西脇健三郎(ニーケン)

精神科医/食べ歩き、読書、映画鑑賞/好き本:ちょっとピンぼけ(ロバート・キャパ)、黄昏…

西脇健三郎(ニーケン)

精神科医/食べ歩き、読書、映画鑑賞/好き本:ちょっとピンぼけ(ロバート・キャパ)、黄昏流星群/最悪を覚悟して最善を尽くす/2009年~2014年までブログやっていましたが、古希を過ぎてまた始めます。

最近の記事

「レガシー」とやらについて③

◎レガシー(legacy)「遺産」、「伝統」、そして「次の時代に受け継がれていくもの」を指す。 ▼断酒会との出会い★長崎市保健所にて 1970年代、久里浜研修に出かける前だったような・・・。あの日のことは、しっかりと覚えている。 「あっ、西脇先生ですね。お忙しい中、私どもの例会に出席いただきありがとうございます」とネクタイをきっちりと締めた、スーツ姿の恰幅のいい中年男性が、笑みをたたえて私を迎え入れてくれた。そして、名刺を差し出して「私は長崎断酒友の会の福川と申します。よ

    • 「レガシー」とやらについて②

      ◎レガシー(legacy)「遺産」、「伝統」、そして「次の時代に受け継がれていくもの」を指す。 ▶次の世代に伝えておきたい物語▼これが依存症治療事始めかな ●ある夜の当直で・・・・・・ 「先生、昨日入院した患者さんが眠れなくて、落ち着かないのです」と、西脇病院の当直室で休んでいた私に、夜勤の看護師がその患者の診察を求めてきた。1972(昭和47)年の寒い師走の夜であった。寝ついたばかりの私はしぶしぶ起き上がり、パジャマの上にそのままズボンとセーター、そして白衣を身に着け

      • 「レガシー」とやらについて①

        ◎レガシー(legacy)「遺産」、「伝統」、そして「次の時代に受け継がれていくもの」を指す。 “ギャンブル依存症対策の今後は?”と読売新聞2024年6月5日付長崎版で大きく紙面をさいて報じていた。これは、2024年ギャンブル等依存症問題啓発週間(5月14日~5月20日)期間中、5月19日(日曜日)に(公社)ギャンブル依存症問題を考える会、並びにNPO法人全国ギャンブル依存症家族の会からの依頼に応じ当院で開催されたセミナーを取材しにきた記者が書いたものだ。掲載のセミナー会場

        • 続2024年精神保健福祉法改正も、やはり時代遅れ

          「精神保健福祉法、改正後初の検討会がスタート 厚生労働省」CBnews 2024年5月20日付。 厚生労働省は20日、精神保健医療福祉の今後の政策推進に関する検討会の初会合を開催した。(略)改正法施行後・・・(略)・・・効果検証を行うとともに、特定の検討課題を設けるのでなく、今後の精神保健医療福祉の課題について幅広く議論を行う。」と・・・早! 確か法改正の施行は2024年4月だったはずだが・・・、効果検証しながらですか!すごいね。 ★「精神科病院への入院形態は、医療保護入院

        「レガシー」とやらについて③

          どうする依存症対策③

          精神科病院へのよくある質問依存症の入院処遇について Q:依存症は、精神科救急(24時間365日)の非自発的入院の対象となりますか? A:原則・対象ではありません。 但し、うつ病の強い自殺念慮、妄想、双極性感情障害の躁状態による離脱等の場合は、非自発的入院となります。ただ、2023年10月16日、日本精神科救急学会より以下の声明文が出されています。「~人権擁護を基調としており、一定割合の非自発入院を要件とするケアシステムは許容されない。」、「~ケア対象に一定の重症(略)を求め

          どうする依存症対策③

          どうする依存症対策②

          私が依存症研修会で学んだこと ★久里浜にて *1976年、今から半世紀近く前、私は、三浦半島の先っぽの久里浜の海岸を一人の中年男性と歩いていた。今も続いているアルコール依存症研修会の第1回目にどういうわけか私は参加していた。当時、アルコール依存症の治療援助に関心、興味があったわけでもないし、志なるものなどカケラもなかった。とにかくその私とは研修会プログラムの「行軍」に参加している29歳の私だ。「この行軍は堀内(なだいなだ)先生が戦時中在学しておられた陸軍幼年学校の体験から始め

          どうする依存症対策②

          どうする依存症対策①

          これでいいのか依存症研修会 ★日本における医療改革の大きな柱の一つは包括的な医療制度の構築だと理解している。2018年6月15日に公表された内閣府の「平成30年版障害者白書」には、前年までなかった「依存症対策の強化」が盛り込まれた。 しかし一方で、同年5月14日付で依存症対策全国センター長の名前で書く精神科医療機関に送付された「平成30年度 依存症治療指導者養成研修、依存症相談対応指導者養成研修及び地域生活支援指導者養成研修の開催について」という案内書では、「アルコール依存

          どうする依存症対策①

          水原一平氏とギャンブル依存症

          ★大谷翔平選手の元通訳水原一平氏について『週刊文春 2024年4月4日号』は次のように伝えている。 ★『機能の全体的評定心理的、社会的、職業的機能を考慮した精神健康度の尺度(Global Assessment of Functioning)』 通称『GAF』を用いて、我々精神科医は、患者(当事者)の精神生活能力の評価を行い、100から0までの評価ランクを設けている。そして、慢性期療養病棟における入院処遇、あるいは精神科訪問看護を要する対象患者(当事者)はGAF40以下と定

          水原一平氏とギャンブル依存症

          2024年精神保健福祉法改正も、やはり時代遅れ

          2024年精神保健福祉法 改正のポイント(2024.4.1施行) 医療保護入院の見直しとして 「医療保護入院の入院期間は、入院当初3ヶ月で精神科病院機関ごとに入院要件を確認、更新の届け出。・・・」となっている。 では入院から3ヶ月以内ならやりたい放題なのかな? 精神科救急(スーパー救急)病棟からの患者 ここで2012年から私が関わりを続けている患者を紹介したい。 当時、離脱症状が出現した女性のアルコール依存症者が精神科救急入院料病棟に入院となった。入院形態は医療保護入

          2024年精神保健福祉法改正も、やはり時代遅れ

          任意入院は要らない!!

          ★コロナ禍流行当初から、マスク着用は「任意」 しかし瞬く間に一億総マスク着用社会に・・・。そして、2023年3月13日よりマスク着用は「個人の判断」と国は盛んにアナウンスメント。「任意」と「個人の判断」の違いは何ですか? 最近(2024年3月現在)、街を歩いていて、先方がマスク着用のまま声掛け、挨拶をされ、どなたか分からず失礼することがしばしば、コロナ禍以前は全くなかった体験。認知機能低下が進行中の後期高齢者の私が失礼したのではないか、と・・・。 “婆さんは怖くてマスク

          任意入院は要らない!!

          精神科救急(スーパー救急)の行方  時代遅れから再生へ

          日本精神科救急学会は、 2023(令和5)年10月16日「~ケア対象に一定の重症であることを求める目的で入院形態を代用する考えは時代遅れである~」とした声明文を出している。 ▲補足「重症であることを求める目的で入院形態」とは、きっと非自発的入院(主に医療保護入院)のこと。 ◎2023年10月16日 令和6年診療報酬改定に関する声明(2) 日本精神科救急学会HP(https://www.jaep.jp/2023seimei_2.html) ◎十年一昔、一時代前の講演会と印

          精神科救急(スーパー救急)の行方  時代遅れから再生へ

          精神科救急(スーパー救急)の不都合な真実

          ★ 精神科救急急性期医療入院料 2002年の診療報酬改定により新たに精神科救急(スーパー救急)病棟が設置された。それは精神障害者の急性期症状への迅速な対応と、入院期間を3ヶ月以内に設定することで長期に及ぶ社会的入院の抑制を図る狙いがあった。よって、その取得基準はハードルが高く、もちろん、そのため入院費は精神科医療の中では最も高額なものとなった。しかもそれは患者の人権に配慮した良質の精神科医療を提供するものとして、権利擁護を唱える団体等に対しても好意的に受け入れられた。そし

          精神科救急(スーパー救急)の不都合な真実

          どうする精神保健指定医 ②

          ★精神保健指定医の役割 精神保健福祉法第20条「精神科病院の管理者は、精神障害者を入院させる場合においては、本人の同意に基づいて入院が行われるように努めなければならない」(以下「・・・任意入院に努める」)と。 この条文は1987年に精神衛生法改正(精神保健法)で新たに定められたものである。それと同時に精神保健指定医が制度化されている。そしてこの制度は有資格者のみ一定の医療行為を業務独占的に行い得る権限を与える専門医制度(例えば、技術的高度性に着目して設けられる制度とは異なる

          どうする精神保健指定医 ②

          どうする精神保健指定医 ①

          ★その成り立ち 1983年、栃木県にある精神科病院、宇都宮病院で起きた不祥事の反省に立って、1987年にそれまでの精神衛生法が改正され、精神保健法が成立(後精神保健福祉法)した。そこで患者の自己決定権を尊重した任意入院を基本とする入院形態の仕組みが設けられた。 その設けられた仕組みの中で、病識欠如等で患者本人から治療の同意が得られず、やむを得ず強制的な入院(措置鑑定による措置入院、医療保護入院等)の判断を要する場合、さらには身体的拘束、隔離といった行動制限を行わざるを得ない

          どうする精神保健指定医 ①

          ウィークネスフォビア(弱者嫌悪)って何?

          ウィークネスフォビア(弱者嫌悪)とは、男性学研究者の内田雅克氏よる造語、つまり和製英語だ。 と定義している。 なるほど、私も過去、依存症、うつ病(双極性感情障害)で「否認」と「プライド」を抱える人たちの回復には、「自分の弱さを弱さとして認める勇気」が大切と指摘。そこで二人の著名人の「自伝」、「手記」の一部を紹介している。(『依存するということ』 西脇健三郎著 幻冬舎新書 2019) クラプトンは、世界のギターの神様として君臨。清原もまた、日本プロ野球界での人気は絶大だっ

          ウィークネスフォビア(弱者嫌悪)って何?

          マイナンバーカードと健康保険証との紐づけは、国民の健康情報の共有化に寄与するのか?

          国は今、薬剤情報の活用(電子処方箋)、カルテ情報の共有化(電子カルテ)を図ることで、国民に良好な医療健康情報を提供できるとマイナンバーカードと健康保険証との紐づけを急いでいる。 だが、私の知るところでは、21世紀初頭より国は医療情報の共有化(標準化)事業のため、別途工程を組んでいたはずだが・・・。 以下、私が知る情報・・・ ●厚生労働省は電子的診療情報事業の普及を図るとして、  2007年 「保健医療情報標準化会議」を開催。取り決めは以下の通り・・・。 ◎電子カルテ情報の共有

          マイナンバーカードと健康保険証との紐づけは、国民の健康情報の共有化に寄与するのか?