見出し画像

読書の旅② 暗幕のゲルニカ/原田マハ

アート小説との出会い

私は美術の造詣が深くない。
けれど絵を見るのは好き。
美術館に足を運び、展示されている絵を見て意味とかはわからないけれど、心動かされる作品に出会うのが楽しい。
そんな話を知人としていたら、

「歴史が好きで美術が好きならきっと面白いと思いますよ」

とこの本を紹介してくれた。
これがアート小説(とあえてここではそう呼ぼう)という、今まで読んだことのないジャンルの本との出会い。

美術に詳しくない人でも、大抵の人間はおそらくパブロ・ピカソの名前や絵を知っている人は多い。
この小説は20世紀を代表する絵画、ピカソの〈ゲルニカ〉を中心に、彼が生きた激動の時代やこの絵が後世にとってどんな意義を残しているのかをギュッと詰めた1冊。
フィクションを多く含む小説仕立てで語られるゲルニカの美術史だと思う。

パブロ・ピカソ「ゲルニカ」(1937年)


臨場感あふれる史実たち

小説に登場する「史実」って、読者を物語に引き込む言わば「装置」だ。
その「史実」が忠実に描かれているほど、もしくは読者が深く知っているほど、吸引力は増していき、小説の伝えたいメッセージを明確にしていく。

『暗幕のゲルニカ』にも幾つかの史実が登場し、それらは全て「戦争」にまつわるものばかりだ。

【ゲルニカ】
1937年6月に完成させたパブロ・ピカソによる壁画サイズの油絵作品
パリ万国博覧会(同年開催)のスペイン館を飾る壁画を意図して製作された。

【ゲルニカ爆撃】
1937年4月26日、スペイン内戦中(1936年-1939年)にドイツ空軍がスペイン北部の都市ゲルニカに対して行った爆撃。戦史上初の本格的な都市無差別爆撃とされる。

【9.11事件】
アメリカ同時多発テロ事件、2001年9月11日にイスラム過激派テロ組織によってアメリカ合衆国に対する4つの強調的なテロ攻撃。
・ニューヨー州ニューヨークで1度目と2度目
→本作はこのワールドトレードセンターの件を作中に描いている。
・バージニア州アーリントンで3度目
・ペンシルベニア州シャンクスヴィルで4度目

【暗幕のゲルニカ】
国連のビルにかけられたタペストリーが2003年隠される。

国連本部の会見場

ちなみに私が1番引き込まれたのは、やはり「9.11事件」だ。

事件があった当時は、幼かったし、実際に見たわけではないが、あの事件をテレビのニュースで見た時の衝撃は今でも鮮明に思い出す。
目の前で崩れるビル、息をのむ父や母の表情を見て、とんでもないことが起きているんだと幼いながらに思った。

近年、ウクライナの侵攻やガザ地区の紛争など、戦争が再び身近になり、世界が不安が広がっている。
こんな時代だからこそ、この本を手に取って、『ゲルニカ』を見て「平和」について考えたくなった。

ピカソの『ゲルニカ』いつか実物をこの目で見てみたいな。


余談
『暗幕のゲルニカ』から繋がった他作品

『暗幕のゲルニカ』を読んで面白いなーと思ったもう一つの理由は、今まで見てきた他の作品に関連しているテーマが多かったことだ。
今回はこの2作品を紹介!

1.『NEVER SAY GOODBYE 』舞台/宝塚歌劇団

宝塚歌劇団宙組で上演されたスペイン内戦を題材にしたミュージカル。
2006年と2022年に上演されている。

2022年版

1936年。ナチス政権下のベルリンオリンピックに対抗してバルセロナで人民オリンピックが開かれる。取材に訪れた人気写真家ジョルジュは、リベラルな女性劇作家キャサリンと運命的な再会を果たし、二人は恋に落ちるが、やがてスペイン内戦に巻き込まれて行く。
ファシズムと闘う人々の愛と勇気が、「ONE HEART」をはじめとする数々の名曲で綴られる、ミュージカル大作。

宝塚歌劇団HPより

2. 『Midnight in Paris』映画/Woody Allen監督作

アートが題材になっている物語と言えば、過去に一度、映画を鑑賞したことがある。
大好きな俳優、オーウェン・ウィルソンとレイチェル・マクアダムスが出演していた『ミッドナイト・イン・パリ』という映画だ。

ミッドナイト・イン・パリ(2011)

1920年のパリに主人公がタイムスリップし、そこでヘミングウェイやピカソといった偉大な芸術家たちと出会うロマンティック・コメディだった。

しかし、当時の私はあまりこの作品を楽しめなかった。

というのも、前文で述べた通り私は美術に明るくなかったので、この作品に出てきたアーティスト名を聞いて「この作品の作家だなー」などの共通認識を共有できないまま映画が終わってしまったからだ。

『暗幕のゲルニカ』をきっかけにまた見直してみるのもいいなと思う。

その時はまた改めて👋

-2024年2月の読書-

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?