夜にきのこ

 夜の街が好きだ。
カブで街灯の下を走る。

 だいたい夜はちょっと感傷的になる。そうすると、いつの間にか遠くに来てしまうのだ。夏を通り過ぎたようだ。深夜のコンビニで急に引き戻される。時計の針は0時を指してる。
 誰も知らない場所に行きたい。誰も知らない秘密を知りたい。
そんな得体のしれない思いを浮かばせながら、夜を飛んでいる。
この時間だけは一瞬の世界の醜ささえ越えてゆける、そんな気がした。
家へ帰ろう、夜が明けたら。アルコールのせいさ。 
 今はもう懐かしい、君と夏の夜の街。金木犀の香りを辿る。

夜の街はきのこの帝国と化した。


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