日比谷野音 #2

 初めてが詰まっている。

 日比谷野外音楽堂にライブを見に行ってきた。もちろん初めてだ。さらに、バンドのライブさえも初めてなので、他会場との比較ができない。日産スタジアムのアイドルのライブしか行ったことがない。
 まず、リハーサルの音漏れがめっちゃ聴こえる。オードリー若林が、チャットモンチーの音漏れを聴いていた光景を巡らせた。
 日曜日の霞が関と対照的に歪み響き渡った音楽。期待感を抉る。
C-12 118番、舞台向かって右側の客席全体が見渡せる画角だった。左からギター、ベース、ドラム、ドラムが横を向いていた。
 曲へのノリ方が違う。アイドルを見に来ているファンと音楽を見に来ているファンの違いだった。
 私の左横が3つ空いていた。
 左前方に女の子がいた。セミボブで、手にアサヒスーパードライを持っていた。これが音楽なのか、と驚嘆した。
 右隣に50代~60前後の男性が座った。彼は曲が披露されるごとに相応しくノッていた。リズムに応じて頭を前後に揺らしていた。彼はバンドの誰かの親なんじゃないかと思ったほどだ。それは彼が、まさに幼稚園のお遊戯会で発表する我が子を保護者席から見る父親のようにすら見えたから。ドラムの親でと思った。手をクロスさせ、リズムをとりながら音楽を聴いていたからだ。
数分後、私も同じように頭を揺らしていた。
 一つ前の席のカップルの女は曲が始まるたびに座って、終わると立った。逆だろと思ったけれど、もしかすると純粋に音楽を楽しむというのはこういうことだとも考えたりした。

 この街にはいろんな人がいて、自分が作って人を感動させる歌を創る人も人の歌に感情を爆発できる人も、どうにかあがいて這いつくばって生きているこの街と「人間」を、美しいと思える瞬間があるだけで生きていていいんだよと思わせてくれる。

 最高のステージだった。

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