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そしてモヒカン新聞は1日で廃刊になった


毎日note更新25日目。

この前バックトゥーザフューチャー3を観た影響でこんな話を。

みなさんは過去に戻って何かを変えられるならどの時に戻りたいだろうか?

中学時代、高校時代、大学時代、社会人になって以降など人それぞれ色んなタイミングがあると思う。

今が最高だから戻って変えたい事なんてない、こんな人もいるかもしれない。


僕にはハッキリとある。

中学1年生の1学期、友人4人で新聞係になった日だ。

過去に戻れるなら僕はこの日をやり直したいと思う。

この日をやり直せたらその後の人生も変わったはずなのである。

この日に一体何があったのか。

そして何を変えたかったのか?

今日はそれを書いていこうと思う。



1997年6月。

中学1年生の初夏。

僕は焦っていた。

クラスで人気者になるはずが全くなれていない。

人気者どころか果てしなく存在感が薄い。

野球部やバスケ部はすでにイケてる感じが出始めていた。

このままではまずい。

僕はここらで一旗あげる事を狙っていた。


ある日クラスの係に新しい係が加わる事になった。

「新聞係」だ。

僕は閃いた。

ここで超絶オモシロ新聞を作ればクラスの人気者になれるのではないか。

女子が集まってくるのではないか。

僕は周りにいた友人3人を誘って新聞係になった。


新聞係の4人のメンバーは

うだつのあがらないノッポ、うだつのあがらないメガネ、うだつのあがらないセンター分け、うだつのあがらないニキビデブ(にっしゃん)の4人だった。

全員うだつがあがらないが、まだ諦めてはいなかった。

みんな一旗あげようとしていた。

そんな4人が集まって作る新聞、これは面白くなりそうである。

放課後、まずはみんなでどんな新聞を作るか考えた。

新聞係に求められている事はもちろん基本は「学級新聞」である。

クラス内で起こった事を新聞にする、それが基本だった。

でもそれじゃあ普通すぎる。

面白くない。

一旗あげられない。

僕達は今までにない斬新な腹の底から笑える新聞を作りたかった。

センター分けが言った。

「1つのテーマに特化した新聞はどうやろか?」

それを聞いた瞬間、僕の頭に稲妻が走った。

に「モ、モヒカン、、、」

3人「え、何て?」

に「モヒカン新聞!モヒカン新聞ていうのはどうやろ!?」

3人「モヒカン新聞!?」

に「そう!モヒカンに特化した新聞!」

3人「ギャハハハ!何やそれ!面白そう!ギャハハハ!」


モヒカン新聞が誕生した。


一瞬で全員一致で僕達が作る新聞はモヒカン新聞に決まった。


みんなしばらくモヒカンという言葉に笑っていた。

に「モヒカン笑モヒカン笑」

3人「モヒカン笑モヒカン笑」

モヒカンという単語がなぜか面白くて仕方がない。

みんなモヒカンと言うだけで笑い転げていた。

僕達はモヒカンズハイに突入していた。


モヒカン新聞の内容はトントン拍子で決まっていった。

「今月のモヒカン」

「突撃!隣のモヒカン」

「モヒカンポエム」

「天声モヒカン」

「モヒカン4コマ漫画」


ギャーハッハハ!!

あ、あかん、面白すぎる!!

僕達はまた笑い転げた。


まずは右上に新聞名を書いた。

太字で


モヒカン新聞


ギャーハッハハー!!

涙出てきた!めっちゃおもろい!


そして新聞の外枠を全てモヒカンの文字で埋めた

モヒカンモヒカンモヒカンモヒカンモヒカン


ギャーハッハハー!!

あかん、苦しい!死ぬ!

僕達はモヒカンで笑い死にしかけた。


先程決めた内容はそれぞれが1つずつ作成していった。

みんなヒイヒイ笑いながらモヒカン記事を作っている。

僕は4コマとポエムの2つを担当した。

4コマは散髪に来た普通の人が散髪中寝てしまい気付いたらモヒカンになってるという内容だった。

それを見た3人は

「ヒャーハッハハハ!!たまらん!たまらん!」

大絶賛だった。


そろそろ現代の僕が一言言っておこう。

何がおもろいねん。


ポエムもすぐに出来た。


あなたがサイドを剃ってくれたから今日はモヒカン記念日


ヒャーハッハハハ!!

また3人が爆笑した。


もう一度現代の僕が言おう。

何がおもろいねん。


こうしてモヒカン新聞は完成した。

みんな笑いすぎて涙を流していた。

教室の後ろにある掲示板の1番目立つ場所にモヒカン新聞を貼った。


みんなこれを見て爆笑するに違いない。

明日から俺達は人気者だ。

明日が楽しみだ。


期待に胸を膨らませそれぞれ家路についた。


翌日。

僕はワクワクしながら登校した。

もうすでにモヒカン新聞の周りに人だかりが出来ているのではないか。

みんな笑い転げているんじゃないか。

どのタイミングで製作者として喝采を浴びるのか。

色んな事を考えながら教室のドアを開けた。


あれ?

新聞の周りに人がいない?

あれれ?


先に3人は登校していた。

僕はみんなに聞いた。

「モヒカン新聞どうなってんの!?」

ノッポが言った。

「誰も見向きもせえへん」

いやいやいや。

そんなはずはない。

みんなまだ気付いてないだけだ。

そう自分に言い聞かせた。


1限終わりの休み時間。

1人の男子生徒がモヒカン新聞を見ている。


よし!

これであいつが笑えば口コミで広がっていくはず!

僕達は期待した。


男子生徒「、、、」

男子生徒は首を傾げて歩いて行った。


2限終わり。

別の男子生徒がモヒカン新聞を見ている。


よし!今度こそ!


男子生徒「、、、は?」

男子生徒は険しい顔をして歩いて行った。


3限終わり。

今度は女子数人がモヒカン新聞を囲んでいる。


とうとうきた!

女子達がモヒカン新聞を見ている!

男子にはイマイチだったが女子にはウケるはず!

これで俺達は人気者だ!


僕は女子達がいる場所に少し近づいた。

すると声が聞こえてきた。


「え、何これ?意味わからんねんけど。え、キモ。何なんモヒカンて?全然おもんないやん!これ作ったん誰なん?」


僕は人生で一番の回れ右を繰り出してその場を離れた。


この女子達の会話を3人に報告するとみんな次第に事態を理解出来てきた。

僕達は思った。



さてはこれめっちゃスベってるな?



自分達がスベっていると自覚してからは急激に羞恥心が襲ってきた。


え、恥ずかし!

確かによう考えたらモヒカンの何がおもろいねん。。。

変なツボ入ってもうてた。。。

作ったん俺らやってバレたらどうしよ!

人気者どころかめっちゃキモがられるぞこれ!


僕達は考えた。

そして行動した。


それぞれがモヒカン新聞の前に行き、じ〜と見て首を傾げた。

「え、何これ?何やモヒカン新聞て?」という顔をしてその場を離れた。


僕達はモヒカン新聞とは無関係のフリをしたのである。

4人とも"誰が作ったんですかこれ顔"をしながら歩いて行った。

僕達はモヒカン新聞を裏切ったのだ。

心が痛かった。

僕達はモヒカン新聞に心で語りかけた。


すまん、モヒカン新聞!

俺達は製作者だとバレたくないんだ!

こうするしかなかったんだ!

すまん!


そしてモヒカン新聞は1日で廃刊になった。



僕がもし過去に戻れるならどんな新聞を作るか考えている時に僕が

「モ、モヒカン」と言った瞬間に戻りたい。

そして「モ、」のタイミングでビンタしたい。

そしてこう叫ぶのだ。

「それ以上言うな!
お前がそれを言う事でこの先にどんな悲劇が待っているか分かってるのか!
おとなしく他の新聞を作れ!
例えば、パンチパーマ新聞なんてどうだ?」

そう。

僕はもし過去に戻れるならモヒカン新聞をやめさせてパンチパーマ新聞を作らせる。

そうすれば人気者の中学時代を送れたに違いない。



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