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2022年7月の記事一覧

【詩】わたしの住人

私の脳や
心臓や
体中の血管の中に
たくさんの人が住んでいて
ときどきお祭があったり
静かに祈ったりしている
そのせいで私は
浮かれたり
悲しくなったり
あなたを美しいと思ったりするのだろう

【詩】朝になるといなくなる星

ずっと見つめていないと、消えてしまいそうだった。
ずっと見つめていたところで、どうせ消えてしまうんだけど。
「朝になるといなくなる星みたいでしょう。」
だったら星の寿命ぐらい、長生きしてくれたらいいのに。
朝になっても、私が死んだあとも、ずっとそこで、光っていて。

【詩】泥の舟

泥でできた舟の
あたたかい匂いと
やわらかい感触
その中で眠っていたかった
沈むまでの間だけでよかった

【詩】宇宙人の足跡

この星を隅から隅まで逃げ回って
結局元の場所に戻ってきた時
隕石が落ちて津波が星を覆った
それからその波が全部凍って
私の足跡は氷漬けにされた
逃げ回ったことも
戻ってきたことも
誰も覚えていないから
足跡は宇宙人のものだということになり
晴れて私は宇宙人となった

【詩】夏の始まり、春の終わり

無知と無関心と
とびきりの無力でもって
私はあらゆる罪に加担している
いつも手遅れになるのを待っていた
そのほうが楽だから

本物の魔法陣はあくまでもさりげなく
私たちを包囲している
誰も見ていない空にだけ架かる白黒の虹
綺麗事しか言わないと決めた君が
削り出す命は南極の氷ぜんぶよりも重い

今ならまだ
好きな場所に地平線を引けるのだそうだ
どうか君の喉元を通っていくものが
美しく柔らかで
澄みき

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【詩】この部屋から宇宙の果てまで

王子様が「絶望して死ね」と言った
みんなも真似してそう言った
よく見ると王子様は人形だった
だってあんな細い体に
内臓が全部入るはずがないから
歌うたいが
大好きな食べ物を食べたくない時の気持ち
について歌っていた
日曜日の記念公園には
平等に太陽の光が降り注ぐけど
皮膚病になるのは決まってあの町の人
本物の銃声を知ったから
この部屋から宇宙の果てまで
届く普遍を探してる
歳を取っても
若いまま死

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