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結びに再び私ごと、と・・・

『日本の精神科病床は何故、未だに30万床のままなのか?』2021年6月号より

国の方針に従い、約40年余りの年月をかけ、利用病床300床越を実働病床200床前後へと約3分の1に減床した。その理由とは、1)多くの入院患者を管理するのが面倒だった。2)同世代(昭和の精神科医)が取り組んでいた「社会復帰、開放化」には興味と関心がもてなかつた。3)ただ、精神科疾病構造の変化に目聡かった。つまり「精神病院はいらない」ではなく、「精神科病院の使い方」にこだわってきた、とでもしておこう。だが日本の精神科医療は、1987年(昭和62年)に制度改革(目玉は「任意入院」、「精神医療審査会」、「精神保健指定医」)をし、精神保健法を成立させた。しかし、短絡的な「精神病院はいらない」のワードに惑わされ、この約30年間、精神科病床は未だに30万床のままだ。これでは失われた30年だ。でも大丈夫だよ!これからは人口の減少がすすむだろう。それに伴いジタバタしなくとも精神科病床が減るのは明らかだ。そして、29年後の2050年に向けて、国はムーンショット計画(*3)をすすめようとしている。それが実現したら、いささか社会性に乏しい精神科医(精神保健指定医)よりAIに任せた方が、患者の入院に対する判断の有無は適確、適正になる。そして、行政との入院届け等の書類、情報のやり取りも飛躍的に円滑になるのは間違いない(今でも厚生労働省がすすめる電子的診療情報交換事業 〈SS-MIX〉(*4)の整備に本気になって取り組めば可能なんだが・・・)。そうなれば、社会が求める精神科医の役割は今とは異なるはずだ。そして、「精神病院はいらない」ではなく、「精神科病院の使い方」が問われるに違いない。いやこの30年、すでに「精神科病院の使い方」についてもっと試行錯誤すべきではなかったか。だからもう昭和の精神科医は、これから先何もしないのが一番いい。老兵は・・・、ただ消え去るのみ(ダグラス・マッカーサー)。
 
*3)ムーンショット計画:2020年に内閣府が発表。2050年までに、一人が多数のアバターを駆使することで、「人の身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」するとか、AIを搭載して自ら学習するロボットと人間との共生等の計画。このコロナ禍、そして今後の社会の変革に伴い、この計画は加速するのでは・・・。

*4)SS-MIX:2006年度、厚生労働省は、さまざまなインフラから配信される情報を蓄積するとともに標準的な診療情報提供書が編集できる「標準化ストレージ」という概念に着目し、すべての医療機関を対象とした医療情報の交換・共有による医療の質の向上を目的とした「厚生労働省電子的診療情報交換推進事業」(SS-MIX:Standardized Structured Medical Information eXchange)を開始…。(SS-MIX普及推進コンソーシアムより)

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