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小さな記事だが「氷山の一角」

(「精神科救急は2日~10日程度でいい」のわけ)

「児相が強制入院」と高校生が提訴
 2018年に児童相談所で一時保護され、精神疾患がないのに強制入院させられたとして、東京都内の高校に通う3年生の男子生徒が17日、都やT病院を運営の医療法人などに1億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。訴状によると、生徒は13歳だった18年2月1日、都内の児童相談所に「医療受診が必要」との理由で一時保護された。T病院に連れて行かれ、母親の同意を得て、強制入院の一つの医療保護入院となった。同月10日に病院から抜け出して別居する父親宅に行き、一時保護が解除された。

2023年1月18日付長崎新聞

地方紙社会面の片隅の小さな記事だ。東京の出来事、共同通信から発信である。

私にはとても興味深い記事だった。

T病院の概要だがホームページによると、巻頭に「・・・長期入院(収容)のみに偏った役割を返上する使命を自覚して・・・」と院長メッセージが紹介されている。そしてその実践のため、2000年以後、次々に精神科デイケアの様々な認可を取得、2012年精神科救急病棟を取得されている。それ以後、依存症プログラム、物忘れ外来、児童思春期外来を開始、さらに認知症疾患センター連携型、児童・思春期病棟とある。
まさしく統合失調症中心、長期社会的入院からの脱却を図ろうとする今求められる精神科病院の姿だ。

つまり、精神科救急病棟取得後、精神科疾病構造の変化を意識した新たな専門性の組み立てを進めておられる。よくわかる。地域社会が求める精神保健医療福祉サービスは今、「依存症」、「児童・思春期」対策、そして団塊の世代の高齢化に伴う「認知症」への対応が大きな課題となっている。

 そういったことを踏まえ最初の小さな記事に戻ろう。高校生は2月1日、児童相談所が「医療受診が必要」と判断、T病院に医療保護入院となった。しかし、同月10日に別居中の父が元へ・・・とある。つまり10日間で、自らが判断(脱走)して父に保護を求めている。そして、児相は一時保護を解除している。T病院は児童・思春期病棟も運用しているが、医療保護入院といった入院形態であることから、精神科救急病棟への入院だったことは容易にわかる。では何故、高校生は父に受け入れられ、児相は一時保護を解除したのか? それは、当初から医療保護入院の対象でなかったか、あるいは10日以内で医療保護入院を要する症状が消退したかの何れかだろう。それでは何故、T病院は医療保護入院を継続していたのだろうか? 考えられることは、ただ一つ精神科救急病棟の運営を維持するため・・・。まぁ、いいか!この国の今の制度、対策に従って精神科医療を実践していたらよくあることだよ!
ただ、こうした今求められる精神科病院(精神科医療)にご執心の余り精神科医(精神保健指定医)の臨床力低下は著しい、と感じる今日この頃である。従って、小さい記事だが「氷山の一角」だ。

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