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続2024年精神保健福祉法改正も、やはり時代遅れ

「精神保健福祉法、改正後初の検討会がスタート 厚生労働省」CBnews 2024年5月20日付。
厚生労働省は20日、精神保健医療福祉の今後の政策推進に関する検討会の初会合を開催した。(略)改正法施行後・・・(略)・・・効果検証を行うとともに、特定の検討課題を設けるのでなく、今後の精神保健医療福祉の課題について幅広く議論を行う。」と・・・早!
確か法改正の施行は2024年4月だったはずだが・・・、効果検証しながらですか!すごいね。

★「精神科病院への入院形態は、医療保護入院が患者の同意を得る任意入院を上回り、約半数を占めている」。おっしゃる通りだ。
この改正精神保健福祉法が議論された先の検討会、「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」は、2021年10月11日から2022年6月9日まで13回行われている。しかし、「入院形態別在院患者数の推移」のグラフが参考資料に掲載されたのは、何故か11回目(2022年5月20日)からである(図1)。

【図1】

2024年5月20日からの「精神保健医療福祉の今後の政策推進に関する検討会」は当初から参考資料に掲載されている。それも医療保護入院と任意入院は、見事に逆転している(図2)。

【図2】

★何故見事かと言うと、小生、2017年2月「『一億総活躍社会』のメンタルヘルス」なるタイトルの本を自費出版している(全く読まれてないのが~)。その「おわりに」に本を書いた理由の一つとして、次の様に記し、当時までの「入院形態別在院患者数の推移」を紹介している。

“三十数年前、精神病院の不祥事が発覚、その反省に立って法が改正された。そこで患者の自己決定権を尊重した任意入院を基本とする入院形態の仕組みが設けられた。にもかかわらず、近年、その任意入院が減少し、強制力を伴う医療保護入院が増え続けている。しかし、その流れに歯止めをかける検討、議論が行われている話をついぞ聞かない。行われているのなら是非教えていただきたい。この思いは強い。
(図3)は、2016(平成28)年11月11日に行われた「第4回これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」で配布された資料の中に載せられていたものである。この図からも、私の懸念が杞憂でないことが推察できることと思う。”

「『一億総活躍社会』のメンタルヘルス」 著 西脇健三郎 幻冬舎 2017年2月
【図3】

★「精神保健医療福祉の今後の政策推進に関する検討会」の初会合の議論では、「国連の障害者権利委員会から・・・(略)・・・勧告が出されていることに触れ、『28年2月には権利委員会に定期報告・・・(略)・・・長期的目標だ』」と。えッ、そんな先、遅!!

また、「・・・1つの薬剤の使用実績で病院経営を左右される状況である。医療の質を問うならば・・・(略)」。そうです医療の質を問うならば、病院経営はさて置き精神科疾病構造の変化等を踏まえ、関係学会からも「時代遅れ」との声明文も出され、既に3ヶ月期間限定の医療留置所化している精神科救急病棟、その今後のあり方を何とかせんといかん!

【図4】

★小生、先に紹介の拙書(2017年2月出版)の「おわりに」で今一つ以下の様にも述べている。

“既に少子、多死、そして人口減は始まっている。つまり、ポスト団塊の世代を見据えた対策が、他の分野と同様に精神医療の世界でも求められている。
急増する精神疾患についての分析をしっかりと行い、その治療的な処遇を考えるとき、現行法の精神障害者の定義は、今のままでいいのだろうか。また、非自発的入院を判定する精神科医の資格要件の抜本的見直しの必要はどうだろう。そして、精神科医療機関の在り方についても、どこで、どのくらいの期間、どのような治療処遇を行うのが適正であるか、検討を加えるべきではないか。もちろん、その治療処遇については、費用対効果等も勘案したうえで、診療報酬制度の改定にも踏み込んでほしいものだ。
そして、今後の精神医療政策が「木を見て森を見ず」にならないように願うばかりである。”

「『一億総活躍社会』のメンタルヘルス」 著 西脇健三郎 幻冬舎 2017年2月

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