見出し画像

Cyber-Physical Workplace |仮想空間と現実空間が融合する新たなワークプレイス

光田 祐介 
日建設計 デジタルソリューションラボ
アソシエイト コンサルタント

皆さんは新型コロナウイルスのまん延を経験して生活にどのような変化がありましたか?家で過ごす時間が多くなったり、趣味の時間を大切にするようになったりと少なからず変化があったと思います。

私が一番変化を感じているのは「働く場所」です。コロナ禍以前では、毎日オフィスに通勤して働くことをほとんどの人は当たり前のことと思っていたはずです。しかし、緊急事態宣言等により外出が制限されたことにより多くの人は在宅勤務をはじめとしたテレワークを経験しました。新型コロナウイルス自体は多くの命を奪い、忌むべき存在ではありますが、テレワークの普及にとっては大きな追い風になりました。それにより、WEB会議等のツールも普及し、デジタルコミュニケーションの心理的ハードルやコストが下がりました。そういった環境でワーカーたちはQOL(Quality of Life)の向上や生産性の向上など多くのメリットを享受しています。

しかし、このように働く場所が拡大し選択肢が広がることは良いことばかりではありません。様々な調査からテレワーカーが孤独を感じているということや、偶発的なコミュニケーションが低下していることがわかってきました。そういったことから、オフィスワーカーとテレワーカーの両方に対応した新しいワークプレイスの在り方をデジタルテクノロジーの観点から提案することが必要と考えました。

Cyber-Physical Workplaceとは?

ではどのようなワークプレイスにすればよいか?我々はまず、「Cyber-Physical Workplace」というコンセプトを考えました。これは簡単に言えば「サイバー(仮想)空間とフィジカル(現実)空間が融合するワークプレイス」です。
それを実現するため、開発時は下記の3つの原則を掲げました。

  1. 仮想空間と現実空間は等価に扱う

  2. 仮想空間と現実空間は互いに作用し合う

  3. MR※技術等を用いて仮想空間と現実空間をつなぐ

そして、仮想空間と現実空間の融合を実証するため、ベンチャー企業のホロラボと協働でゲームエンジンを活用したプロトタイプアプリを開発しました。これは在宅ワーカーのVRデバイスとオフィスワーカーのARデバイスを用いてコミュニケーションを行える仕組みとなっています。また、デジタルツインを実現させるためにBIM※2データやIoTデータも利用しています。

図1 システム概要ダイアグラム

※MR(Mixed Reality:複合現実感)
情報空間に没入体験するVR(Virtual Reality:仮想現実、人工現実感)や、現実空間に情報を重畳表示するAR(Augmented Reality:拡張現実感)といった現実空間と情報空間を融合する広義な技術表現の総称。
※2 BIM(Building Information Modelling)
コンピュータ上に作成した主に3次元の形状情報に加え、室等の名称・面積、材料・部材の仕様・性能、仕上げ等、建築物の属性情報を併せ持つ建物情報モデルを構築するシステム。

在宅ワーカー(VRデバイス)とオフィスワーカー(ARデバイス)では見え方が異なります。例えば背景はVRの場合、BIMデータで再現した仮想のオフィスが見えていますが、ARでは透過型ディスプレイのため、実際のオフィスが見えます。また、VRの方はIoTデータ(リアルタイムな人の位置のデータ)を活用した背景アバターを表示しています。

これにより、在宅ワーカーもたくさん人がいるオフィスにいるような雰囲気を体験し、孤独感の軽減につながる効果があると考えています。また、会話だけでなく、身振り手振りといったノンバーバルコミュニケーションを実現することにより、コミュニケーションの円滑化が進むことも確認できました。

システムアーキテクチャー

本実証における、その他の技術的なポイントとしては以下のようなものがあります。

  • VR、ARのマルチデバイスのリアルタイム相互接続

  • コミュニケーションの解像度を上げるためにゲーム用マルチプレイヤーエンジンを利用

  • 指の動きまで再現した高精度なハンドトラッキング

ゲームエンジンも含め、オンラインゲームやVRの開発で利用される汎用的な技術を用いることにより、高度な技術をスピーディかつ安価に取り込むことに成功しています。

図2 システムアーキテクチャー

感情解析アルゴリズムとの連携

最近実装した新機能としては、「感情の可視化」があります。音声を用いた感情解析アルゴリズムのAPIと連携することにより、会話の相手のリアルタイムな感情を可視化し、さらに進化したコミュニケーションを目指しました。平常の場合は緑色、楽しいときは黄色、悲しいときは青色、怒っているときは赤色とアバターや人物の背景に色のついたオーラとして表示します。

これにより、もしかしたら「空気が読める眼鏡ができるのでは?」と思って開発しました。オフィスで上司に相談するときに機嫌が良いか悪いか一発で確認できる(笑)・・・そんな未来はすぐそこにあります!

写真1 感情表現の可視化例(喜び)

ワークプレイスの未来

では Cyber-Physical Workplaceがさらに進化して、MRデバイスが今のスマートフォン並み普及するとどんな未来が待っているでしょうか?

  • より場所に囚われず働くことができる(自動翻訳があれば言語にも囚われない)

  • 仮想空間と現実空間の境目があいまいとなり、より自由な空間デザインが実現できる

  • 移動が困難な方々にも参加可能なインクルーシブな社会の実現

我々はこういった未来を創造したいと考えています。
一緒に未来を創造したい!という方は、是非一度お問合せ下さい。

図3 ワークプレイスの未来

※プレスリリース:仮想空間と現実空間が融合する新たなワークプレイスの実現に向けたMRアプリケーションを開発 ~テレワークの孤独感や偶発的コミュニケーション不足の解消を目指す~

光田 祐介 
日建設計 デジタルソリューションラボ
アソシエイト コンサルタント
スマートビルのコンサルティング及び、ライフサイクル(BIM)コンサルティングが主な業務領域。XR領域やサービスロボット領域の研究開発にも積極的に取り組んでいる。

共同開発チーム
・株式会社日建設計:構想/企画・BIM/IoTデータ提供・実証実験
・株式会社ホロラボ:アプリケーション開発・技術支援

#日建設計 #日建グループ #ウィズコロナ #アフターコロナ #企業のnote #私の仕事 #MR #VR #AR #サイバーフィジカル #デジタルツイン #BIM #IoT #現実空間 #仮想空間 #コミュニケーション


この記事が参加している募集

企業のnote

with note pro

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?