「陸橋」(作:西田夏実)
陸橋の階段を上っていると、向こうから中学生くらいの男の子達が歩いてくるのが視界に入った。はじめは思い出せなかったのだが、集団の中の一人の正体がわかったとき、金杉拓人は回想した。
三年前の今頃は最悪だった。音大に進むことを志していて、それに向けて一生懸命にピアノの練習をしていた高校一年生の頃、二つ上の姉がレベルの高い国立大学に合格してしまったことが始まりだった。
(確かにあんた、成績はあんまり良くないけれども、努力すればどうにかなるものよ。だから、お姉ちゃんを見習って頑張