西田夏実

小説や脚本、エッセイ的なものを書きます。◆演出、脚本、たまに照明と役者◆朗読集団「灰色…

西田夏実

小説や脚本、エッセイ的なものを書きます。◆演出、脚本、たまに照明と役者◆朗読集団「灰色ネコ」主宰◆愛猫はベンガルの「奈々」2015.1.21生・マンチカンの「葉知」2016.8.22生◆自転車の名前は「きらめきソルト号」◆学芸大B国・萬葉ゼミ・教材研出身

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自己紹介

はじめまして、西田夏実と申します。 夏に実(みの)るで、夏実です。 夏にうまれました。 さて私は、朗読集団「灰色ネコ」という、私一人しかメンバーのいない組織(?)の主宰を務めております。 昔から文章を読んだり書いたりするのが好きで、大学では教育学部で万葉集の勉強をしていました。 この時世に自分の環境を省みて、小説を書いたり、灰ネコの脚本を書いたり演出をしたり...そんな風に過ごしていきたいと、考えました。 そんなわけで、今回作成したこちらのnoteでは、過去のものを

    • 「緑の藤の下で」(作:西田夏実)

      石坂奈×朧小太郎BLドラマCD企画 「緑の藤の下で」 作:西田夏実 【出演】 石坂奈 朧小太郎 【登場人物】 僕(石坂奈)…五年付き合った彼女と別れることになり、思い出の地に旅行しに来る。 私(朧小太郎)…旅先で出会う、ミステリアスな青年。

      有料
      300
      • 国語科教員になりたかった私の話6「妹の手術」

        予備校にも通い始め、将来のことを考えてとてもわくわくしているうちに2月になった。  その日私は、当時所属していたテニス部の仲良い女の子と共に、部員皆で作ったお揃いのカバンが出来上がったという連絡を受け、お店に直接受け取りに行き、配ったりしていた。かっこかわいいカバンで、とても気分よく帰宅した。  帰ると、明らかに両親の様子がおかしかった。二人ともダイニングの椅子に座って、空気がとても重かった。  私が友達とお気楽な時間を過ごしていたその日、実は妹の心臓の根治手術だった。

        • 国語科教員になりたかった私の話5「担任ガチャ」

           時は流れて、高校一年生の四月。  私は、そのまま附属高校に進学した。  高校になると、クラスは植物の名前ではなくアルファベットになった。 私はB組。 担任は、体育科のM先生。 さわやかで熱心な先生だった。 T先生はお隣のA組の担任。 まさか、T先生が担任になる可能性まで秘めていたとは……しかしそのガチャを引き当てられなかった。 国語の担当も違う先生だった。不運すぎる。  入学して間もないある日の放課後、正面玄関を降りるとT先生に会った。  そのまま事務室の前で立ち話

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        自己紹介

          祖母への手紙

           28年間生きてきて、祖母に暑中見舞いや年賀状は送ったことがあるものの、手紙を書いたことはないんじゃないかと思う。  だから、今日、初めて手紙を書いた。  きっかけは、たぶん祖母が携帯を使えなくなったこと。  祖母は元英語科の教員で、海外旅行にも一人で行ってきてしまうような人だった。  歳をとっても同じ年齢のおばあさんよりは元気に活動していて、父が携帯を持たせたときもあっという間に使いこなせるようになった。  だから、つい最近までメールでやり取りができたのだ。  しかし

          祖母への手紙

          「万葉集」を読んでみたい人のために

           大学時代に「万葉集」を勉強するゼミに入り、卒論も「万葉集」で書いた私。  その時に教えてもらったり自分で買った書籍の中から、「万葉集」をはじめて読むという方のためにオススメのものをまとめてみました。  令和が始まってもう一年が経ってしまいましたが、ご興味のある方は是非ご覧ください。 「万葉集」はどれを読めばいいの? 色んな出版社から出ている「万葉集」。  じゃあその中からどれを選べばいいの?という方に、こちらをオススメします。 ★中西進『万葉集』(講談社、1978

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          国語科教員になりたかった私の話4「西田袋」

           二学期になると、国語の授業で文法を扱うことになった。  私はそれまでなんとなく文章を読んでいたので、この文法にとてつもなく苦手意識を覚えてしまった。  しかし、苦手なことからすぐ目をそらす子どもだった私は、しばらくそれを放置した。 ある日、実家に帰省していた父から連絡があった。 肺がんで祖父が亡くなったということで、次の日すぐに祖父母の家に新幹線で向かうことになった  火葬が終わると母と妹はすぐに帰ったが、私は事務手続きをする父について残ることにした。半分以上サボリである

          国語科教員になりたかった私の話4「西田袋」

          国語科教員になりたかった私の話3「山の学校を経て」

           端的に言うと、拗ねていた。  昨年度まで面白くて楽しかったはずの国語に興味を持つことができなくなっていた。  理由は単純。  担当がK先生ではなくなったからである。  普通に考えれば、担任でもない限り続投ということはないのだが、十代前半の私は担当教員が変わるということをまったく想定していなかったのである。  最後だからということでK先生は本を配ってくれたはずなのに、愚かだ。  中学二年生になったH組の国語科担当教員は、T先生だった。  大学院を卒業後この学校に着任して三

          国語科教員になりたかった私の話3「山の学校を経て」

          お仕事のご依頼について

          こちらをご覧いただきありがとうございます。 お仕事についてなのですが、 ・俳優、声優 ・作家(脚本、小説) ・演出 この三部門で受け付けております。 ギャランティについては応相談です。お仕事をする際は契約書をご用意ください。 ご依頼やご不明点がある方は、下記のメールアドレスまでお気軽にご連絡ください。 fragile.natsu@gmail.com よろしくお願いいたします。 朗読集団「灰色ネコ」 西田夏実

          お仕事のご依頼について

          国語科教員になりたかった私の話2「K先生がくれた本」

           さて、そこそこの受験勉強を終え、無事に第一志望校に進学することができると、環境が激変した。  仲の良かった友達は全員小学校からそのまま上の中学に上がってしまったため、本当の一人ぼっち生活がスタートしたのである。  そしてさらにストレスフルな環境に仕立て上げたのが、「内部 vs 外部」対立だった。  初等学校から進学してきた一部の生徒が、中学受験で入ってきた生徒(外部生と呼んでいた)を邪険にするというもので、いま考えるとかわいいものだが、当時の私にとっては多少頑張った受験

          国語科教員になりたかった私の話2「K先生がくれた本」

          国語科教員になりたかった私の話1「小学校の独特な授業」

           小さい頃から本を読むのが好きで、生まれつき心臓病を持つ妹が入院している間、十八歳未満は病室に入ることができなかったため、小児科前のエレベーターホールに置いてあるベンチに一人で座って読書をしていた。  両親は「教育は荷物にならない」と言って、本を買うお金は惜しまず、私達姉妹が読みたい本は何でも買ってくれた。  高校までエスカレーターで進学できる小学校に通っていたものの、大学附属の中学校を目指して、小学校三年生になると私は近所の個別指導の塾に通うことになった。  そこで勉

          国語科教員になりたかった私の話1「小学校の独特な授業」

          「アシメントリー」(作:西田夏実)

          演劇集団LGBTI東京 十月一日「ゲキコミュ」朗読台本 「アシンメトリー」 作・演出:西田夏実 【出演】 飯村勇太 宇田川佳寿記 【登場人物】 兄(飯村勇太) 弟(宇田川佳寿記) 兄  僕は小さい頃から、近所に住む一人の女の子と弟の三人でよく遊んでいた。お互いのことをよく知って、それでも相手を受け入れられるという強い絆。それはとても幸せなことである。それが一番、幸せなことである。 弟  ずっと一緒にいるからこそ、喧嘩をする。その度に、より一層相手に近付いたと感じるし

          「アシメントリー」(作:西田夏実)

          「陸橋」(作:西田夏実)

           陸橋の階段を上っていると、向こうから中学生くらいの男の子達が歩いてくるのが視界に入った。はじめは思い出せなかったのだが、集団の中の一人の正体がわかったとき、金杉拓人は回想した。  三年前の今頃は最悪だった。音大に進むことを志していて、それに向けて一生懸命にピアノの練習をしていた高校一年生の頃、二つ上の姉がレベルの高い国立大学に合格してしまったことが始まりだった。 (確かにあんた、成績はあんまり良くないけれども、努力すればどうにかなるものよ。だから、お姉ちゃんを見習って頑張

          「陸橋」(作:西田夏実)