生憎の雨かどうかはお前が決めることではないだろう

 軒下に雀の卵が落ちていた。落とされたというべきだろうか。
君たちはどう飛んだだろう。その殻を割ってこの世界を目撃したとき、君の目にはどう写っているだろう。鳥類としての生涯を全うしているだろうか。
 僕が持ってきた虫を食べさせようとして、君がそれを拒否しても、許してあげたい。
 飛ぶ練習をしようといって連れ出そうとして、君が飛びたくないといったなら、飛ばない生き方を考えよう。
 一般的に独り立ちの時期だっていうのに、君がまだこの場所にいるなら、共に暮らし方を追求しよう。
 休みの日はいつも昼まで起きない君に、僕は朝から抵抗する。朝、日差しが強くなる前にカーテンと窓を開けて、掃除を始める。掃除が終わったら朝ご飯を食べよう。目玉焼きとウインナーを焼いて味噌汁も作ろう。君はやっぱり半熟が好きみたいだ。僕は、目玉焼きを白米の上にのせマヨネーズをかけてかきこむ。君は粒マスタードと醤油。カレーに醤油をかけていたときはちょっと引いた。ご飯を食べたら散歩をしに行こう。僕が最近ハマっている給湯器のメーカー当てゲームをしよう。電車に乗ってホームセンターに行こう。あそこは、何も買わなくても満足感が得られる最高の場所だ。いつの間にか昼を過ぎていたので、ご飯を食べよう。あのどこの町にもあるカレー屋に行こう。一人じゃ入りにくかったんだ。君は細いお米の料理を頼んだ。君は行ったことない店でも新商品を頼む。僕は定番のバターチキンカレーナンセットを頼んだ。欲望のままに生きる君は、見ていて楽しい。通りがかった古着屋で季節外れのコートを買い、本屋で一目散に漫画のフロアへ行き、大きな公園を走り回る。駅の中にあるスーパーでふにゃふにゃの春巻きを買って帰ろう。朝炊いたご飯が残っているはずだ。
 どこまでもいこう。飛ばないのなら、僕が知り合いにもらったカブに乗ってどこまでもいこう。名前も知らない町を飛び越えていこう。
 

 今日は生憎の雨だ。僕たちは三角屋根の下で。


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