきり光っていたんだ あの夏に
つかんだ虹 その温度を多分 覚えていたんだ


夜は暗い 帰る 昔へ
靴音で奏でる コード
また 東雲色 夜明けの夏に眠る



夜行



夜は今にはじまってゆく
曇る窓 雨をすべらせ
思うことすべての魔法が
ほどける 旅する人へ


夜は今しか見えない
もので溢れかえる
考えうる道のりに
凝らす目 夜行の流れ


ひとりの心の隙間に誰か居たらしい
そう思うだけ 近づく街で
旅を背に 降り立つ頃に
夏の滲む空は蒼く咲き誇るだろう


夜は深く 通り沿いを
過ぎる雨 壁をすべり
向かいの 傘の上を
オノマトペのように落ちる


茂みに 糸がなびく
水の楕円を振り返り
考えうる姿を練る
冷える風 たぐる右手


川べりの香の中で
気持ちは駆け抜けていく


ひとりの心の隙間に飾りつけを
思い浮かべて 近づく街です
旅する 河川の終わりに
夏の滲む空の熱意 夢を見るだろう


ひとりの心の隙間に誰か居たらしい
そう思うだけ 近づく街で
旅を背に 降り立つ頃に
夏の滲む空は蒼く咲き誇るだろう





花火



どこにもあって どこにもない空の雲は鮫みたいだ
髪飾りの彩る君がほら
足音の響いた通りを
夜を越えて 夜を越えて
歩いてゆくんだって


どこにもあって どこにもない空は果実の星みたいだ
浴衣姿でつづく橋はほら
鳴り響く拍手の熱が
ふわり舞って ふわり舞って
はじまってゆくんだって


尺玉の夢がこぼれる
川は丸く 眼鏡越しに
夏の羽根があふれる
それを君は歌にする


尺玉の夢がこぼれる
川を遥か 凝らした水面
夏の羽根を読みとく
君の歌は花火に 花火になる


どこにもあって どこにもない花の背丈の昼みたいだ
空回りに歩く一人でも
闇夜の川につづく流れを
ふわり縫って ふわり縫って
夏になってゆくんだって


尺玉の夢がこぼれる
光は 向こうの地平に
軌跡の糸を描いて
ひらめく君は


火花に耳を澄まして
川の遥か 凝らした
夏の羽根のミラクル
歌が花火に 花火になる


尺玉の夢がこぼれる
川は丸く 眼鏡越しに
夏の羽があふれる
それを君は歌にする


尺玉の夢がこぼれる
川を遥か 凝らした水面
夏の羽根を読みとく
君の歌は花火に 花火になる




閲覧ありがとうございます

今回は、おはよう と目が覚める様子をイメージした "雲のスープ" からはじまり、"花火" で終わる構成も素敵だと思いました

砂上の楼閣 "♯" は、元々 "砂上の楼閣" という詞があって、同じテーマで別の世界線を描いていることから "♯" と付けています


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