最近の記事

いきてるふたり

 私の祖父母は一緒にお風呂に入っていた。  今まで、洗濯に風呂水を使っていたのだがドラム式に変わってからは追い焚きをするようになった。私は2日目のお湯を使いたくないので、祖父母が先に入る。するといつもお湯がいろいろな色に変化している。  祖父は耳が遠くなってしまったので、祖母がうんざりしながらも大きな声を出している。  祖父が頑固にも毎食米を炊くので、祖母はいっぱい炊いて冷凍すればいいのにと愚痴を言っている。  祖母は72歳で胃がんのステージ4だった。  余命宣告された期限か

    • 感謝の言い訳

       友達が公務員試験に合格した。 1時間ほどドライブをしたのち、国道沿いのマクドナルドに立ち寄った。とりあえず合格祝いで奢ろうと思っていると、彼はすでに頼み終えていた。  彼が席を外している隙に、余分に買っておいたナゲットをカバンに忍ばせた。彼が帰ってくるとすぐに、なんか入ってるよ、と言われてしまった。お祝いであげたナゲットでさえもお金を払おうとしてくるので、本当にこれからも仲良くしたいと思いながら帰った。  正月に社会人の後輩と定食屋にいった。 食事が終わり彼が早くタバコが

      • 旅は始まるまでが一番楽しい

         旅って始まるまでが一番楽しいかもね。どこに行こうか悩んで、いろんな場所の情報集めたり、好きなアニメの聖地を目指してもいい。旅先が決まったらまた情報収集して、そこ行きたいあれ食べたいと思い巡らせたり、るるぶ買ったりして、安い宿に泊まって食べ物に使おうか、ちょっと奮発していい宿に泊まろうか。新幹線でいいかな。大学生なら早起きして始発かな。レンタカーはどう?贅沢に昼過ぎ出発しちゃお。 分単位でスケジュール決める?行き当たりばったり?なんならイエスマンみたいに空港に行って行き先決め

        • 夜にきのこ

           夜の街が好きだ。 カブで街灯の下を走る。  だいたい夜はちょっと感傷的になる。そうすると、いつの間にか遠くに来てしまうのだ。夏を通り過ぎたようだ。深夜のコンビニで急に引き戻される。時計の針は0時を指してる。  誰も知らない場所に行きたい。誰も知らない秘密を知りたい。 そんな得体のしれない思いを浮かばせながら、夜を飛んでいる。 この時間だけは一瞬の世界の醜ささえ越えてゆける、そんな気がした。 家へ帰ろう、夜が明けたら。アルコールのせいさ。   今はもう懐かしい、君と夏の夜の

        いきてるふたり

          日比谷野音 #2

           初めてが詰まっている。  日比谷野外音楽堂にライブを見に行ってきた。もちろん初めてだ。さらに、バンドのライブさえも初めてなので、他会場との比較ができない。日産スタジアムのアイドルのライブしか行ったことがない。  まず、リハーサルの音漏れがめっちゃ聴こえる。オードリー若林が、チャットモンチーの音漏れを聴いていた光景を巡らせた。  日曜日の霞が関と対照的に歪み響き渡った音楽。期待感を抉る。 C-12 118番、舞台向かって右側の客席全体が見渡せる画角だった。左からギター、ベー

          日比谷野音 #2

          青春は残酷だ。

           カラオケが苦手だ。  地元に帰ったときに、友人2人とカラオケに行った。その内1人が大事の後だということでそいつが好きなカラオケをオールナイトすることにした。  カラオケで夜のフリータイムを選択し、指定された部屋に入るとまもなく1人目が電目で曲を入れ、歌い始める。歌が終わる前に2人目が曲を入れ、間髪なく歌い始める。そしてまた終わる前に自分が曲を入れ歌う。これを何時間も繰り返す僕らのストロングカラオケが始まった。  この空間に甘えの文字はない。ただ、自分の入れた曲に向き合い、

          青春は残酷だ。

          タワマンから見える景色は地獄のような天国な地獄

           キリスト系の保育園に通っていた。 昼寝をしたり、昼ごはんのときになんとかなんとかアーメンと言って食べたりしていたような記憶は朧気にある。  圧倒的に鮮明に残っている記憶がある。 よく晴れた日にプールで遊んでいる。同じ組の子たちもいる。僕はプールから出て他の子達が遊んでいるのを見ている。なんとなく全身の筋肉に力を入れてみた。すると筋肉が震えだすのだが、全身を震わせているのでそれをみた保育園の先生が、「〇〇くんが寒そうにしてるからプール終わりー」と言ったのだ。「えー」とか「やだ

          タワマンから見える景色は地獄のような天国な地獄

          坂の上の蒼いアパート  #1

           風呂の排水溝の詰まりを取っていたら一日が終わった。 本当はもう少し寝ていたいのに、部屋にカーテンが無いせいで夜明けとともに起こされる。GW中は社員よりバイトをしていたので、GW明けの休みの日に排水溝を掃除することだけは決めていた。  そして今日、排水溝を掃除していたら一日が終わった。 家賃4万、大学のときに借りた家に棲み着いている。築40年の貸主がいなくなったアパートを今の大家さんが買って自らリフォームまがいのことをしたらしい。なのでところどころでDIY感が溢れている。  

          坂の上の蒼いアパート  #1

          生憎の雨かどうかはお前が決めることではないだろう

           軒下に雀の卵が落ちていた。落とされたというべきだろうか。 君たちはどう飛んだだろう。その殻を割ってこの世界を目撃したとき、君の目にはどう写っているだろう。鳥類としての生涯を全うしているだろうか。  僕が持ってきた虫を食べさせようとして、君がそれを拒否しても、許してあげたい。  飛ぶ練習をしようといって連れ出そうとして、君が飛びたくないといったなら、飛ばない生き方を考えよう。  一般的に独り立ちの時期だっていうのに、君がまだこの場所にいるなら、共に暮らし方を追求しよう。  休

          生憎の雨かどうかはお前が決めることではないだろう

          誰も見ないでくださいと言いながらnoteに投稿するのってなんだろう

           今日から毎日(できるだけ毎日)、このドブの底を這うような日々からの脱却のためにもがいてみることにする。  今自分がおかれている状況は自分から見ればかなりのピンチなのだけれど、この世界においては確実にもっと暗い人はいるわけで、今まで繰り返してきた失敗をこれから死ぬまで何回繰り返してもその暗さには勝てないのだ、と思うと、自分なんて幸運だとも不運だ(本当に幸運でしかないのだけれど)とも感じてしまう。      いいじゃない。  家があるだけで。  飯をつくってくれるだけで。  夢

          誰も見ないでくださいと言いながらnoteに投稿するのってなんだろう