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付属池田小学校事件とスーパー救急病棟

『日本の精神科病床は何故、未だに30万床のままなのか?』2021年6月号より

付属池田小学校事件は、2001年におきている。犯人は措置入院歴があったが、起訴された上で死刑となった。そして、2016年におきた相模原障害者施設殺傷事件も然りだ(死刑が確定)。加えて、加害者は措置入院時に「大麻精神病」、「薬物精神病」と診断されている。その根拠は「大麻による脱抑制」だそうだ。となると、同じ抑制系薬物のアルコールによる酩酊状態「脱抑制」時の飲酒運転の検挙者は、全て措置入院該当か?これは、当時審査した精神医療審査会でも問題とならず、また事件後、複数の精神保健指定医も加わった調査委員会でも不問となっている。
付属池田小学校事件との関係は詳しくないが、2002年、診療報酬表に掲載されたいわゆる「精神科スーパー救急病棟」は、精神科で最も高い医療費が請求できる病棟である。
「入院期間3ヶ月(以内)」と「年間の入院患者は6割以上が非自発入院(任意入院でない入院)であること」、そして「4割以上が新規入院患者(3ヶ月以内に精神科への入院歴がない患者)」等といった基準が設けられている。
だが、この「精神科スーパー救急病棟」の評価は様々である。 日本精神科救急学会は、2016年に「精神科への初回の非自発的入院は、精神科救急入院病棟をはじめとする一定の規格を備えた精神科病床に限定し、新たな長期在院の発生を抑制すべきである。・・・」と提言、総会で採択されている。また、2014年12月17日付の朝日新聞「精神科病院を考える 下」では、内閣府障害者政策委員会の上野秀樹委員(精神科医)が『急性期対応のために全国で5万~10万床の緊急用の病床は必要ですが、それ以外は国が強制的に減らすぐらいのことをしないと減らないでしょう』と。つまり、「緊急用の病床」とは「精神科スーパー救急病棟」のことだ。となると「精神科スーパー救急病棟」は、長期在院の抑制に加えて、病床削減に貢献する、と上野秀樹が述べていることになる。さらに2018年4月16日付の「yomiDr.「(ヨミドクター)」の記事には、「精神科、医師が手厚いほど入院期間短く・・・医療経済研究機構など発表」と、医療経済研究機構などが発表した分析結果が掲載されている。「医師が多いほど治療効果が高まり、入院期間の短縮につながるとみて、医師を手厚く配置しやすくする体制作りの必要性を訴えている。成果は国際医学誌電子版に掲載された。(中略)手厚い病棟では入院日数が90日超となる割合が約17%で、基準通りの病棟より約4ポイント低くリスクは21%下がっていた。また手厚い病棟のほうが、退院から90日以内に再入院する割合も低く(中略)。患者の満足度も高まっている可能性があるとみている」と。これもまた、「精神科スーパー救急病棟」に対して高い評価を下している。
一方で、日本精神科病院協会の山崎學会長は「統合失調症急性期モデルの経営は競争になる」と語っている(「地域移行と構造転換」「精神科病院マネジメント」No.30、エディターズサード、2014年)。

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