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徳永 虎千代/フルプロ農園

法人名/農園名:株式会社フルプロ/フルプロ農園
農園所在地:長野県長野市
就農年数:7年
生産品目:りんご類(シナノリップ、秋映、シナノスイート、シナノゴールド、サンふじなど)を中心に複数品目の果樹(ネクタリン、ワッサー、信州桃、梨、シャインマスカット、小布施栗、クルミ、加工用あんずなど)、りんごの加工品(ドライアップル、バタージャム、ジャム、ジュース、シードル、リンゴ用のシナモンスパイス)
HP:https://frupronouen.thebase.in/

no.9

台風被害を乗り越えて。放棄地ゼロを目指す若きリーダー!

■プロフィール

 リンゴの名産地・長野県でも、「アップルライン」と呼ばれる地帯で最初期に入植した農家の4代目として生まれるが、父とは離れて暮らしていたため、農家の出身だと知らずに育つ。

 長野商業高校に進学して甲子園を目指し、卒業後は地元のトヨタの下請け工場に就職。この時に初めて工場近くにある父のリンゴ畑について知り、「あとを継いで欲しい」と頼まれて就農を決意。

 21歳で長野県立農業大学校に入学し、農業経営コースで果樹を専攻。シナノスイートやシナノゴールド、ナガノパープルなどの品種を開発した研究施設に入って、2年にわたり、栽培を学んだのち、就農。

 研修先で出会った雇用と高品質栽培を両立させている農業法人の経営者を目指して、25歳で法人化。 27歳になった2019年には、台風の影響で千曲川が氾濫し、畑を含む周辺一帯が浸水し、水害に浸かる危機に…。

 一時は閉業も考えたが、水害から逃れた2割のリンゴを産直サイトを通じて2週間で完売。

 長野の惨状を知ったフランス在住の神谷隆幸シェフらの呼びかけによって、被災地のリンゴを使って、応援レシピを考える「#CookForJapan」が誕生。シェフとの交流を通じて、2022年には七味唐辛子会社「八幡屋磯五郎」と一緒に、リンゴスイーツにかけるシナモン七味を開発し、注目を集める。

■農業を職業にした理由

 高校を卒業後、トヨタの下請け工場でフォークリフトの部品作りなどに携わっていた時に、顔が見えないお客相手に、自分が機械のどの部分を作っているかわからなくなる仕事に疑問を抱くようになり、父が引退するタイミングで家業を継ぐことを決意する。

 農業大学校でリンゴなどの果樹栽培を学んだのち、研修先の東北地方で、従業員を雇用しながら、一つ一つ丁寧なリンゴ作りを両立させている農業法人の経営者に出会う。

 彼が言った「農業はアートだ」という言葉に感銘を受け、彼を目標にした生産効率をはかり、大規模化を目指す農園経営を実現しようと就農へ。その直後に、高齢化や市場価格の低迷で廃業する農家が多い現状に直面し、「耕作放棄地を減らして地域を活性化させなければならない」という気持ちを抱いて、25歳で法人化。

 販路を従来の農協出荷から見直して、積極的に拡大を進めるとともに、高密植わい化栽培を導入して、省力化と反収をアップするなど、農業経営を改善するための課題に挑戦中だ。

■農業の魅力とは

 父の代までは農協に出荷していましたが、就農してすぐに、多くの農家が経営状況を十分に把握しておらず、慢性的に経営難に陥っていることに気づきました。

 手間をかけて品質の良いリンゴを作っても、市場出荷では買取価格が低いので直販に切り替えました。お客さんの声に耳を傾けることで、消費者が必ずしも高級品を求めているわけではないこともわかりました。

 販路の見直しに伴って、生産面でも効率化を図るため、「葉とらずりんご」に力を入れています。収穫まで葉を残すことで光合成量が増えて、糖度が上がる一方、見た目が悪いので一般的な小売店では扱ってもらえませんが、ヨーロッパでは当たり前の方法です。

 さまざまなお客さんとつながるために、日ごろからSNSでの情報発信や農園体験に力を入れていますし、リンゴ農家としては初めてクラウドファンディングにも挑戦しました。

 2019年の浸水被害の復興プロジェクトを通じて交流するようになった神谷隆幸シェフとは、七味唐辛子会社を巻き込んで、「林檎スパイス」を開発しました。

 農業はすべての仕事を自分でこなすから「百姓」だと言われてきましたが、自分一人でできることは限られていますから、つながったご縁を大切にして、多くの人と協力することで、従来はできなかったことを実現させていきます。

■今後の展望

 就農当初から、耕作放棄地をゼロにするため、担い手がいなかったり、引退した農家から農地を借り受けて、それまでこの地区では浸透していなかった「高密植わい化栽培」をいち早く取り入れました。

 これは、リンゴの脇枝を誘引して下げることで、横に広がらなくなり、作業が楽になるため、初心者や体力のない高齢者や女性にも栽培しやすく、初生りまでの期間が短いので、早くから収益化がはかれる農法です。

 誰でも安心して挑戦できるダイバーシティ農業を目指すことで、多くの人材が活躍し、地域活性化につなげたいのです。

 次は、高密植わい化栽培技術を進歩させて、3ヘクタールくらいの広さで作りたいと考えています。若い人たちを中心に果物消費が減っているのが、生産地としての課題です。

 スパイスを開発したのは、リンゴの可能性をもっと広げ、新しい価値を創出したかったから。生産者と消費者を結びつけるために、海外進出やカフェ経営も計画しています。

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