「万葉集」を読んでみたい人のために
大学時代に「万葉集」を勉強するゼミに入り、卒論も「万葉集」で書いた私。
その時に教えてもらったり自分で買った書籍の中から、「万葉集」をはじめて読むという方のためにオススメのものをまとめてみました。
令和が始まってもう一年が経ってしまいましたが、ご興味のある方は是非ご覧ください。
「万葉集」はどれを読めばいいの?
色んな出版社から出ている「万葉集」。
じゃあその中からどれを選べばいいの?という方に、こちらをオススメします。
★中西進『万葉集』(講談社、1978年)★
文庫本なので、持ち歩きしやすいのが最大の長所です。
中西進先生という方が、本文に加えて、全ての歌の訳と注釈を書かれています。
「万葉集」は校異と言って、後世に残る「万葉集」の写本に書かれている文字を比較します。
中には「これ何て書かれてるん?」「こうでしょ」「いやこっちでしょ」といった感じで、諸説ある箇所もあったりします。
研究者は独自の観点で選び取っていき、本文を完成させます。つまりこの講談社文庫で出版されているものは、「中西進先生が考える万葉集の姿」ということになります。
ちなみに中西進先生は、「令和」を考えた方なのではないかと言われていますが、ご本人は否定されています。
本文を読むだけなら写真上段の四冊だけで足りるのですが、写真下段の「万葉集事典」も手元に置いておくと、本文を開きながら事典を見ることが可能になります。
★新日本文学全集『萬葉集』①~④(小学館)★
箱に入っている、ハードカバーのもの。
大学や図書館に行くと置いてあったりします。
私は専門で勉強していたので四冊揃えましたが、一冊5000円以上するので(つまり四冊で20000円オーバー)、読書を楽しみたいだけなら重くて高いだけなのでオススメしません。
中西先生の『万葉集』の注釈や本文と比較したいなら持っていてもいいかもしれません。
また、ずっしりと重く、写真のとおり表紙もオシャレなので、本棚に飾りたい方にはとてもオススメです。
「万葉集」の参考書
それではここからは、『万葉集』の基礎知識を手に入れられる、読みやすい書籍をご紹介いたします。
★多田一臣 編『万葉集ハンドブック』(三省堂、1999年)★
「万葉集」を読む前に一読するのをオススメするのが、この一冊。
様々な角度から、テーマ毎に「万葉集」の魅力が紹介されています。
これを読めば、「万葉集」についてのわからない用語は基本的にはなくなります。
また、最後に索引が付いていたり、表紙にも項目が書いてあるため、本文を読む際に傍らに置いておくと、簡単に調べることができます。
★鈴木日出男『万葉集入門』(岩波書店、2002年)
ざっくりとしたテーマで、カバーしている範囲は狭いものの、各々の項目は『万葉集ハンドブック』より詳細に綴られています。
特に、主要歌人についてはこちらの本を読むのがオススメ。
事典代わりにというよりは、専門書として読み切るということにした方が良い一冊です。
和歌の参考書
「万葉集」以前に、そもそも和歌がよくわからない(和歌だけに)……という方のためのコーナーです。
中学高校の古文で和歌に触れますが、覚えることも多く苦手意識を持つ人は多いはず。
私もその一人です(今でも)。
今から紹介する書籍は、そんな人にも寄り添いながらやさしく解説してくれるので、ぜひ読んでみてください。
★谷知子『和歌文学の基礎知識』(角川学芸出版、2006年)
和歌というと、枕詞とか掛詞とか、用語と機能を覚えるばかりなイメージがあるようです。
こちらの本では、そういった用語解説ももちろんありますが、和歌と文化・時代や自然の関係、どういったものが詠まれるのか、などといったことをわかりやすく説明してくれています。
和歌は人が詠んでいるものなので、人にまつわるもの(生活や四季、時代)の影響を大きく受けるはず。
今まで和歌そのものしか見ることができなかった自分の意識が、和歌をとりまくものにまでひろげることができるのを実感できます。
★渡部泰明『和歌とは何か』(岩波書店、2009年)
『和歌文学の基礎知識』よりは少しだけおかためな感じの一冊です。
が、被らないテーマの話が載っているので、『和歌文学の基礎知識』を一読してから、おさらいをしながら読む、というのがオススメです。
より和歌への理解が深まります。
★和田純一『読解古文単語』(旺文社、2003年)
大学受験のときに使っていたものです。
「万葉集」の時代は、受験古文単語とは少し言葉遣いが違う部分があったりするのですが、重なる部分も多いので、損にはならないと思います。
この本の良いところは、ただ暗記するのではなく、それぞれの語の大元の意味が載っていて、似たような語をまとめて感覚で理解できるようになるところです。
とは言え暗記ジャンルですので、私が高校生の頃にやっていたのは、この一冊を七等分し、一日一等分、ざっと目を通します。そうすると一週間で一冊丸々目を通したことになります。これを何週間も繰り返しました。
ポイントは、一日で完全に丸暗記しようと躍起にならないこと。それをすると面倒くさくなって続かなくなります。
おわりに
「万葉集」は教科書に載録されているものの、触れる機会は「古今和歌集」等に比べて極端に少ないようです。
漢字ばかり、慣れない古語ばかり、しかも膨大な歌数の「万葉集」はとっつきにくい印象があるかもしれません。
オススメの読み方は、まず上記の本をどれか一冊読んでみて、面白そうなテーマや歌人を見つけたら、それに関連する歌に触れてみるというものです。
何冊も紹介してしまいましたが、気になる一冊をお手に取っていただければなと思います。
(大学を出てから数年が経ってしまい、おぼろげな記憶も多いです。この記事でもし間違いなどがありましたら、ご指摘いただけると幸いです。)
ここまでご覧いただきありがとうございました。
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