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【歴史の話】どうする大河ドラマ

 先週書いた記事どうするNHKからヒントを得て、「もし筆者が理想の大河ドラマを創るとしたら、どうする?」と考えて大筋をプロットしてみました。


はじめに

 拙記事「どうするNHK」では、"「新 三河物語(宮城谷昌光)」を原作にして、主役の大久保忠世おおくぼ ただよ役は「どうする家康」と同じ小手伸也さんを起用したら面白い"と書きました。

 しかし後日筆者は考え、「小手さんはどちらかと言えば、家康役にピッタリなのではないか?」と思い直しました。
 その他にも「この武将はこの役者がいい」というアイデアが頭にあるため、整理してつなげてみようと思ったのが経緯です。

配役

信長

 個人的に、織田信長にもっともふさわしいと思う役者は13代目市川團十郎さんです。
 すでに海老蔵のときに「おんな城主直虎」で信長を演じています。

 説明は不要でしょう。整った顔立ちと、天下人の威圧感と、気品のある舞い。これだけで十分です。

秀吉

 筆者にとって意中の秀吉は香川照之さんです。これも説明はいらないでしょう。
 数々の「どうする?」を抜群の行動力と大げさなパフォーマンスで乗り切った秀吉には、香川さんのダイナミックな演技が合うと思います。

 香川さんは、「利家とまつ」で秀吉を演じています。

家康

「はじめに」で書いたように、小手伸也さんを起用してみたい。
 若いころの律儀な田舎武士の雰囲気と、晩年のふてぶてしい貫禄と、両方を兼ね備えているように思います。

年齢の問題

 ここで一つ、やっかいな問題があります。
 史実では「信長(1534年生まれ)>秀吉(1536 or 37年生まれ)>家康(1542年生まれ)」の順で年上ですが、映像作品では俳優の実年齢がなかなかこの通りになりません。
 信長が精悍で若々しいイメージなのに対して、秀吉は苦労人で晩年は老害化するイメージのため、年配の俳優が起用されがちです。家康は、前半生の律義者と後半生の狸親父の、どちらにフォーカスするかで二極化します。

  • 2014年度「軍師官兵衛」では、信長=江口洋介(47)、秀吉=竹中直人(58)、家康=寺尾聰(67)

  • 2016年度「真田丸」では、信長=吉田鋼太郎(57)、秀吉=小日向文世(62)、家康=内野聖陽(48)

  • 2020年度「麒麟が来る」では、信長=染谷将太(28)、秀吉=佐々木蔵之介(52)、家康=風間俊介(37)

  • 2023年度「どうする家康」では、信長=岡田准一(43)、秀吉=ムロツヨシ(47)、家康=松本潤(40)

(敬称略。数字はいずれもその年の誕生日時点での満年齢。)

 筆者は、なるべく俳優の年齢差を史実と会わせたい派なのです。今のところ、香川さんが1965年生まれなのに対して、市川さんは1977年生まれ、小手さんは1973年生まれです。市川さんだけが突出して若い。

信長役非公開オーディション

 そこで、60歳前後の著名な俳優さんたちを候補に、脳内オーディションを行いました。
 「デ、アルカ」「是非ニ及バズ」としゃべってもらったところを想像して、信長らしさを評価。
 最も無機質無慈悲な「デ、アルカ」「是非ニ及バズ」になったのが、中井貴一さん(1961年生まれ)でした。

 どうやら映画では一度演じているようですが、南蛮風の陣羽織ではなくて、木瓜もっこうの家紋の入った和服の羽織袴が似合うと思います。

主人公

 さて、主人公です。この天下人の三人に関わって、歴史上重要な仕事をして、まだ大河ドラマの主人公になったことのない人物。
 さらには、NHKで創る以上は、地方局が関わって観光の起爆剤にしたい。できれば、日本の複数の都市で活躍した人物がよい。

 そうして考えていくうちに、いくつかの武将が候補が挙がり、そして消えていきました。

候補1:加藤清正

 名古屋と熊本の両大都市が舞台になり、秀吉と家康との縁も深い。しかし、信長との縁はほとんどない。
 何より、朝鮮出兵のシーンを描かざるを得ないため、世界を相手にコンテンツを売りたいNHK的にはまずい。

候補2:羽柴秀長

 原作には「豊臣秀長 ある補佐役の生涯(堺屋太一)」という名著がある。

 しかし、堺屋太一先生はすでに秀吉が大河ドラマ化されているので、既視感がありそう。
 つまり、史実通りにすれば信長や家康と共演するシーンは秀吉自身が独占することになり、どっちが主役か分からなくなる。秀長はつねに留守を守っていたので。

候補3:長曾我部元親ちょうそかべ もとちか

 原作は「夏草の賦(司馬遼太郎)」があるが、刊行当時と比べて、織田政権との関係についての研究が進んでしまい、時代遅れになっている。

 そして、本拠地の高知県が、幕末の志士の売り出しには熱心でしょうが、長曾我部の売り出しに力を入れているのかどうかが怪しい。

候補4以降:前田利益(慶次郎)、鈴木重秀(孫一)、、、

 それぞれ、「一夢庵風流記(隆慶一郎)」「尻啖え孫市(司馬遼太郎)」などの面白い原作小説はある。
 しかし、彼らのような「かぶいた」武将は歴史的に重要な人物ではなく、「こんな面白い人を主人公にした娯楽作品を創ったぞ」という自己満足で終わるような気がする。

最終候補:高山重友(右近)

そして最後に残ったのが、この高山重友(ジュスト・右近)です。

 最も重要なキリシタン大名の一人であり、歴史的に果たした役割は大きい。
 荒木村重の謀反を通して信長との関係があり、秀吉には禁教を迫られ、家康からは国外追放を受けるため、天下人の三人全てと絡みます。

 少なくとも、関西のベッドタウン高槻市と、北陸の中核都市金沢市の二都市での協力が期待できる。
 何ならフィリピンに「大河ドラマ館」を作ってもよい。

 主演は「軍師官兵衛」でも右近を好演した生田斗真さん。そうすると、黒田孝高(シメオン・如水)役は岡田准一さんで決まりですね。

原作

 残念ながら筆者はいい原作小説を知らないので、できれば安部龍太郎先生に書き下ろして頂きたいです。
 吉川英治の小説があるようですが、筆者は見たことがありません。遠藤周作は右近を書いていないかな?(キリシタン大名なので)・・・と思って調べたら、「反逆」という小説の主要人物にはなっているようです。

テーマ

 信長が(もしイエズス会が黒幕だとしたら)最後には手を切り、秀吉が宣教師を追放し、家康が海禁に政策転換してまで「日本にキリスト教を布教させたくなかった」のはなぜか。
 それは逆説的に「宣教師たちが命をかけて日本に来て伝えたかったこと」でもある。神の下での平等という思想のためでした。
 それを右近は、「(主君への)忠誠心よりも(神への)信仰を選ぶ」ことで明確にしました。

 のちに江戸幕府は朱子学を採用して、「人と人の間には必ず何らかの上下の差があり、目下が目上に従うことで秩序が保てる。(つまり、分をわきまえろ。)」と教えて、封建制の存在理由としました。その影響力は強く、21世紀そして令和の今となってもひきずっています。

 そういう意味では、もしも幕末明治を舞台にするなら、「胡蝶の夢(司馬遼太郎)」を原作にしたいですね。

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